四天王3
目的地に向かっていると、ゼノライトが唐突に言った。
「なぁ。旦那の親父さんとお袋さんの墓参りに行かね?」
「それは、桜澄様のご両親の墓参りということか?」
ウルフロバテーネが訊き返す。
「だからそう言ってんじゃんアホ」
「アホじゃない! 私は狼女だ! いや違う。今のは違う。間違えた。私はウルフロバテーネだ」
「ゼノ、どういうつもりだ?」
カヨイの問いかけにゼノライトは表情を変えずに答えた。
「いや別に深い理由があるとかってわけじゃないんだけどさ。こっからすぐにエピロゴス島に行って天使を殺して世界を消すのってさ、ちょっと寂しくない?」
「寂しい、かぁ。確かにねぇ」
ロゼメロは納得したように頷いた。
「どうせ消しちゃうんだからその前にやりたいことをやるってのは賛成」
「だよな!」
ゼノライトは嬉しそうにニコッと笑った。
「マスターから特別急いでやるように指示を受けているわけでもないし構わないが、どうして墓参りなんだ? ゼノがこの世界でやり残したと思うことがそれなのか?」
「んー。なんて言うかずっと思ってたことではあるんだ。なんでなのかは分からないんだけど、誕生した時からずっと旦那の両親の墓参りに行きたいって思ってたんだよね。逆にお前らそう思ったことないの?」
「……貴様と同じことを思っていたというのはなんだか癪だが、私もそういう感覚はずっとある」
「へぇ。びっくり。アタシも謎の墓参り欲があって不思議だったんだよね。アンタらにもあったんだ。カヨイは?」
「ある」
「やっぱあるんだ~。なんなんだろうねアタシたちの謎の墓参り欲」
「俺の勝手な考えだが、多分マスターがしたいことなんだろうな」
「桜澄様の? どういうことだ?」
「俺たちはマスターの魔力によって作られただろう。魔力は感情から生まれるものでもある。つまり魔力と一緒に感情も俺たちに伝わったんじゃないか」
「んーなるほど? ありそう。じゃあ親父はずっと親の墓参りに行きたかったってことか」
「旦那の立場的に簡単に行くことはできないからな。そっかー。それなら俄然行かないとな」
ということで四天王は寄り道することにした。