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片付けを再開すると、部屋の隅に山積みにされた衣類が目に入った。
サイズは多少大きくても、自分や茉璃が着れそうなものを漁る。
青色のシャツが目を引いた。今まで見たことがない濃い色合い。これは青ではない、何色というのだろう。
胸の辺りにプリントされた文字はかすんでしまって読めない。
それでも、茉璃はきっと気に入ってくれる、そう思った。
ーいや、やっぱり止めておこう
透日は広げたシャツを無造作に放った。
罪の意識があったからではない。
いつも通り仕事をこなす。ただひたすら、指示されたことのみをする。ただそれだけ。
透日が最初の頃組んでいた初老の男性は、強盗と万引きの常習犯だった。
額の古傷が特徴的だった。家主と鉢合わせたとき殴られてついたものだと、武勇伝のように語っていた。
透日は理解に苦しんだ。罪を犯せば追放されることは分かってるはずなのに、なぜ自ら外側へ行こうとするのか。
「一つばかり失くなったってバレやしないよ」古傷の男の口癖だった。
そう言っては、毎度のように遺品から何かしらくすねていった。
若い女性が働くことは少ない。このような治安では、格好のエサでしかない。
すぐに汚されるか、連れ去られ売り飛ばされるかのどちらかだ。
耐え続けたいのなら、強くならなくてはいけない。見た目も、口調も、性格も。