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外の調査に出るときはレヴィークルに乗って移動するが、よりによって故障してしまい代わりが来るまで徒歩で移動することになった。
十部たちが生活しているエリアではある程度天候をコントロールできる。
作物の育ち具合によって雨量を調整したり、真夏を迎えると雲を多く作り日差しを軽減したり、真冬は人工的に雪を降らせる演出もする。
外の規格外の暑さと湿度は、彼をまるで別の国に来たような感覚にさせた。
噴き出す汗でワイシャツはすぐに湿った。
ーそんな真面目にやらなくていいのに
十部はヒールを鳴らして歩く桜坂の後を歩く。
桜坂学生時代からその美貌とスタイルの良さが話題になり、そこそこの有名人であった。
ネット上では「ヴァーチャル」ではない、「リアル」な彼女の写真が出回るとファンクラブが設立され、私生活を詮索されるなど熱狂的なファンがいたほど。
十部自身も、初めて彼女に会ったときから一途に思いを寄せている。
見た目とは裏腹に気が強い一面があることを知ると離れていく男もいたが、残った人たちの大抵は彼女と一夜を過ごしたいという、生理的欲望を持つ人たちだ。
しかし十部は、他の男たちとは違って、自分は純粋な恋心を抱いているという自信がある。
男勝りなところも、頭がよくて偏屈なところも全部含めて好きなのだと。
それに、自分に釣り合う女性はそう多くないとも自負している。
桜坂は見た目も学歴も申し分ない。
十部たちが外に出てきた主な目的は、シロイドが立ち入れない領域への調査だ。
家賃回収や、亡くなった人がいれば身元調査や、後片付けの手続きまで担当することになっている。言ってしまえば、雑用係である。