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ボランティアとは名ばかりであるが、それでも破格の安さで弁当を売っている。
透日はここで今日の夜と明日の朝ごはん分を買って帰る。ポケットの中を探り、現金があることを確かめた。
透日はハルの分を立て替えようと申し出たが、「金なら多少あるので大丈夫」と財布を見せてきたため、透日は慌ててそれをしまうように言う。
ただでさえ治安が悪いのに、まだゲートの内側にいる感覚なのか。
「次の方ー」
順番が回ってきた。ボランティアの女性から手渡しで弁当を受け取る。
すると女性は透日の顔を見るなり、
「今日も相談会開いますから。どんな小さいことでも相談に乗りますよ。よかったらぜひ」
と声をかけてきた。
「どうも…」
そっけない返事をしてすぐに離れる。
「知り合いですか?」
ハルが聞く。
「いや、別に…」
毎日のように通っているため顔見知りになってしまったのだろう。
「それより先輩、この唐揚げすげーうまそうですね!久しぶりにちゃんとしたご飯食べるかも」
ハルがまた子供のようにはしゃぐ。
「そう、鶏肉を揚げた料理です」
「へえー。ハルは何でも知ってるんだね」
「普通ですよ、…ってごめんなさい。向こうにいた人間としてはって意味です」
ハルは慌ててフォローの言葉を入れる。
「いや別に、気を使わなくても…。無知なのは事実だし…」
ハルは案外優しくてまともな人なのか。
だとしたら、ますますこっち側に来た経緯が気になってくる。
透日たちとは別に、一方向へ向かって歩く人たちとすれ違う。道端には「相談所はこちら」と手書きの紙が貼られている看板があった。
先ほど女性が透日に伝えた集まりのことだ。
矢印のような記号が書かれた部分は破れてしまっている。
奥まったスペースには椅子が敷き詰められ、そこには白髪混じりの男性と中年の男性、子供を抱えた女性たちが輪になって向かい合っている。
皆痩せ細り、疲れとストレスが顔に滲み出ている。
その中に混じるボランティア員たちは、派手な服装を避け親身になって話を聞いている。あくまで対等な立場であることを主張するようだ。
—どんな小さなことでも相談乗ります!—頼もしい響きではあるが、相談員に今の状況を説明したところで何か変わるのだろうか。
所詮は別世界の人たちだ。