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「ハル! 無事に入れたんだね」
「はい、なんとかなりました。お二人共、すっかり馴染んでますね」
「ありがとう。ハルのおかげだよ」
「ありがとう、ハルお兄ちゃん」
茉璃がつけている髪飾りが揺れた。リアルな姿より少し背が高い。
ファッションに興味はなく、とりあえず揃えた衣装だったが、茉璃によく似合っていると、ハルは思った。
少女から女性へ成長したように感じた。
「どういたしまして。さ、まずはどこに行きましょうか?」
「私、お腹すいちゃった…」
「朝早かったからね。では、近くのカフェに寄りましょう。コーヒーだけじゃなくて、サンドイッチも絶品なんですよ」
聞き慣れない単語を流暢に話す。内側にいる人々にとってはただの日常会話なんだ、と透日は思った。
いかに自分が、狭い世界に閉じ込んでいたかが分かる。
なぜ留まっていたのだろう。外側の世界から脱出する方法を、早くに探していたら。
透日には出来なかった。ずっと、言われたことを言われたまま行動していた。
努力してもどうせ報われないという、諦めの気持ちが根底にあった。