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 家に帰ると必ず「おかえり」って言ってくれるんだ。帰りが遅くなると泣いて待っているときもあってね。
どこからその優しさが出てくるのか不思議だったよ。

僕も人間だから、怒るときもあったしイライラすることもあった。
だからと言って追い出す訳にもいかない。助けておいて中途半端に世話をするのは、良くないんじゃないかって。

それに、茉璃は僕と違って頭が良いんだ。1回聞いた声や音を覚えるんだよ。
リズムとかメロディとか。

もし、茉璃が向こう側に生まれていたら…。ここではないどこかで暮らしていたら、きっとすごい人になっていただろうね。

母親がいなくて感謝したよ。あの人がいたら何をするか分からないからー。



 一息ついてから、透日はミネラルウォーターと一緒に喉につっかえている言葉を飲み込んだ。
「ハルはどうしてこっちに?何の罪を犯したの?」そう聞く勇気がなかった。

古傷の男のように、比較的小さい罪であればまだしも、暴行や殺人のような、誰かの命を奪うようなことをしていたら。

透日は、心を許したことで裏切られたと思いたくなかった。

「ありがとうございます、話してくれて」

「いいよ…」

しばらくの沈黙があった。最初に口を割ったのはハルだった。

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