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「うん…。そうだね、ありがとう。ハル」

「かしこまらないでくださいよ」

「ハルこそ、そろそろ先輩呼び、辞めてもいいんじゃない?」

「そうですね…。じゃあ今から透日って呼びます!」

「うん、そっちのほうがいいよ」

 運命があるとするなら、太陽系の惑星が楕円形を描くように遠回りしながらも、引力によって引き寄せられる出会いのことなのかもしれない。

「…茉璃と出会ったとき、死にそうなぐらいぐったりしていて。あまりにも気の毒だったから、持っていた水と食料をあげたんだ」

透日はその時のことを鮮明に語りだした。



 いつもの炊き出し所に寄って帰ろうとした時だった。路上で生活する人は珍しくないけど、なぜか茉璃のことが気になって。
見捨てられた物同士だったからかな。

「名前は?」って聞いたら、握っていた紙をそ開いて「マツリ…」って答えたんだ。

しわくちゃの紙に記号みたいな文字がいくつも書いてあったんだけど、僕はフリット語以外読めなくて。

最初は一緒に住むつもりはなかったんだ。彼女にも帰る場所があるんじゃないかって思っていたから。

けれど、僕のことを「お兄ちゃん」って呼び出してから、自分の身に起こったことを忘れているみたいで。もしかしたら、思い出したくないだけなのかもしれないけど。

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