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もし神が存在するなら、透日にとっての神はハルになった瞬間だった。

バッグを抱えてハルの元まで走る。

管理人の表情は無表情に切り替わる。
「鍵、閉めるから早く出て行ってくれる?」

「言われなくても」ハルが代わりに返事をてくれた。

 出口に着くまで、余計に長く感じた。
ガシャンと、扉を閉める。ガラスの重さと疲労が重なる。良いことがあったと思ったのに、急転直下の1日だった。

また明日ここに来なければいけない。
また同じ目に遭ってしまうかもしれない。

透日は前を向いているが、視点が合っていないようにフラフラと歩く。

「先輩、大丈夫ですか?」

「あぁ。うん、大丈夫。ありがとう…ハル…助けてくれて…」

 透日は地面に顔を落とす。

あの男のギラリとした目を思い出してしまう。顔中に刻まれたシワ、爪が肩に食い込んでくる痛み。

過激派集団の一員でなければ変質者だ。

透日が1人になるのをじっと待っていたのかもしれない。

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