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「ありがとう、お世辞でも嬉しいよ」
「オセジって何?」
「嘘でも嬉しいってことだよ。ところで、体調は大丈夫なの?」
「うん、今日は平気。…あのね、私ハルお兄ちゃんを連れていきたい場所があるの」
「本当?どこに連れて行ってくれるの?」
「まだ秘密!」
茉璃はハルの手を引っ張りながら前を歩く。
ー子供の手ってこんなに小さいんだな
ハルは茉璃が掴んでいる自身の薬指と小指を見て思った。湿気のせいでうねった髪の毛がより幼さを感じさせる。
二人は歩道橋を渡る。ハルのつま先に小石が当り、階段を転げ落ちた。
茉璃は迷うことなく進んで行く。
ハルは感心した。
内側の住民は地図が読めないのは当然、道を覚えることすら危うい人たちが多い。
「着いたよ」
入口の看板には「図書館」を表す文字が辛うじて残っていた。
「私の秘密基地。いつ来ても誰もいないの。だから独り占めできるの」
「へぇ。俺図書館って初めてきたかも」