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桜坂はポケットからペンと紙を取り出し、何かをメモして透日に渡した。

「はい…。分かりました…」
そこには数字とフリット語が書かれていたが、詳しく読まず折りたたむ。

「ところで、君一人で作業しているの?」

「そうですが…」

「そう。ごめん、邪魔したね」
踵を返す。ヒールが水を跳ねさせる。

「それだけですか?」透日が訊く。

「え?」

「監視員の方かと思って」
「いや、私は違う。けど、もしそうだっとしても、君に監視は必要ない」

「それはどうして…?」

「君はきちんと仕事をしてくれてるでしょう?送られてくる作業後の写真、どれも完璧だから」

透日は不思議な感覚に包まれた。
「あ、ありがとうございます」

桜坂の足音が無くなるまでずっと頭を下げていた。
仕事に対してのお礼や、労いの言葉を言われたことなどなかった。

体の中心からからじわっと出てくる熱い気持ちが冷めるまで待つ。

側から見れば、何を突っ立っているんだと怒られるところだ。

—見くれてる人がいるなんて思わなかった

早く帰ってハルに話したい。透日はもう一度ブラシを握った。

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