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第10話 日常

「えーw本当に!?wそれはウケるねw」



「だしょ!いやー、真凜にも見せたかったわ!」



「じゃあ、今度みんなでカラオケ行こう!」



「いいけど...。俺は真凜と2人で行きたいな!」



「私既婚者ですけどw」と、指輪を見せつける。



 そんな真凛ちゃんとクラスのチャラ男のやりとりをぼんやりと見ていた。



「おい、碧。お前いつの間にバイトやめたんだ?」と、清人に声をかけられる。



「え?あぁ...この前ね」



「何で黙ってたんだよ。てか、今は何のバイトしてんだ?」



 まずい。何も考えてなかった。

ここで今バイトはしてないなんて言うとかなり怪しまれるよな...。



「まぁ、ネットでできる内職的な?」



「はぇー。そんなの稼げるのか?」



「そこそこね」



「ふーん。あっ、そういや日曜日何してた?」



「...え?いや、何も...」



「いや、杏奈あんなが碧みたいな女がすっごい綺麗な女の子と歩いてたって言うから。やっぱ見間違いだよな?」



「う、うん...。日曜は図書館にいたから」



「そっかそっか。抜け駆けされたのかと思ったぜ」



「ははは、ないない。俺に彼女なんて出来るわけないだろ」



 彼女はいない。いるのは奥さんだから嘘は言ってない。



「あの...」と、後ろから声をかけられて思わずゾワっと背筋が凍る。



「...お、おはよう...七谷さん」



「おはよう...あお...山口くんと...大迫くん」



「青山口くん?お前ピクミンとかなんかなのか?」



「ちげーよ。...それで七谷さん...。何の用?」



「えっと...修学旅行の話をしたくて...」と、話していると七谷さんの後ろをふざけた男子が通る。



 すると、彼女の体に「ドンッ」と当たりこちらにヨロヨロと倒れてくる。



 危ないと思った俺はそのまま彼女の体を支えようとしたのだが、その手は彼女の腕ではなく彼女の胸を支えてしまうのだった。



「「!?!?//」」



「ご、ごめん!!」と言うと、七谷さんは「ご、ごめんなさい!私こそ...//その...ごめんなさい...」と、今にも泣き出しそうな顔をしながら自分の席に小走りで帰っていくのだった。



「...ラッキースケベとか主人公の才能あるんじゃねーの?んで、どうだった?人生で初めての女の子のおっぱいの感触は」



「...まぁ、柔らかくて...結構おっきかった」



「これは責任とって付き合わないとだな!」



「おい、勝手なこと言うなよ」



「いやいや、でも七谷さんって大人しいけど普通に可愛いし、胸も大きめだし、控えめに言ってお前のタイプだろ?」



「...嫌いではないけど」と、そんな話をしていると、少し離れたところから殺意が放たれる。



 相手は見ずとも分かっていた。



『てめぇ、何胸揉んでんだこらぁ。やっちまうぞこらぁ』と、真凜ちゃんが笑顔でそう訴えてきているのが分かった。



「はー、いいな。俺も早く彼女がほしいぜ。出来れば汐崎さんと...。はぁ、いいなー。汐崎さんが奥さんとかエグいわー。けどしんどいかもなー。あんな美人の横にいるって色々プレッシャー感じそうだし」



「そうだな...。相当なプレッシャーだと思うよ」



 ◇



「ねぇ、何で海の胸揉んでたの?浮気?不倫?いい度胸だよね、本当」



「だからあれは事故なんだって...。たまたま触っちゃっただけなんだって」



「じゃあ、これも事故ってことね!」と、俺の手を掴み無理やり胸に持っていく。



「明らかに故意じゃねーか!?//」



「故意じゃなくて恋だよ!」



「ちょっと上手いこと言わなくていいから!」



 すると、真凛ちゃんは俺の胸を力無く叩きながら、「だって...だって...好きなんだもん...。好きな人が女の子と楽しそうに話してたり、鼻の下を伸ばしたりしてるのは見たくないから」



 それを言われて少しだけ気持ちがわかった。



 今日何で真凛ちゃんとチャラ男が話している姿に目がいったのか。

それはきっと気になったからだ。

そして、嫌だったからだ。



「...ごめん。でも...俺もちょっと嫌だった。石田いしだと楽しそうに話してるの...」



 すると、少し涙ぐんだ目で俺を見上げる。



「...嫉妬...してくれたの?」



「...うん。ちょっと...嫌だった」



「...そっか。ごめんね...。でも...ちょっと嬉しいかも...。でも...それなら分かるよね?石田くんが事故でも私の胸を触ってたら嫌でしょ?」



「...うん」



「分かってくれたならいい...。大好きだよ、碧くん」と、上目遣いでそんなことを言う。



【挿絵】

 
挿絵




 その表情は普段Mの俺をドSに目覚めさせるほどに可愛すぎる表情だった。

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