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「こんにちは。私たちが今回の視察担当です」

十部は手のひらを相手に向けた。AR機能により、そこに彼のIDと顔写真、所属が出現する。

「どうもはじめまして。よろしくお願いします」

出向いて来たのは十部たちと同年代の男性だった。眉目秀麗という形容がふさわしいほど、きれいな顔立ちをしている。

ー親のスネをかじるだけの物好きな寄生虫

十部は心の中で罵った。
ボランティアで教師をしている人といえば、暇と時間を持て余している金持ちかよっぽどの物好きだ。

 10分ごとに各教室を回った。

最年長は18歳。授業内容は簡単なものから難しいもの。言語はフリット語で行われていた。生徒たちは意外にも熱心に受けている様子だった。

「まだ紙を使っているなんて、信じられないでしょ?」
「ええ、まあ」

ー気安く話かけるな

十部はまたもや罵った。

「ハハッ、やっぱりお国の方はお堅いですね」

嫉妬しているのだ。自分より恵まれている彼に。
鼻が低いことがコンプレクスだった。母親のことを恨むこともあった。
今もそうだ。

なぜ父親に似なかったのか。母親の遺伝のせいで辛い幼少期を強要されたのだ。

一緒になるなら、桜坂のような非の打ち所がない美人がいい
十部はそう思い込むようになった。

「ところで今度の開放日に、何人かそっちに行かせてほしい人材がいるんですよ。今紹介しても?」

「どうぞ」

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