バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

47

「ハルお兄ちゃん、そろそろ帰ろう。雨が降ってきそう…」

「本当?そうは見えないけど」

「降るよ。一気にザーッて降ってくるの。だから今のうちに帰ろう」

ハルには空模様が読めなかったが、長いこと暮らしている茉璃の勘が正しいのだろう。

茉璃は服で本を覆った。歩きにくそうだったから、「持つよ」とハルが手を貸す。

「ありがとう。でも大丈夫」と大事そうに抱えた。

「俺、茉璃ちゃんを送ったら、透日のところに行ってくる。雨降るなら、傘持ってかないと」

「お兄ちゃん、今日はガッコーに行くって言ってた。どこにあるか知ってるの?」

「うん、まぁ何とかなるでしょ」

「何とか?」

「さ、茉璃ちゃん。帰り道は分かる?」

「うん。分かるよ」

 家に着いた頃、天気は茉莉の言う通りになったが、すぐに止んだ。

外に出ていた人々は、雨が降り出す数分前に、一様に屋内へ集まっていた。

しおり