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すべては戦争から始まった。
数少ない資源を、水を、空気を、光を求め、世界中が戦った。
化学兵器をばら撒き、爆弾を放ち、何千万人と亡くなった。
残ったのは混沌とした大地と、彷徨う魂だけ。
そして終戦後、政府は国の存続のため、国民をふるいにかけた。首都半径50km圏内を「ゲート」と呼ばれる壁で囲い、内側と外側に領地を分断した。
ゲートの内側に住むことができるのは富裕層と、働く能力が認められた健常者のみ。
妊婦だろうが、子供だろうが関係ない。彼らは弱者を切り捨てた。
作業の合間に、透日は両腕を目一杯伸ばした。連日の作業のせいで腰が痛み出す。
ふと外を向く。
本降りになった雨の隙間から、黒く巨大な影が見えた。
ゲートの内側には人権がある。金も食糧も自由も家族も自然も、全てがある。
しかし、外側の人たちは?生活困窮者、持病がある人、前科持ち、犯罪者、反逆者…国から何かしらの理由をつけられ、不毛の地へ追い出された。
日が昇るという言葉も久しい。
空は常に灰色の雲が張り付いているようで、雨が止むことはあっても光が差しこむことはない。人々の心情を空が表しているように思えた。