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 茉璃に自分と同じ思苦労をさせたくないと思っているものの、今のままでは何も変わらないことも分かっている。

ゲートの外側に学校は存在しないが、例によってボランティア団体が主体となり、教育支援活動をしている。
しかし、上に行けば行くほど費用が膨らんでしまうのと、内側へクーデターを計画する過激思想を持つ集団という懸念点がある。

 明日の作業依頼メールは、まだ届いていない。
半年ほど働きづめだった分、休息を取りたいところだが、ほぼ一カ月何も仕事がない時期もあり、その時のためにできるだけ働いでおきたい。

「うん!やっぱ、唐揚げは冷めていても美味いですね!」

悩む透日の横でハルが幸せそうにほおばる。

「…、内側にいた時も食べてた?」

透日が訊く。ハルにとって、過去の話はタブーではないのなら、内側の世界について、知りたいことがたくさんある。

「もちろん!」
満面の笑みで答える。

「え、ハルお兄ちゃん向こう側にいたことあるの?」

茉璃が目を輝かせる。

「うん。まあ色々あってこっちに…。でも、後悔していないよ。それに、もしかしたら…」

「え?」

「いや、ごめん。こっちの話」

珍しく言葉を濁らせたハルだが、またいつもの笑顔に戻る。

茉璃と同じ黒い髪をしているが、ハルの髪色は艶がかっていて、それでも柔らかな質感を思わせる。
紺色のポロシャツから見える腕は細いが、筋肉が引き締まっている。

健康的な体格に、嫌味がない爽やかな性格。内側にいても、不自由なくやっていけそうなのだが。

「ハルお兄ちゃん、なんだかシロイドみたい」

「そうかな?どの辺りが似てる?」

「えっと、背が高いところとか…」

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