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「ハルお兄ちゃん、そろそろ帰ろう。雨が降ってきそう…」
「本当?そうは見えないけど」
「降るよ。一気にザーッて降ってくるの。だから今のうちに帰ろう」
ハルには空模様が読めなかったが、長いこと暮らしている茉璃の勘が正しいのだろう。
茉璃は服で本を覆った。歩きにくそうだったから、「持つよ」とハルが手を貸す。
「ありがとう。でも大丈夫」と大事そうに抱えた。
「俺、茉璃ちゃんを送ったら、透日のところに行ってくる。雨降るなら、傘持ってかないと」
「お兄ちゃん、今日はガッコーに行くって言ってた。どこにあるか知ってるの?」
「うん、まぁ何とかなるでしょ」
「何とか?」
「さ、茉璃ちゃん。帰り道は分かる?」
「うん。分かるよ」
家に着いた頃、天気は茉莉の言う通りになったが、すぐに止んだ。
外に出ていた人々は、雨が降り出す数分前に、一様に屋内へ集まっていた。