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「ハルお兄ちゃん。赤い服の人と、黒い服の人と、どっちを応援する?」
「今赤チームは負けっぱなしだから、赤チームを応援するよ。サリーちゃんはどうする?」
「私も赤チームを応援する!」
「ちなみに、あれは赤というより、ワインレッドって言うかな。赤の中でも、暗くて深みがある渋い色合いでしょ?」
「ワインレッド…。覚えたよ、ワインレッド。じゃあ、黒い方は?何て言うの?」
「うーん、黒は黒としか呼ばないかな。あえて言うなら、カラス色とか?」
「ハルお兄ちゃん、物知りだね!」
「ありがとう」
透日は、まだ湯気が立っている紅茶を啜った。鼻から茶葉の香りが抜ける。
次第に観客が増えてきた。
旗を高々と掲げて、顔にはチームのエンブレムを付けて。それぞれの応援歌を歌い出す。
試合開始の合図が鳴り響いた。
それと同時に透日は立ち上がって言った。
「ごめん、トイレに行ってくる」
「一緒に行きますよ」
「いや、大丈夫。一人でなんとかするよ」