バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

7

 出会いは人生を変える。良い方向にも、悪い方向にも。

 ハルが連れて行ってくれたカフェの屋根や壁には、時計が敷き詰められていた。
デザインや大きさも、指している時間もバラバラだった。

中に入っても、変わらず秒針の音がする。カウンター席はすでに埋まっていた。

「いらっしゃいませ」という空中ディスプレイが出現した。ハルは素早く操作する。
ピロンと耳元で音が鳴った後、席までの行き方と番号が床に投影された。

「さぁ、こっち」
ハルに案内され席に着くと、今度は写真つきのメニューが開いた。言語は自動で翻訳してくれる。

「画像に触れれば、操作できますから。遠慮しないで、どんどん食べて。全部俺が払いますから」

「けど、何だか悪いよ…」

「いいんですよ。とにかく、楽しんでもらいたいから」

「そうは言っても、何もお礼できないよ」

「言ったでしょう?俺は恩返しをしたいだけなんです」

「…、分かった。じゃあそうさせてもらうね。ハルはいつもどれを頼むの?」

「俺はコーヒーが好きだけど、苦くて飲みにくいから紅茶とかどうですか?」

「紅茶ね。まつ…サリーも同じのにする?」

「うん、そうする」

しおり