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「ピアノ…。どうやったら鳴るのかな?私にもできるかな?」
茉璃はページに顔を近づけ穴が空くほど観察した。

「…茉璃ちゃんは、内側に行きたいんだよね?」
ハルは頬杖をしながら訊く。

「うん、行きたい。…けど、行く時は3人でないと行きたくない」
茉璃が顔を上げて言う。

「そうだね。俺もそう思うよ」

 茉璃の質問に答えている合間に、ハルは図書館内を回ってみた。
紙媒体で作られたのものにほとんど触れたことがなかった。

目線の高さにある本を適当に手に取り、ざっと目を通してすぐに戻した。
ハルの苦手な歴史の本だった。

紙の肌触りと独特な臭い。不揃いな背表紙たち。
端から端まで一冊も隙間がない。内も外も、読書をする人間は少ないのかもしれない、とハルは思った。

 ハル自身、本を読むことは好きだ。本の虫と言われるほどの読書家ではないが。
友人が薦めてきたことが、読書を始めるきっかけになった。

話を合わせたかったから、というのが理由だったが、いつの間にか読書が好きになっていた。

友人はミステリー小説が好きで、ある作者の熱狂的な読者であった。新作が発売されるやいなや、丸1日を費やして読破する。

その後、読書会コミュニティで感想や考察を交え合うほどの熱を捧げていた。

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