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ハルも必死についていった。無理に合わせているという、意識はなかった。
友人にとって、その作家はガラスの彫刻であったのかもしれない。
それは、カリスマ的な魅惑を纏い、全てが美しく見えるような感覚。
そして文字通り、手の届かない場所に存在していた。
それでも、友人はガラスの彫刻に手を伸ばした。
ハルもまた続いた。
友人の手を掴もうと、続いた。
最終的に始めから、失敗した。
「おめでとう。幸せになって」
チクンと胸が痛んだ。大切な友人からの、心からの言葉だったから。
金が全てである内側の世界にいても、本当に欲しいものを買うことができないこともある、と悟った。
誰かと誰かの願いが同時には叶うことは、奇跡に近いことであることも。
心の中にまで滑り込んで見た情景は、その言葉を言われた瞬間、彼の中から消えて去ってしまった。
ー嫌なこと思い出した…
ハルは瞼を閉じる。
「ハルお兄ちゃん。ハルおにーちゃん」
何度目かの茉璃の声に振り返り、彼女の元へ戻っていった。