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ひたすら真っすぐに足跡を残して、いくつもの廃墟と瓦礫を過ぎた果てに、世界を隔てるゲートはある。
早まる気持ちを抑えながら、こまめに休憩を取る。
ハルが二人を起こしたのは未明頃。多少周りが白み始めてきた。
「本当に?向こうに行けるの?」
茉璃まつりがハルに訊く。
「うん、このカードさえあればね。だから、絶対失くしちゃダメだよ」
内側へ入った時の注意点を、ハルが丁寧にまとめた。
鉄則は、本名を名乗らないこと。
どれだけ親しくなろうと、素顔を明かさないこと。
お金の使いに配慮すること。
彼は宣言通り、透日ともひたちを内側へ行けるよう手配してくれた。
永住はできなくてもこれを使えば、制限なく出入りできるように。
IDカードには番号と顔写真のみ載せられている。
このIDに紐づけられている名前が”オサム・アンダーソン”と”サリナ・ハイド”。
入場時に使う名であり、透日たちが内側の住民となっている間の架空の身分。
ーそう言えばあの時…
透日は桜坂から渡されたメモのことを思い出した。
改めて見ると、カードにある番号と書かれている桁数は一致しなかった。
「後、内側は基本これがないと何もできないので。入ったらかけてください」