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第43話 深淵の迷宮①

あれから俺は、グリムウッドの自宅でゾラスが来るのを待ち、龍型のエレナの背中に乗ってダークヘルムの奥地にある深淵の迷宮に向かった。

エレナのスピードは凄まじく、深淵の迷宮まであっという間についた。
そのままダンジョンに潜っても良かったが、今日は深淵の迷宮への入口を中心に広がったダンジョン都市で一泊することにした。





深淵の迷宮は、先代魔王ジュエルとゾラスのコンビによって地下200階まで踏破されている。
マップや出入口の場所、出現するモンスターにランダム性はないが(一部レアモンスターは除く)、罠や宝箱の出現場所は入る度に変わる。

少なくとも現在踏破されている200階までは、10階ごと環境が大きく変わり最後の階はボスフロアとなっており、そのボスを倒すと中身がランダムの宝箱がドロップする。
ボスのリポップは24時間、その間ボスフロアは安全地帯となる。
別パーティーの戦闘中以外は基本出入りは自由の為、別パーティーがボスを倒した場合、他のパーティーも自由にフロアを超えられる。

またボスを倒したパーティーのみ、次のボスがリポップするまでボスフロアから1階への帰還を選択できる。

以上のように『深淵の迷宮』は、環境の変化が少し珍しい程度で他のダンジョンと大きな違いはない。
最大の問題は1フロアの広大な広さとどこまで続くかわからない階層である。

フロアが広ければそれだけ日数を要することになり、食糧やポーションなどが大量に必要となる。


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「……といったところが『深淵の迷宮』の特徴となります。まぁその広さの問題もエレナさんとレイラさんが居れば問題になりそうですね~」

ダンジョン都市に到着後、地図やアイテムなど準備を進め、食事がてらゾラスからダンジョンの説明を受ける。

食事、といってもまだまだ野菜や肉の普及は進んでいないので、宿屋の食堂を借りてほぼ無限の容量を誇る俺の魔道具、『四次元鞄』から持ち込みの食糧を準備する。

俺の料理の大ファンとなったレイラが夢中で食事を進める中、大人3人と犬1匹は明日からの計画を話し合う。

ちなみに殆ど知られていないようだが、この世界の龍は全員が人型と龍型を使い分けられるらしい。
ちょっと気になって聞いてみたが、人型の数十倍の大きさを誇る龍型でも食事を取れるとのことだが、身体のサイズの分だけより大量の食糧が必要になるらしい。
なのでほぼ全ての龍が人型の状態で魔族や人間の国に紛れ込んで生活している。
難儀なもんだあ。

「確かにエレナさんに頼んで最短・最速で進むのもいいんですが、ゾラスさん以外のメンバーがダンジョン未経験なので、初日くらいはダンジョン慣れする為にもエレナさんに頼らず進みませんか?」

「魔王様、それなら一旦エレナさんに地下50階まで運んでもらって、そこから自分達の足で進んだ方が良いと思います。50階までは新人含めて冒険者で溢れかえっているのであまり効率が良くありません。」

なるほど、確かに一理ある。
どんだけ人が溢れているのかわからんけど、効率云々以前にも人が多ければその分モンスターとの遭遇機会も激減する。
経験値が稼げないと自分たちの足で進む意味がないしな。

「ではゾラスさんの案でいきましょう。エレナさんそれで宜しいでしょうか?」

「はい、問題ありません。一応飲まず食わず休憩なしの状態でも、10日間くらい継続飛行できます。」

とんでもない体力だ…そりゃ定期的な力の発散が必要となるだろうよ。

「私も手伝えます!!」モグモグ

レイラさんや…食べるか喋るかどちらかにしなさい、と思ったらエレナさんの拳骨が落ちた。
龍の拳骨半端ないです。

食糧の問題はちょっとチートになってしまうけど俺の作った『四次元鞄』さえあれば一気に問題は解決される。

取りあえず移動手段とアイテム・食糧関連で大きなアドバンテージが持てる。
あとはその都度対応していくことにしよう。




「ぎやぁぁぁぁぁあああああああーーーー」

ゾラスさんの絶叫がダンジョンの中をこだまする。
レイラさんのスピードが予想を遥かに超えていたらしい。


最初にレイラが龍型に変身したとき地下一階のダンジョン内は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。ごめんなさい。

エレナは急いで人型に戻り人気のないところに移動、俺の魔法のミラージュを応用して周囲から視認できないようにしてから飛び直す。

最初はゆっくりと慣らし運転、この時はまだゾラスも余裕があったが、その2秒後…
一気にトップスピードとなったレイラに涙を流しながらしがみつくゾラス。

まだ1階だけど残り50階まで耐えられるかな…。





「よし、これで終わりだ!」

50階に辿り着いた俺たちは、初めてのボス戦を迎えた。
アイスクイーンと呼ばれる氷の龍の姿は、初めて見る冒険者には恐怖の対象でしかないのだろうが、魔炎龍であるエレナとレイラを知っている俺たちにはトカゲみたいなものでしかない。

少しの間、アイスクイーンの攻撃を避けたり喰らったりしていたが、フレイムのパンチの半分にも満たない威力の攻撃にこれ以上続けても意味がないと判断。

ドワーフ渾身のオリハルコン製の逆刃刀を振るう。








不殺の逆刃刀とはなんぞや、アイスクイーンは欠片も残さず消え去った。

「「「「…………」」」」


こうして俺たちの冒険は幕を開けた!!

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