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これでまた、彼女に一歩近づいた。
十部は早速、頭の中で桜坂をデートに誘う口実やら計画やらを練る。
周りの男たちで、食事の誘いに成功したという話は聞いていない。
移動中は古臭いロックナンバーをかけて親しみやすさを出しつつ、高級レストランへ誘おう。
いくら彼女だって、金持ちの男性は嫌いというわけではないだろう。
ピコン、という機械音が耳元で鳴り十部は我に返る。「お待たせしました。間もなくヴィークルが到着します」と案内があった後、ようやく音楽を鳴らしながら2台のレヴィークルがやってきた。
次の目的地はボランティア団体が運営している学校だ。
教師たちは全員内側の住民であり、国の予算で働いているため定期的に視察を命じられている。
内側に住んでいる場合、出入りは自由で特に制限はない。
しかし、外側に住んでいる人々がゲートを超えるのはかなりの難関がある。
基本的には、仕事での出入りのみ許可されている。
まず身辺調査をクリアし、今までの行動から、政治的思考や犯罪歴を考慮し、清廉潔白な人間であると判定されなければいけない。
そして、それが終わったら一定金額を払い、決められた日時に入退場しなければいけないというルールがある。
しかし一年に一度だけ「開放日」と呼ばれる、仕事以外でも制限なく出入りすることができる日がある。
適用されるの人々は年齢は10歳から25歳までで、やはり犯罪歴がないことが絶対条件だ。
そのうちの何十人かが抽選によって選ばれる。
今月の対象エリアは、今十部と桜坂が出向いている区間。
学校への視察も、潜在的な危険がないか調査することも兼ねている。
咲き誇っていた頃は、さぞ優雅で華やかだったであろう。両脇には枯れた桜の木が校舎のほうまで続いている。