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「…透日は、内側に行きたいって思ってる?」
ドキンと心臓が動いた。
「行けるのであれば行きたいよ。みんなそう思ってるんじゃない?一部の人は違うだろうけど…」
「俺なら、透日と茉璃ちゃんだけでも行かせることできますよ」
「え、本当に?絶対に行ける?」
透日の声が響く。
その後すぐにハルがフッと笑う声が聞こえた。
笑われた?さっき言ったことは冗談だった?
次の言葉が聞こえてくる僅かな間に、様々な考えが頭の中を回った。
「絶対?」
ハルは薄く笑う。月が陰り、彼の顔を一層妖しく見せた。
「透日。”絶対”なんてこの世にないし、真の完璧は不完全であるべきさ」
「…え、完璧?」
「いや、すみません。ただの受け売りです。一回言ってみたかったんですよね」
「あぁ、そう…」
「けど、約束します。先輩には…透日にはお世話になりましたから。だから、この恩は必ず」
押し出された雲は再び星空を覆った。辺りは完全に暗くなってしまった。