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ボランティア員の中には、相談に来た人たちに不動産や職を斡旋した後、弱みにつけ込み高額な手数料を請求する、いわゆる貧困ビジネスを狙ってくる者もいる。

ゲートの内側にいても、金がなくてははじまらない。
弱者救済処置が打ち切られて以降、やり口は巧妙化している。

相談者は溜飲を下げ、ボランティアは頷くばかり。彼らを照らす街灯は弱々しく、それでも小蠅は群がってくる。

両親は行方不明。しかし養わなければいけない妹がいる。
同情されて終わりだ。結局自分たちに課せられた問題は、自分たちでなんとかしなければいけない。
透日はいつの間にか、心に固く決意した。

 再び歩くこと30分。緩やかな勾配に差し掛かったころ、ハルが「休憩しません?」と根を上げるが、「あと少しだから」と促す。

住居であるマンションが薄っすら浮かび上がってくるより先に、赤く点滅する光が連なって動いているのが見えた。
「先輩、あれなんですか?」

ハルが指を差して聞く。

「多分シロイドだよ。外側には警察みたいな人がいないから、代わりにパトロールしているんだって」

「シロイド?」

「うん、『白いアンドロイド』でシロイド。俺がつけた訳じゃなんだけどね」

「あー、なんか見たことあるかも!細長い人型のアンドロイドですね!あれ、シロイドって呼ばれてるのか」

正式名称は人型パトロール専用ロボット。
その名の通り、パトロールを目的としたアンドロイドのため基本的には無害である。

表向きは治安維持のため巡回させている、としているが、監視用として外側の人間たちの行動や、言動を絶えず内側へ情報を送り続けることが主な役割である。
そのため、昼夜問わず歩き回っている。

家の中へ侵入してくることはないが、死角のない視野と5m先でも、対象を認識することができるカメラを搭載している。

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