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第3章の第101話 どうしようもない問題28 答え売り上げ利益2



☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう告げる。
「ヨーシキワーカさんが語るには、
そのエリュトロンコリフォグラミーさんという人は、ペフコビブリオさんの攻撃を受けて、全治1ヶ月間の腕の骨を折る、大怪我をしていたらしいけど……。
実際には、そんな事にはなってなくて、
翌日になってきてみたら、『ピンピンしていた』そうよ!
何事もなく、あっち行き、こっち行きの、ブラブラ活動をしていたらしいわ。
元が正社員さんだったからね……。会社側は、その人を護った訳!」
「……」
「で、逆に、月見エビバーガーオーロラソース社は、良く人事を尽くしてくれたその人に対し、非情にもそこから追い出していった……!
ただの契約社員の非正規雇用のパートだからね……。いつでも契約を打ち切る事ができたって訳よ。
会社側は、その元の正社員さんの意見を取ったのよ!
わかる!? これが非正規雇用と正社員との厳然たる差別化よ!」
「「「「「なんじゃあそりゃあ!!!?」」」」」
これには、みんなも驚きしかない。
これには、Lちゃんを推しても。
「それは、いくらなんでも酷過ぎるよ……うん……」
とその追い出された人が、可哀想に思えてくる。
「あの会社は、そーゆうところなのよ!」
「……」
「ブラックだ……」
それは、誰かの呟きだった。
サファイアリーさんは、こう語る。
「で、この日を境にして、まだ学習中だったキーシストマ先輩とヨーシキワーカの2人だけとなってしまう。
以前からの古株は、この2人だけとなってしまったのよ!」
「……」
以前からの古株は、ペフコビブリオ大先輩とゲフィラブック大先輩と、キーシストマ先輩とヨーシキワーカの4人だけだった。
あくまで、着眼点は、そのヨーシキワーカ氏によるもの。
でも、その途中から、キーシストマ先輩とヨーシキワーカの2人だけとなってしまうのだった……。
危うし、箱洗い。
サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「掃除の仕方等も、ここで、絶たれたわけよ! 技能面の仕方もね!
昔ながらの人らしくて、人がものを教えるのではなく、人のやっている姿を見てから、盗み見て、覚えろ、という基本方針だったものよ!」
「へぇ~」
頑固一徹親父だった者だ。
その代わり、技術面は、高く評価でき、技術だけなら信頼ができる。
サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「その人の抜け穴は、ヨーシキワーカさんが、知り得る限り、『最大級』でね……。
仕事の効率ばかりか、掃除まで、影響を及ぼしていたそうよ――」


★彡
【ペフコビブリオ大先輩が辞めた後の2週間後の事】
【掃除の仕方が不明の洗浄機】
――その日、ヨーシキワーカとキーシストマ先輩は、工務の人から怒られたのだった。
それは、洗浄機の前だった。
『お前等、何でここの掃除しとらんかったとや!?』
『……』
『……』
『……お前らまさか……。この会社に3年間から5年間おって、ここの掃除、教えてもらってないだなんて……今さら言えんよな!?』
『……』
『……』
(正直に言えば、ペフコビブリオ大先輩もゲフィラブック大先輩も、まだ、自分には、その掃除の仕方を教えていなかったんだ……。
教えていたのは、せいぜい、水掃除ぐらいだ。
『水切りドライワイパー』で、水をかく程度だ……)
『……お前等、そこで黙ったまま、何も言わんつもりや!?』
『……』
『……』
(そして、これは希望だが、俺は知っていなくても、キーシストマ先輩なら、知っていると期待していたんだ。……だが)
『……』
プイッ……
(と心持ち加減に、そっぽを向いたんだ)
『……ッ』
(これには、俺しかいなく……)
『はい……済みませんでした……』
『謝ればいいってもんじゃないだろ!! ヨーシキワーカ!!』
『……ッッ』
『お前が責任もって、掃除しとけよ!!』
『……えっ!?』
(ま……マジ……ですか……!?)
『掃除の仕方を、教えてもらってたんだろ!?』
『……』
(絶望……しかなかった……。ハッキリ言えば、どんなに楽だっただろうか……。教わっていないんだ……先輩からは何にも……)
とここで、別の工務の方が着て。
『あー……ダメだ! 二本あるモーターのうち、一本は完全に逝かれちまっている……。これじゃあもう完全に動かなくなっているな……』
『原因は、そもそも何だ!?』
『ハァ~完全に、ここのモーターのファンの所にゴミが詰まっていたせいだな……』
『お前等2人とも!! 何でそこの掃除までしとらんとや!?』
『……ッ』
(そんな掃除の仕方だなんて、そもそも教わっていない!! 普通に考えて、一般人がモーターの掃除をすると思うかァ!?)


☆彡
――サファイアリーさんは、こう語る。
「――ペフコビブリオ大先輩は、人にあまりものを教えていなかったからね……。
今までパートナーだったゲフィラブックさんと2人で、朝の内に掃除をしていたそうよ。
この時、傷害事件を起こして、半ば強制的に辞めさせられていった、ペフコビブリオ大先輩は、昼3時上りの人だったのよ。
ヨーシキワーカさんにものを教えられる時間は、たったの3時間しかなかったの。
しかも、お昼休憩も挟むから、時間的には2時間ぐらいしかなかったのよ!」
「……」
つまり、2時間しかものを教えられる時間がない以上、その人には、最初から元から無理があった訳だ。
可能性として、最もそれが人物が、キーシストマ先輩だったわけだ。


★彡
【ペフコビブリオ大先輩が辞めた後の2週間後の事】
【掃除の仕方が不明の洗浄機】
――それは、洗浄機の掃除までしようとするヨーシキワーカの姿があったのだった。
『あった!』
(多分、これだ……!)
ヨーシキワーカ(俺)は、運がいい事に、乾燥機の機械にシールが貼ってあった事に気づくのだった。
簡易的だが、それには、掃除の仕方が載っていたんだ。
『……』
(えーと……要約すると……。
1.乾燥機近くの操作板にある『温調スイッチ』を入りから『切り』に切り替えて、
2.洗浄機2つの水タンクの中にある、丸ドラムの掃除を行う。
3.その機械内の清掃を行い。
4.作業終了後、洗浄機2つの水タンクを水いっぱいにすること。
5.最後に、再度もう一度、この乾燥機近くの操作板にある『温調スイッチ』を切りから『入り』に入れ替える事。
6.掃除は、毎日執り行う事、機械故障の原因になる――か)
その時だった。キーシストマ先輩から声が掛かってきたには。
『あっ! ヨーシキワーカ悪いんだけどさ。俺、そこんところの掃除の仕方がわかんないからな!?』
『……は?』
『何でも、昔辞めていく前のペフコビブリオさんが言うには、
昔、ゲフィラブックさんと朝方の内に2人で、あそこのしていたみたいなんだ』
『……』
『でも、俺、その時は、箱を持っていってな……! その時、2人から、後でいいから、詳しくその時に教えてもらってなかったんだコレが!?
じゃあ、そーゆう訳なんで、後はお前が頼むな!?』
『ハァ!?』
『だって、お前があん時、工務の人にそれができるって言ったんだろ!?
俺はその場にいて、聞いてたんだからな!?
じゃあ、後は勝手に、お前でやってくれ! 俺はここで、それを見ていただけだからな!?』
『オイッ! 俺ができるわけないだろ!?』
『お前ができるって言ったんだろあん時、工務の人の前で!?』
『……ッ』
『お前がそれができた後に、後で俺に、それを教えてくれるだけでいいからさ!? なっ!?』
『……』
(なんて……奴だ……。……ハメられた……!?)
それは、キーシストマ先輩の責任逃れだった……。
悪知恵が働く奴だった。


☆彡
過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――とんだクソ野郎だったわけよ。キーシストマ先輩は!!
自分が、1番多く見ていたのに、何も一度も見ていない人に、それを頼ってきたわけよ!」
「……」
「それから、2、3年間の間はね。その頃、だったかしら!?」


★彡
【(続)掃除の仕方が不明の洗浄機】
【安全低水面】
――それは、洗浄機のタンクの中の掃除が終わり、その前での出来事だった。
『――あぁ、そうだキーシストマさん』
『あっなんだ!?』
『この中にある蒸気が出る配管がありますよね!?』
『んっ? ……それが何だ!?』
『あぁ、それを使ってどうやら、このタンクの中の水を温めているんだよ。こう、この中を対流現象が起きて、下から温めているんだよ』
『た、たい……えっ!? お前今なんて言った?』
この時、キーシストマ先輩が脳裏に思い浮かべたのは、こんがり焼いたたい焼きだった。
食品かよぉ。
『えーとつまり……この中で渦ができて、掻き混ぜているってこと……かな?』
『フ~ン……それを使ってタンクの中の水をなぁ』
『で、自分、『ボイラー』の勉強を昔やってた事があるんだけど……』
『……』
『『安全低水面』といって、これ以上に下に下げてはいけないものがあるんだ』
『安全て……えっ、今なんて言ったんだお前!?』
『えーとつまり……何て言えばいいかな……!? 水かさを、この配管よりも上にしないといけないってことだよ』
とこれには、キーシストマ先輩も。
『あーわかったわかった! 上にだな! それだけわかればいいんだ俺は!?』
『えーと……とりあえず、中を開けてみて、視ますか!?』
『あ~いぃいぃ! そこん処は、代わりに今お前がやっといてくれ……!』
『……』
(後悔しても、知らないからな……)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――安全低水面。
ボイラーを運転するにあたって、守らなければならない最低の水面。
ガラス水面計を取り付けるにあたって、最低水位に取りつけなければならない。
ヨーシキワーカさんは、ちゃんと教えたものよ。掃除の仕方をね」
とこれには、ミノルさんも、アヤネさんも。
「「いやいや!! そんな風には教えてないだろ(教えてないでしょ)!!」」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返すのだった。
「……いや……あのね……。そんな畏まった感じで教えて、キーシストマ先輩がわかると思う?」
「……」
「小学生程度の知能指数で、それがわかると思う!?
あの人は、工学系を出ていないし……。
高校卒ぐらいの頭で、文系よ?
最初から元からそもそも無理があったのよ!?」
「……」
「ボイラーの免許を持っていたのは、特例のヨーシキワーカさん1人『だけ』で、キーシストマ先輩や他の人達は、
そんなボイラーの知識も何も持っていないんだから、教えるにあたって、意外と難しさを覚えるものよ?」
「あっ……そーゆう事か……」
「これを、職権区分といってね。
ボイラーマンさんならばわかっても、他の人達に対して、ものの教えをする以上は、意外と難しさを覚えるものなのよ?」
「……」
「ご理解いただけたかしら?」
「……」
コクリ
と一同、頷き得るのだった。
それを見て、あたしは。
「それは良かったわ、フフフ。では、次に、ふざけた態度を取るキーシストマ先輩ね」


★彡
【(続)掃除の仕方が不明の洗浄機】
【温調スイッチ、ふざけた独り言の態度を取るキーシストマ先輩】
――それは、試験的なものの教え方だった。
『あぁ、キーシストマさん』
『んっ!?』
『今、向こうの洗浄機の水タンクは、抜けていますよね!?』
『あぁ』
『で、今から、この温調スイッチを切りから『入り』にしますから、よく見ててくださいね』
(ホントは、やっちゃダメなんだけど……。この人には、何度も教えてみても、てんでダメだったし……仕方ないか)
ヨーシキワーカ(俺)は、その温調スイッチの切り替えを、切りから『入り』に切り替えるのだった。
当然、そんな事を仕出かしたら。
ブシャーーッ
とあっちの洗浄機から、とんでもない量の蒸気が噴き出して、黙々と上がるのだった。
これには、キーシストマ先輩も、ビックリものだった。
『……ッ!』
『……で、今、これは入りになっていますから、これを『切り』にすると……』
ヨーシキワーカ(俺)は、その温調スイッチの切り替えを、入りから『切り』に切り替えるのだった。
当然、そうしたら、
ブシューーッ、ウウゥ……
とあっちの洗浄機からの、蒸気が次第に納まっていくのだった。
『あ――ッ!? そがんすっとや!?』
『この温調スイッチは、最後には、必ず『入り』にしてくださいね。
まぁ、掃除に取り掛かる前には、『切って』から、掃除するんです』
『あっわかったわかった』
で、ここからが問題の核心だった。
なんと、この大馬鹿野郎は、こっちを見ずに、そっぽを向いて、誰もいないところに、話しかけるというバカをやらかしたのだった。
それも、誰かにヒソヒソ話をする類の、視ていないやり取りだった。
『おいっ、そうやればいいんだってよ!? あーっわかった』
『……』
これには、さしものヨーシキワーカ(俺)も
(いや、バカだろこいつ……独り言にも度が過ぎてる……。俺以上のバカが、ここにいたんだな……)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――いっ一応、ヨーシキワーカも独り言はあるけど……。
キーシストマ先輩は、その10倍以上よ……」
「10、10倍~~ッ!?」
「えっ、マジ……!?」
「大真面目な話よ……。各ラインのおばちゃんに聞けばわかるわ……。長い廊下でも、噂になっていたしね……。
独り言だけじゃなく、頭を傾げる動作にしても、奇抜で、妙なものだったのよ……!?
あれには、さすがに引いたらしいわ……」
ドン引きものだった……。
「ヨーシキワーカさんは、その人に、温調スイッチの取り扱い方は、3回はもう教えているのよ?」
「3回……」
「3回もよ……。あの中で、1番多く物事を教えているぐらいよ」
「……」
「一応、機械を壊したのは、その人らしいわよ。……次に、エリュトロンコリフォグラミーさんの物言いね――」


★彡
【掃除の仕方が不明の洗浄機】
【人の認識を欺くエリュトロンコリフォグラミー】
――洗浄機の水タンクの前には、ヨーシキワーカとエリュトロンコリフォグラミーさんがいたのだった。
そのエリュトロンコリフォグラミーさんから、声を掛けてきたのだった。
『オイッ、あれは何のためにあるんだ!?』
『……?』
『あー見えないのか? あれだよあれ? あの小さい蒸気が噴き出しているやつ』
『……』
それは、洗浄機タンクの中にある蒸気管から漏れる小さな蒸気(スチーム)だった。
『あれは、何のために、あそこについているんだ?』
『ああ、あれは多分、この洗浄機タンクの中の水を温めているんだよ。まぁ、温まるまでに結構、時間はかかると思うけど……』
『温める? 何言ってとやお前!?』
『え?』
『あんな小さな蒸気みたいなもんで、この中のタンクの水が、90度近くのお湯になるもんか!
蒸気で温めるだなんて、そもそも聞いた事も中とぞ!?』
『いや……だって、実際にそれしか考えられないし……』
『どこかに、この水を送って、温めるってもんならまだ考えらるが……。蒸気で温めるだなんて、そんな事考えれんぞ!?』
『……』
『ハハッ、やっぱお前は、その程度の頭しかなかったみたいだな!? こりゃあいいや!! (資格試験が)何度も落ち取るわけだ!!』
『……』
(フ~ン……)
『それよりも、まだ、あそこの大きな左手にある配管を伝って、
この細長い配管を伝って、
あそこの向こうの方にあるボイラー室に一時的に送ってから、
まだ、そこで温めてから、こっちに送ってくるというなら、まだ考えようがあるぞ!?
ハハッ、まだ、俺の方が頭がいいみたいだな!?』
『……』
『どうした何も言えないだろう!? 図星だからな!? ハハハハハ、こりゃあいいや!!』
『……』
フゥ……
そこには、溜息を零すヨーシキワーカがいたのだった。
(自宅のお湯焚きのユニエーターすら、知らんのかお前……!?
そんな手間をしていたら、毎月かかる電気代の無駄遣いだろう!?
俺ならば、左下の給水配管を通じて、
一度、『蓄熱曹』で水からお湯に温めて、それを二次側の『補助熱源機器』に通して、お湯から高温に温めてから、
それを、ここに戻せばいいだけだろ!?
それに、蒸気が出ていれば、対流現象が起きて、お湯を自動的に掻き混ぜるから、無駄がないだろうが!?
お前の意見と、俺の意見、いったいどっちが毎月かかる電気代が少ないんだか……)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――洗浄機の湯沸かし器については、ヨーシキワーカさんも、深くは知らないわ。
誰にも、ものを聞いていないんだしね。
ただ、そこにいて取り扱っていただけの話よ」
「……」
「この時、エリュトロンコリフォグラミーさんには、2つの狙いがあってね。
1つは、蒸気(スチーム)に気づかせない事が狙いだった!
これは、『カラ焚き』を意味してくるのよ!
1つは、何度も落ちている。
これは、エリュトロンコリフォグラミーさんだけじゃなくって、昔の会社の人達も知っていた事であり、
ヨーシキワーカさんは、今までに、何度も資格試験を受けてみては、
なぜか、普通よりも多く、点数が足りず、落とされていた……。
いわゆる、上からの嫌がらせであり、妨害行為はできていた事を、表わすのよ」
とこれには、ミノルさんも。
「嫌がらせ行為か……」
「いえ、それよりも、蒸気(スチーム)じゃない?」
「そうか!」
そう、資格試験のテスト点数よりも、まずは、その蒸気(スチーム)が急務なのだ。
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返すのだった。
「エリュトロンコリフォグラミーさんの妨害工作は、口からの『デマカセ』で、『意識の認識を言葉巧みにズラす』事にあったのよ。
これに関しては、ミシマさんと同じ分類であり、
人を騙すために、あったのよ。
つまり、『間違い』を『誘発』させるためにあった!」
「間違いを……誘発……!?」
「ええ、ヨーシキワーカさんは、我が強いから、そうまでして騙し難かったけど……。
ヨーシキワーカさん以上に、騙しやすい人物像がいて、それが、『キーシストマ先輩』だったそうよ――」


★彡
【掃除の仕方が不明の洗浄機】
【(続)人の認識を欺くエリュトロンコリフォグラミー】
――それは、ヨーシキワーカが、『水切りドライワイパー』で、床の水を切って、掃除していた時だった。
ブシャ――ッ
『ッ!?』
急いで見やると、洗浄機側から、蒸気が噴き上げていたのだった。
聴こえてきたのは、キーシストマ先輩の悲鳴だった。
『うわぁあああああ!? 何だコレ!? いったいどがんすればいいとや!?』
そこへ、聞こえてきたのは、騙し屋のエリュトロンコリフォグラミーさんの助け舟だった。
『ハハハハハッ、キーシストマ、お前に何やってるとや!?』
『いったい……どうしたらいいとや?』
『何だお前? 今あそこにいるあいつから、何もものを教わっていなかったとや!?』
『……は?』
『あいつの時には、それが『なかった』とぞ!?』
『えっ……?』
『ほらほら、どうしたどうした? 手が止まっているとぞ!? 何かした方がいいんじゃないとや!?』
『えっ? えーと……』
これには、哀れんでみていたヨーシキワーカも。
『……ッ』
(仕方がない!!)
俺は、掃除の途中で、キーシストマさんの不手際をサポートするために、動くのだった。
向かった先は、乾燥機近くの操作板にある『温調スイッチ』だった。
そこへ来た俺は――
(――やはりか!)
俺は、すぐにそれを、入りから『切り』に切り替えて、あの向こうの方にあるボイラーから送られてくる蒸気圧を、一時遮断するのだった。
ブシュー―ッ……ウウゥ……
と激しく噴き出していた蒸気が、段々と沈静化していくのだった。
とそこへ、キーシストマ先輩が着て。
『あ――ッ!! それを触れば良かったとや!?』
『へ?』
『え?』
『えーと……確か、前に一度、『教えてた』よね………………?』
そこには、微妙な間が流れていたという。


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――ヨーシキワーカさんは、キチンと一度は教えてるわよ。
もちろん、口で言ってたわよ。
それを聞いてなかったって事なんでしょ?
あそこには、ノートもメモ帳も持ち込めないから、まぁ、書けない状態なんだしね」
「……」
「実は、この辺り時点で、エリュトロンコリフォグラミーさんの言葉巧みによる、『意識操作』があっていたのよ――」


★彡
【掃除の仕方が不明の洗浄機】
【(続)人の認識を欺くエリュトロンコリフォグラミー】
『――クソッ、何で止まらんかったとや!?』
『あぁ、キーシストマ!』
『んっ!?』
『俺が、お前が休みの時、チラッとあそこにいるあいつのやり方を見てたんだが……。
一度として、あいつの場合は、さっきのお前のように、あのここまでの高さの凄い蒸気は、吹き上げてなかったとぞ!?』
『えっ……!?』
『で、俺が、ここにいて、チラッとその様子を見てたんだが、ここの温調スイッチが、あいつが掃除している時になったら、『自動』で切り替わっていたとぞ!?』
『あ~~それでかァ!! なるほどなるほど、自動でねぇフンフン』
『……』
(クックックッ、ホント、な~んも知らずに……。温調スイッチが自動で切り替わるもんか……バ~カめッ。
これは、手動操作なんだよ。さすがにバカでも気づけって!?』


☆彡
【意識操作、精神操作、世界から疎外されたような疎外感、孤独からの甘え】
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「キーシストマ先輩は、そうやってエリュトロンコリフォグラミーさんからの言葉巧みな『精神操作』に掛かっていた訳よ!?
初めは、虐めによる、執拗な嫌がらせ行為から続け、
そうした反感の思いによる我を削ぎ落していくようにして、
出る杭は、打たれ続けていった……訳よ」
これには、一同、押し黙る中で。
「……」
声を出してきたのは、スバル君に、アユミちゃんだったわ。
「まるで、虐めだ……」
「うん、弱い者虐めだ……」
それに対して、サファイアリーさんは、こう告げる。
「それは、『意識操作』の為だった……!
この人には、逆らっちゃいけないとする。言う事を黙って利かないと……と騙しやすい状態だった。
そうした状態にすれば、ほぼほぼ真っ白な状態だから、自分からの意見や連絡の指示を受けやすい状態だから、
上からの命令系統を受け止めやすい傾向にある。
逆らうようであれば、また、虐めにあうと……恐れ、そうした危機的意識が働き、
あちらのからの意見や命令を聞かざるを得なくなる……。
ここまでくれば、『意識操作』から、『精神操作』に移行し、正常な判断能力を、失う事ができる……!!
これが、『温調スイッチ』が自動で切り替わるものと、誤解していた、原因と経緯だった訳よ!」
「そーゆう事か……」
得心がいった。
サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「こうした状態を作るためには、
実際にそうした精神操作に陥った人の体験談があり、
人は、そうした状況下が、『最短』で『3ヵ月間』続けば、『意識操作』の状態にあるそうよ!
そして、『最短』で『6か月目』で、もう『精神操作』の状態に移行する事が、充分に可能!!
一番、手っ取り早いのは、もちろん、『肉体破壊』の『拷問』ね!」
「拷問……」
「これは、最悪の例だから、今回は除外と考えていいわ」
「……」
拷問は、除外である。
「一般的に、学校からの虐め行為では、おおよそ『1年間』……!
次に、職場環境によって、よりけりだけど、『半年間』で可能!
例えば、親や子にも迷惑行為が及ぶような、常套文句を利かせておくことで、そこまで持っていく事が、充分可能なのよ!?」
「……」
「意識操作に……」
「精神操作か……」
サファイアリーさんは、こうも語る。
「そうした時間の中で、エリュトロンコリフォグラミーさんは、確証を持っていた。
視ている限り、この中で、1番の実力者は、ヨーシキワーカだと……!
先のペフコビブリオを、取り入るのは失敗したが……。
今度は、こいつを、味方につける必要があると……!
だから、取り入ろうとしたわけよ! 何度も声を掛けあってね」
「……」
「その中には、自身の体験談に基ずく、昔話などが、非情に有効だったそうよ?
その中で、ヨーシキワーカさんからも、情報を聞き出していた。
そうした中で、『信頼関係』ではなく、『仕事仲間』としての『信』を置かせようとしていた……!」
これには、ミノルさんも、アヤネさんも。
「信頼からか……」
「仕事仲間を通じてね……」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返してきて。
「ええ、時間による構築から考えていた。
そうする中で、何度も、エリュトロンコリフォグラミーさんからヨーシキワーカさんに声掛けする事によって、
キーシストマ先輩から見れば、その世界から、『はみ出されたような疎外感』を覚える。
いわゆる、『孤独な状態』を作り出すことができる」
これには、僕もアユミちゃんも。
「……孤独か……」
「……はみ出された世界観……」
押し黙る思いだ。
サファイアリーさんは、こう続ける。
「そんな状態になれば、孤独からの甘えになり、助けを乞うようになっていく。
こうなれば、もう格好のいい的で、次から次へと、『イタズラ』を『仕掛けて』周っては、『問題』に『見せかける』事ができたわけよ?
ほらぁ? こうすれば、何だか、どうしようもない問題の手口に似てきてるでしょ!?
向こうは、その手口を知っていて、やらかしていた訳よ!?」
「……」

――そこへ、アンドロメダ王女様が。
「まるで、わらわ達が、失敗してしまったかのような世界観じゃな……」
これには、Lが、シャルロットさんが、そして僕が振り返っていくのだった。
「……」
「……」
「……」
アンドロメダ王女様は、こう続ける。
「その娘後の申す通り、そんな状態になれば、孤独からの甘えになり、助けを乞うようになっていく。
そうなれば、もう格好のいい的で、次から次へと、問題に見せかけては、
いい話になるような話に持ち掛けて、わらわ達や、その周りの者達から、なんだかおかしな事態を創り上げることができよう。
商談に持ち掛けては、あちらが得するような、利権買いと化していく……!
損得勘定じゃ! 必ずこの世界には、そのミシマのような騙し屋が潜んでいるものじゃ!
そやつほど、周りの仲間達の数が多く、女の数も、また比例して多い。
女が使われてくる線があるじゃろうな」
僕は、そんなアンドロメダ王女様の説明を聞いていたんだ。
「……」

――そこへ、僕の近くにいたアユミちゃんが、こう声を開けて。
「――ねぇ、サファイアリーさん!」
「んっ? 何かしらお嬢ちゃん」
「温調スイッチって、そもそも何なの!?」←小学生だから、知らなくて当たり前
「………………」
間の抜けたような沈黙が流れたのだった……。
ハッ
と意識を取り戻したサファイアリーさんは、こう続けるのだった。
「あっそっか! そもそも知らなくて当たり前よね?」
「うん、知らないーっ!」
「ごめんごめん! えーと……何て言えばいいかなぁ? う~ん……そうだわ!」
あたしは、わかりやすい説明を心掛けるの。
「温調スイッチは、例えば、『お湯焚きのユニエーター』みたいなものでね! ユニエーターはわかるわよね?」
「うん、それなら家にもあったよ! お風呂に使われるやつだよね!?」
「そうそう! その認識でだいたい合っているわ」
よしっ、この線ならいけるわ。
「例えば、水が何にも張っていない状態で、お風呂の『お湯だきボタン』を押したら、どうなる!?」
スッ
とここであたしは、その両手を上げてから、クイズを出す事にしたわ。
「『カラ焚き』になるでしょうか? それともならないでしょうか?」
「……」
そう、それは、かって、ヨーシキワーカさんが、ファウンフォレストさん相手に出した、クイズの仕方だったわ。
もちろん、あたしは、ヨーシキワーカさんに習って、自分で勝手に答えを言うものよ。
「カラ焚きになります!
当然、お湯を張っていない状態なので、そんな事を続けていたのだから……、その蒸気管から痛み出していく事になります。
ついには、そうした機械の内部まで、カラ焚きの状態が続くので、
熱で焦げていく事になります。そうなれば、もう故障ね!
新しく、機械から買い替える必要がある訳よ!
もちろん、外注工事の人を呼んでから、取り付け工事をするから、意外と高額になるものなのよ!?
つまり、弁償ものの責任ものね!」
「へぇ~そうだったんだぁ。わかりやすぅ!」
とあたしは、できるだけわかりやすく説明したものよ。
「まぁ、この機械の清掃にも、ちゃんとした意味があってね――」


★彡
【乾燥機、洗浄機、床掃除を含めて、合計1時間30分も掃除でかかる】
――それは、掃除中の出来事だった。
『――お前等、いつまでそれに掛かっているとや!?』
『んっ!?』
それは、菓子パンラインの人からの物言いだった。
『早く済ませろ!! こっちは待っていて、生産ラインが止まっているとぞ!!』
『いや……まだ、途中なんだけど……』
『早くしろ!! ったく!!』
『……』
実は、こんな事はちょくちょくあっていて、1年間に3、4回は少なくても起きていたんだ。
当然、相手は昔から知っていたので、我慢ならず、こうしたんだった。
ポチッ
と緑色の起動ボタンを押し、半ば強制的に機械を動かしたのだった。
当然、こんな事をしたら……。
ブシャーーッ
と洗浄機の細長いいくつもの配管から、水が噴き出したのだった。
しかも、ベルトコンベアまで、動き出して、掃除が途中で、半ば強制的に中断したぐらいだった。
だが、これには危なくて。
『危ねぇ!? いったい何があったとや!?』
それは、向こうの方にいるキーシストマ先輩の悲鳴だった。
手なんて巻き込まれたら、指の切断事故になるものだった。
だが、菓子パンラインの人は、そんな事はつゆ知らず。
『さっさとしろ!! ったく!!』
してやるだけして、その場を立ち去っていくのだった――
この時、温調スイッチは、『切り』のままの状態であり、本来であれば、入りの状態にしてなければならなかったんだ。
で、キーシストマ先輩がきて。
『オイッ!? ヨーシキワーカ!? 何があったとや!?』
『ハァ……さっきな、菓子パンラインの人が着て、箱が足りてないから、勝手にそいつが動かしたんだよ!!』
『アホか――ッ!! 何でいきなり動かすとや!? 手が巻き込まれそうになったやろ!! 手ェ出してたとやぞ俺ッ!!』
菓子パンラインの人は、機械の動かしたかは知っていても、安全確認までは、怠っていて、していなかったのだ……。
これが、二次災害に繋がるとは、夢にも思わなかったのだった。
これが原因で、キーシストマ先輩が切れ、後々の作業に置いて、安全確認に注意の眼を向けるようになっていく代わりに、
作業効率性が、大きく落ち込んでいったのだった……。
手抜きになっても、まぁ、仕方がない……。


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――菓子パンラインの人は、機械の動かしたかは知っていても、安全確認までは、していなかったからね……。
これが、二次災害に繋がるとは、夢にも思わなかったそうよ……!?
これが原因で、キーシストマ先輩が切れ、後々の作業に置いて、安全確認に注意の眼を向けるようになっていく代わりに、
作業効率性が、大きく落ち込んでいったそうよ……」
これには、ミノルさんも。
「アホか――ッ!! そうなっても仕方がないだろ!! 売り上げ利益が落ち込む理由(わけ)だわッ!!」
「良くも悪くも、その菓子パンラインの人が、悪いわけね!」
「手が巻き込まれそうにならなくとも、洗浄機の蓋が空いていて、その状態で、機械を動かすものだから、
そこで作業に当たっていた人は、水で濡れたそうよ。
そーゆう理由もあって、勝手に辞めていっている人も、いるぐらいなのよ!?
ホントに、1人か2人程度だったけどね。
まぁ、いいように言って、その口でも、いくらか払って、噤んでもらったんでしょう。
当然、売り上げ利益が落ち込んでいく理由にも当たるわね!?」
「……」
一同、納得の思いだった。
サファイアリーさんは、こう続ける。
「当時、あたしも疑問を抱いていたんだけども、後でヨーシキワーカさんに、これを尋ねた事があったのよ?
これは、機械を壊した原因じゃないのかって!? それに対して、あの人の答えは、YESでもありNO!」
これには、ほぼみんなも。
「……」
(まさか……!?)
そんな嫌な予感が際立つのだった。
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返すのだった。
「で、あたしも、みんなと同じで、何でなのかなぁ!? ――って大いに疑問を抱いていたんだけども……!?
よくよく考えてみれば、それは、算数でわかる事だったのよ!?
いい、掃除の時間が1時間30分=働ける労働時間1時間30分を、差し引いて無駄にしているようなものだから、
掃除の時間だけで、1時間30分も無駄にかかっているようじゃ、
それは、仕事の時間を削ってまで、するものだから、売り上げ利益が、落ちるでしょうか、それとも一定のままでしょうか!?」
「あっ……落ちる――ッ!!」
「正解! 『売り上げ利益』が落ちています……!」
これには、アヤネさんも。
「なるほどねぇ……。そこで、売り上げ利益が落ち込んでいた訳ね……」
納得納得。
「んっよしっ! ペフコビブリオ大先輩が辞めていった後の掃除の話は、だいたいこんな所ね。
次は、仕事にまつわる話をしましょうか!?」
「……」
「半ば強制的に、人が辞めさせられた場合は、色々と不都合や弊害が出てくるものよ。
それが、仕事、ものの教え、掃除など多岐に渡るものでね。
特にそれが大ベテランさんやベテランさんであるほど、その影響が大きいわけよ――」


★彡
【半ば強制的に、その人物が辞めさせられた場合、色々と不都合が出てくる】
【それは、仕事における作業、人が人にものを教える指導、機械などの清掃である】
――いきなり、ペフコビブリオ大先輩が、辞めさせられた影響は、最大級だった……。
この時のメンバーは、キーシストマ先輩、ヨーシキワーカ、エリュトロンコリフォグラミーの3名だけだった。
基本、4名体制なので、この欠員の穴埋めは、信じ難いほど重かったものだ……。
『よっと』
そんな中、ヨーシキワーカは、たくましくも懸命になって、考え、実行に移していた。
足元には、当時、まだあった二連台車を使い、その上に箱を乗せていたのだった。
これを、路上から箱洗いまで運搬するわけだ。
(1個1個していったら、日が暮れるからな……)
ガラガラ
とそれを押して移動するのだった。
(これは、少し考えものだな……)
――その頃、エリュトロンコリフォグラミーさんは、またズル休みをしていて、箱洗いの中には、いなかった……。
いったい、どこで油を売って、ほっつき歩いているんだか……。
『ってな事が会ってよ! ゲラゲラ!』
『あははは! そうね!』
元正社員であるエリュトロンコリフォグラミーさんは、この会社が設立当初からいた古株なので、
周りから、温かく匿われていたのだった。
――で、ヨーシキワーカサイドに戻り、途中でキーシストマ先輩が着て。
『あ――っ!? そがんすれば良かったとや!?』
『お前、何で気づかないの……!? ハァ……』
もう嘆くしかない。
メチャ苦労するわぁ……何で、こんな奴なんかとペアになったんだよ。
『……キーシストマさん!』
『んっ!』
『役割分担しましょう!』
『役割分担!?』
『はい、自分が、箱洗いの近くまで、いくらかこれを運びますから、キーシストマさんは、その間、1人で箱洗いをしていてください!
その後で、一気に、2人で上げましょう!』
『なるほど、そがんすれば良かったのか!』
そう、この場面、2人して、同じ作業に当たれば、確実に早く回る。
だが、その代わり、メインとなる箱流し作業の手が、止まるわけだ。
片方を優先すれば、もう片方が確実に止まる。
その解決策が、役割分担だったんだ。
この時、ペフコビブリオ大先輩の抜けた穴は、意外と大きく、如何に比重(ウェイト)を占めていたかが良くわかる。
また、エリュトロンコリフォグラミーさんが手伝ってくれないから、自分たちが苦労していたんだ。
もう、この手しかなかったんだ。
当然、そうなれば、自分の負担が1番デカい……。


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――4人から3人に減った影響は、一番デカくてね……。
この時、エリュトロンコリフォグラミーさんは、また、15分から1時間ほど、ちょくちょく抜け出していたから、
最悪の人手不足の時代だったそうよ……。
しかも、ちょくちょく、エリュトロンコリフォグラミーさんが、箱洗い流し作業場のセンサーの処に、シールを張っては、誤作動が起きていた。
で、あれ? なんかおかしいなぁと思い、ヨーシキワーカさんが工務の方を呼ぶと、
平然と機械が動いていたそうよ。
で、工務の方から、卑しい目で見られて、ヨーシキワーカさんの立場が危ぶまれていったそうよ――」


★彡
【センサー部分にシールを張って、誤作動を起こさせて、機械を停止させる手口】
――その日、エリュトロンコリフォグラミーは、この会社の誰かと相談し、その人から、シレッとシールを入手していたのだった。
それは、軽いイタズラ目的だった。
オレンジ色のシートシャッターの前に立ち、この時は、まだあった手動ボタンを押し、
ガタガタと音を立てて、オレンジ色のシートシャッターが上がるのだった。
中では、ヨーシキワーカが箱を流し、機械で洗浄し、出てきたところを、キーシストマ先輩が台車の上に乗せて、運搬していたのだった。
それを見て、シメシメと不敵に笑うエリュトロンコリフォグラミーさん。
それは、ちょっとしたからかいによる意地悪だった。
『……』
エリュトロンコリフォグラミーさんは、ヨーシキワーカの様子を見つつ、前を向いている時ではなく、後ろを向いたタイミングで、それを仕掛けるのだった。
最後の出の方のアンスタッカー流し台の近くで、故意的なイタズラを仕掛ける姿があった。
後ろに行ったヨーシキワーカは、何も知らずに、ただただバカみたいに、箱を持ってきては、流す作業を行っていた。
その時だった。
箱が続々と止まっていったのは。
『……ッ!?』
見やると、最後の出の方のアンスタッカーのランプが、黄色に点滅していた。
これは、異常を知らせる報せだった。
で、何くわぬ顔をして、エリュトロンコリフォグラミーさんが話しかけてきて。
『オイッ、ヨーシキワーカ、これは、どーゆうことや!?』
『あっあれ!?』
この時、自分は、まったくといっていいほど、気づけなかったので、
乾燥機の蓋を開けて調べたり、洗浄機の蓋を開けたりして調べたりで、四苦八苦していたものだ。
それでも原因は取り除けず。
『……一度、箱を全部、どけてみよう』
そう思い立ち、機械の中にあった、すべての箱を退けてみても、
その原因を取り除けなかったんだ。
『おいおい、コレ、掃除した方がいいんじゃなかとや!?』
『……』
その日、自分は、その人に言われ、洗浄機と乾燥機の掃除をしたのだった。
要した時間は、30分だった。
『……何でだ?』
『なあ、ヨーシキワーカ、これおかしくないか?』
『……』
怪しく思ったヨーシキワーカは、そのエリュトロンコリフォグラミーさんの様子を見るのだった。
そいつは、出の方のアンスタッカー前にいて、やってはいけない事をやっていた。
そう、それは、設定画面に障り、故意的に、また作為的に、調整調整していたのだった。
当然、アンスタッカーのゲートが開いたり閉じたり繰り返して、レールが動いたり止まったりしていた、さらに台座が上がったり下がったり繰り返し。
『えっ……』
「あいつ、何やってとや……」
ガシャン、ガラガラ……
事もあろうに、なぜか、出の方を触って、入りの方のアンスタッカー側のゲートが勝手に開いたのだった。
これには、自分達も、ビックリしたものだった。
『あっヤベッ』
で、当然、訳のわからないところを触っていたので、それは、多数の数字とアルファベットが書かれた任意設定画面だった。
普通は、こんな所は触らない。
で、俺達が気づき、行こうとしたら、あっちが。
シッシッと手を振って、来させないようにするのだった。
『あ~今、大事なところを触っているんだ、今変に声を掛けないでくれ!! 注意が飛んで、今まで何をやっていたのか忘れちまうからな』
『……ッ』
『……どうする?』
『もう少し、原因を探ってみよう』
『……わかった』
で、俺達2人は、そのシール1枚に気づかないまま、その機械が止まった原因を探るのだった。
で、そのエリュトロンコリフォグラミーさんが離れたところで。
(あいつ、何やってたんだ……!?)
気になった俺は、そっちに行ったんだ。
そしたら、思いがけないものを見たんだ。
『な、なんだコレ!?』
それは、見た事がないものだったんだ。
画面いっぱいに、数字とアルファベットの記号が並んでいて、変な画面だったんだ。
で、エリュトロンコリフォグラミーさんは、出の方ではなく、入りの方にいて、そっちでも触っていたんだ。
もちろん、設定画面を。
これは、触らない方がいいと思い、俺は離れたんだ。
――で、そのエリュトロンコリフォグラミーさんから、声を掛けられてきて。
『オイッ、こうなったらもう、工務を呼んできた方がいいんじゃないのか!?』
『……それしかないか』
で、俺は工務の人を呼んできたんだ。
そしたら、もう中は、普通に機械が動いていたんだ。
『……あれ?』
『何だ、普通に動いているじゃないか!?』
その日、俺は、工務の方から怪しい目で見られたんだ。
『……ちゃんとお前、ものを調べたのか!?』
――で、その工務の人と別れた後、箱洗いに入り、キーシストマ先輩がこう言ったんだ。
『あぁ、戻ってきたかヨーシキワーカ』
『どうなってんだいったい!?』
『さあ!?』
『……ッ』
『俺から言えるのは、あいつが、あそこ等辺に行ってから、何かを触っていたぐらいしか言えない』
『何か?』
それが、シールだとわかったのは、随分後の話だった。


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――ヨーシキワーカさんが、エリュトロンコリフォグラミーさんのイタズラによるシール1枚に気づく事になったのは、随分後になってからの話よ。
その日は、40分以上の仕事の遅れが発生したそうよ。
実は、こーゆう事は、自分の休みの日にも会っていてね。
当然、会社としては、売り上げ利益の落ち込みようだった訳よ――」


★彡
【水曜日、木曜日の仕事の遅れが、別の日に回ってくる】
――それは、ヨーシキワーカが、出社したタイミングだった。
運送会社のトラックが入ってきていて、積み荷卸の箱を、卸していくのかと思えば、
先に着ていた、同業者がいて、何やら会話をしていたのだった。
『~~! ~~!』
『~~! ~~!』
それを認めたヨーシキワーカは。
『何やってんだあの人達……んっ!?』
普通であれば、ここで、卸していくのだが……。
そうはならず、月見エビバーガーオーロラソース社、その敷地内の別の工場の方へ、トラックごと移動し、そこへ卸していくのだった。
これには、さすがのヨーシキワーカも。
『いいっ!? なっなんで、そっちへ持っていくの……!?』
――当然、そんな事を犯せば、隣の工場から、こちらの工場へ、電話が飛び、苦情の処理を行うために、
総務課の人が、文句を言いに来るのだった。
『オイッ! 箱洗い、何やっているとや!? 何ですぐに、あの向こうのやつを片付けんとや!!』
『あっ、いや……えーと……』
『ここのはもういいから、先に向こうの方を片付けておけよ!!』
『えっ……』
(お、俺じゃないのに~~ぃ!?)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――普通の作業量が、4人いて、100とするならば……。
この時、あまり手伝わないエリュトロンコリフォグラミーさんがいて、80……。
あの人とキーシストマ先輩がいても、連携なんて上手くいかないから、70……まで落ち込んでいたそうよ
もちろん、イタズラ込みでね」
これには、ミノルさんも。
「正常時が、100とするならば、あまり働かない人がいれば、80まで下がる訳か……」
とアヤネさんも。
「上からの指示がないという事は、責任者も務めていたのが、そのペフコビブリオ大先輩だったわけね。
その人からのあれやれ、これやれ、指示があって、上手く現場が周っていた訳ね。
で、その人がいないから、70まで落ち込んでいた……と」
サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「そんな中で、ヨーシキワーカさんも、賢明になって仕事をしつつ、
それと並行して、資格試験に臨んでいたから、思わぬ誤解をも、招いてしまう時もあるのよ――」


★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』Tsukimi Shrimp Burger Aorora Sauce Company(ツキミ シュリンプ バーガー オーロラ ソース カンパニー)』】
【有給休暇を取り、資格試験を望んでいる間に、箱洗いの作業効率が落ち込み】
【それを認めた総務課の人達が、会計計算で、1万円だけ抜き取る、契約違反の違法行為】
――その日、箱洗いの屋外で、左遷降格処分して箱洗いまで落ちてきたエリュトロンコリフォグラミーさんと、オオコウチさんが、何やら話し合っていた。
『――あぁ、そこの君々、ちょっとここまでいいかい?』
『……』
そのオオコウチさんに呼ばれて、移動していくのはエリュトロンコリフォグラミーさん。
『はい、何でしょうか?』
『実に困るんだよねぇ~!? 勝手にこんなに休まれちゃ。ここは『株式資本』の企業なんだから』
『ハァ……』
『あの子が、先月また休んだから、ここの作業効率だって、目に見えた感じに落ち込んじゃって、『売り上げ利益』がここまで落ち込んだんだよ!?
会計を預かる私達だって、それを一目見ただけで、すぐにわかるものだよ!?
だから、今月分のあの子に支払われる給与明細だって、総務課(あそこ)の会計を預かるソフトで、
こっそり『1万円(76米ドル)だけ』抜き取ったんだからね!』
『ハハハッ、そりゃあいい!!』
『フンッ! 君は、こんな話会っていただなんて、あの子には黙っているんだよ!?』
『はい、そんな事は言われんでも、こっちはわかってますよ!』
『……』
その時、2人は完全に見逃していた。
その通路を、誰かが横切っていった事を。
『ハァ……。今あそこにいるあの子が『抜けた日』辺りから、こんなになるまで箱が増え出してきて、
この道路横の道だって、こう通り難くなっちゃってるじゃないか!?
ここは箱を置くところなんかじゃなく、車が通る通路なんだよ!?
さっき通って来た自分の道だって、あそこを動かして、ようやく1人分だけ通れるぐらいの細い道だったんだぞ!?
すぐに言って聞かせ、片づけるように!! ……わかったな!?』
『ハ~イ』
――更衣室にて。
『――という事らしいですよ』
『あ、あいつ~~!!』
ヨーシキワーカ(俺)は、影の連絡伝いで、その事を聞いたのだった。
(あの時、視たのはそーゆう事だったのか……ッ!!)
『……あっ!? 知ってますか!?』
『!?』
『オオコウチさんには、奥さんがいて、品質管理の人なんですよ!』
『……』
『で、ドーナツラインの前で、ペチャクチャと良くしゃべっていて、
その中の人が迷惑していたんですよ。
で、ちょっと前にぐらいになんかがあっていたらしくて、
そのドーナツラインの人の給与が、1万円(76米ドル)抜き取られていたんですよ。
でも、あの奥さんの方に文句は言っても、旦那さんの方は会計を預かっていますから、ここでは逆らえない口なんですよ……誰でも……』
『……』
(まぁ、何でもお金を出す方が強いからな……)
『……まぁ、そんな感じなんで、ヨーシキワーカさんも、この会社にいる間は、あの2人には逆らわない方がいいと思います』
『あぁ、わかったよ』
『じゃあ! 戻って、自分は下で仕事があるので』
『……』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「ヨーシキワーカさんが言うにはね。会計ソフトを通しての給与の天引きだけじゃなくて、
お金を抜き取る現場を、複数回は目撃してたそうよ?」


★彡
【更衣室での窃盗】
――それは、更衣室の現場で起こっていた事だった。
ガチャ、と開き入ってきたのは、正社員以上の高い位の人たちだった。
『オイッ、お前達、今なら人がいないうちに、
ロッカーの中から、『合鍵』(カギ)で片っ端から開けていって、コッソリ抜き取っておけ!!
自分たちの持ち場のラインのパート社員の所から、こっそり、2千円から3千円ほどに抑えてな!!
くれぐれも、1万円も抜き取っておくなよ!? さすがに勘づかれるんだからな!?』
『わかってますって』
『それぐらいは』
『今回使われる、『日帰りの飲み会での足りない徴収日集め』だからな!!
どうせ、ここのパート作業員たちは、飲み会の報せをしても、どうせ、集まってはこないんだからな!!
それぐらいなら、いいって事だろ!?』
『はい!』
『わかりました!』
で、入って来るや否や、ヨーシキワーカの存在に気づき。
『うおっ!? 誰かいた!?』
『マズイ、今の聞かれたか!?』
『あぁ、ヨーシキワーカか……あいつなら大丈夫だろ!?』
『……』
『……』
『どうせ、周りに言い触らすような奴じゃないしな』
『それもそうですね』
『あっ、それもそうだな』
そんな会話だったものだ。
その当時から、ヨーシキワーカは、脅威としては見られていなかったのだった……。
『……』
(ひょっとして俺って……いてもいなくても、同じって事か……!?)
ガ~~ン……しょんぼり……
ヨーシキワーカ(俺)は、ここでも、いてもいなくても同じ存在だった……雲のような、影のような人間だった、
(日帰り旅行の飲み会って、それ以前にもお前達は、2泊3日の旅行の時にも使ってただろうが……クソゥ……)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――当然、こんな事を行っていれば、薄々勘づいてくるパート従業員さん達もいるわけよ!?
あの会社はね、雇用している従業数が200人ぐらいいて、その80から90%は、非正規雇用だから、
一度(ひとたび)でも、そんな噂が立てば、従業員さん達も、やる気を失っていくもの……。
当然、見る間に仕事効率は落ちるわよね!?」
「うんうん」
とこれには、みんなも頷く思いだったわ。
これには、ミノルさんも。
「なるほどなぁ……会社全体の売り上げ利益が落ちれば、そのシワ寄せがいくのは、下の連中だから、
その給与分から差し引いていって、
さらに日帰り旅行の飲み会などの集会があれば、また、カード財布から抜き取る手口だろうから、
あぁ、何だか……それに気づいた頃には、悪循環になっているものだぁ……」
これには、アヤネさんも。
「会社さんは、それを誰か1人のせいに仕向けた訳ね!?
そうした標的、『共通の敵』を作った方が、『団結力』が増していくからね」
アユミちゃんも。
「あぁ、なるほど、だからぁ、職業訓練校時代に、そうして繋がっていった訳ね!?
なるほどねぇ――へぇ~段々と読めてきたわぁ――」


★彡
【また問題でも、お前のところの辞めていったラインの奴等にやり通して、幾らかは、後で徴収してみるか!?】
【アプリゲーム】
――それは食堂の現場で起こっていた事だった。
『あぁ、クソゥ……また、この名前のやつに負けたか……!』
『やっぱ、強い課金アプリのやつを買わないとダメって事なんだろうな!?』
『はぁ……いったい、向こうは、どーゆう強い課金アプリを使って、セッティングを組んで、ここまで強くなってやってきているんだ……!?
あっ……また3人ぐらい、落ちた……』
『結構向こうは強くて、徒党でも、その中で組んでいるんだろうな!?
勝利後のリザルト画面にも、そいつ等の名前が結構上位に並んでいたしな!?』
とその時だった。
ガチャ
と総務課の人が入ってきたのは、その中には、オオコウチさんがいたのだった。
『あぁ、何やってんだお前達、また、そこでゲームして遊んでいたのか!?』
『あー聞いてくださいよ。また、負けたんですよ、同じ奴等に』
『フンッ、そいつ等の方が、お前よりも、強いって事なんだろうな!? 長くそこにいて』
『でも、こうも何度も負けていたんじゃなぁ……』
『あぁ……』
『別に、負けたと言っても、その中で、お金を盗られる訳じゃないんだろ!?』
『……まぁ、そうだけど』
『だけどなぁ……』
『フゥ……で、何で負けたんだ!?』
『アームパーツで』
『武器か……。諜報系の武器で負けたって訳じゃないんだな!?』
『!』
『何か知っているんですか?』
『あぁ、こっちの方も俺も、少しその事が気になっていて、
そのゲームの中について、少し周りの方で、取り調べて周ってもらって、調べてくれた事があるんだ』
『あっ! さすがですね! もう周りの方で取り調べた後なんですね!?』
『で、このゲームの強くなる攻略法は!?』
『なんて事はない。その現場のマップ集めと諜報系の武器アイテムが必須になってくる事だ!』
『!』
『やっぱか……』
『ただにそこにポーンと置いてあるものでもないしな。
そこの課金アプリでモノを買ってから、この中の誰かが、それを2、3つセッティングすれば、他の奴等を出し抜くことができるだろう。
上位ランカーの誰でもやっている手だ!』
『あのぅ……』
『なんだ!?』
『自分の家の子供が、またここ最近になって、小学校やら高等学校に行き出してきたんで、給与アップできませんか!?』
『何だお前またか!? 前にもそーゆう事を言ってたばかりだろう!?
……仕方がないな。だったら、また、『問題』でも、『お前のところの辞めていったラインの奴等にやり通して』、
幾らかは、『後で徴収』してみるか!?』
『だったら、また、バレないようにやらんといけんな!?』
『あぁ……こんな事やっていただなんて、下のラインの奴等に、バレたら、色々と揉め事の原因になり兼ねんしな!?』
――で、その喫煙室から、男数人が出てきて。
『――うぉっ!? ビックリしたぁ!?』
『今の聞かれたのか!?』
それに対して、ヨーシキワーカは。
『……』
ただそこで、社用のモニターを使って、エアディスプレイ画面に投影されたニュースペーパーを呼んでいたのだった。
(フ~ン……ここの4コマは、こう使うのか……)
『あっ、大丈夫だ、この中で話していたから、さっきの会話は、何も聞こえていなかったみたいだな……!』
『あぁ、それもそうですね? 少し、ここのドアが、『開いてました』から、『気になってた』んですよね……?』
『まぁ、あの様子じゃ、何も聞かれていないだろうし、大丈夫だろう!? ここで、新聞か、参考書でも読んでいる奴だしな!?』
そのまま、その男達数人は、その場を離れていったのだった。
(……これは、下の影の者に報告だな)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――どの会社さんにも言える事だけども、正社員同士の秘密の話を、知っている人が、1人か2人ぐらいは、会社の中にもいるものよ?
そうした秘密を守れるか? って話よ!?」
「……」
「上の人が知らない話でも、下の人は知っている話もある。その逆も然り!」
――とここで、珍しくもシャルロットさんが。
「ほっほぅ、まぁ、確かに、女性の強力な情報網をすり抜いていく、類の話も有り得ますからね」
「女は大だが、そうした取りこぼしを拾えるのも、また男か……」
「両方必要って訳なんだね、会社さんは――」
――そして、サファイアリーさんは、こう語る。
「――そして、その『ロッカーの合鍵』は、箱洗いの作業員の中にも、持っていた人がいたのよ」
「えっ!?」
「それは、何度も、エリュトロンコリフォグラミーさんにやられていて、それを哀れんだ人が、キーシストマ先輩に持たせたものよ。
もちろん、これには、後々、気に入らない事が会ったら、
こっそりと、『ロッカーの合鍵』を開けて、ヨーシキワーカさんも、知らずのうちにやられていた訳よ。
ここで、大事なのは、『合鍵』である事。
そう、気に入らない事が会ったら、無差別に行える危険性ね。
引いては、会社さんの信用失墜に繋がっていく訳よ。
複製だって、簡単にできるしね」


★彡
【ロッカーのカギを使われて、金を抜き取られたエリュトロンコリフォグラミーさん】
――それは、キーシストマ先輩とエリュトロンコリフォグラミーさんが、2人して箱上げをしている時だった。
『――あれ~!? どうしたとやエリュトロンコリフォグラミー!? さっきから元気がないようだけど!?』
『あぁ、ちょっと更衣室の方であってな』
『ああ、財布から、金でも盗まれたか!? さては!?』
『ッ!? あれはお前かキーシストマーーッ!!』
『しっしまった――ッ!!』
『お前、盗んだ金返せ――ッ!!』
しまった感を覚える、キーシストマ先輩に。
その人に対し、執拗な嫌がらせ行為を続けていたエリュトロンコリフォグラミーさん。
それを見たヨーシキワーカは、嘆息し、心の内でこう思うのだった。
(どっちもどっちだな……)


★彡
【ロッカーのカギを使われて、金を抜き取られたヨーシキワーカ】
――それは、更衣室での出来事だった。
『――ムッ』
(減っている……。約3000円(22.7米ドル)ぐらいか……)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――ヨーシキワーカさんも、その被害に受けていてね。
総額3万円(227米ドル)以上の被害よ。
時には、1万円(76米ドル)盗まれていた事があったわ。あれには、さすがにイヤでも気づいたそうよ!?」
とこれには、ミノルさんも。
「少なくとも、被害者さんは、2人か……」
それに対して、サファイアリーさんは。
「いいえ、他の箱洗いの人もなぜか、お金を盗られていたらしくて、ヨーシキワーカさんに話しかけた事が会ったそうよ!
もうその人は、既に辞めているけどね」
とこれには、アヤネさんも。
「という事は、3名以上は、確定ね」
「で、ヨーシキワーカさんの場合は、そのキーシストマ先輩とは、何度も意見の対立があったらしくて、
どうやら、自転車置き場に置いていた自転車のタイヤも、何者かの手によって、パンクさせられていたようなのよね?
キーシストマ先輩からは、その帰り道の途中で、こう言われたそうよ。
『自転車から降りて、歩け――ッ』
――とね」
「犯人は、その人である可能性もある訳ね」
「ええ、少なくとも、5回は、パンクしていたから……人為的な仕業であることには、もう間違いないわ。
まぁ、嫌がらせは確実で、リュックにも、妙な傷があったし。新品の工場内靴も、卸したてなのに、妙な傷もあったしね」
「もう犯人だろそれ!?」
「まぁね」
クスッ
と笑うサファイアリーさんがいたのだった。
「それに、手鉤棒を下からまくり上げるように振り上げた際に、ちょうど、メガネの隙間に入ったらしくて、
危うくも目に接触しそうになったそうよ」
「えっ!?」
「マジか!?」
「マジ!! 故意的な、イタズラらしいわよ。ここまでくれば、とても許されるものでもないのよ!?」
――これには、アンドロメダ王女様も。
「その場合は、どうするシャル!?」
「そうですねぇ……発覚した場合には、クビは確実として、後は、どうするかですねぇ!?
あたしなら、少なくとも、『謹慎期間』を設けますね。反省しろと!』
「それが、妥当な筋じゃろう。
そんな奴が、何食わぬ顔で、どこぞの就職先にいたら、そこでどんな被害を及ぼすかわからん!!
わらわも同じ、クビにして、少なくとも、『謹慎期間』じゃな、反省が必要じゃろう!
その合鍵も、剥奪ものじゃ!! 二次被害が出兼ねないわ!!」
これには、シャルロットさんもLちゃんも。
「仰る通りです、王女様」
「僕も、そう思うよ姫姉」


★彡
【月曜日】
【道連れのエリュトロンコリフォグラミー】
【辻褄合わせの弊害!? 人の手を離れて、捌き切れずに持っていかれる所は、一時的な運送会社の倉庫】
――それは、エリュトロンコリフォグラミーさんの一言から始まるものだった。
『――オイッ! ヨーシキワーカ! ちょっと手伝ってくれないか!?』
『えっ!?』
『少し前に、あの上の方から頼まれ事が、ちょっと降りてきていてな!
何でも少し前ぐらいに、いつも委託を頼んでいる運送会社さんが、ここに卸しきれずに、向こうの方にある一時的に置かせてもらえる、
運送会社の倉庫内に一時的な預かりで置いているらしいんだよ』
『……』
『ちょっとお前も手伝ってくれ! 一人でも人手が欲しいんだよ。
何でも水曜日までの間は、ここに卸すことはできていたみたいなんだが……。
『木曜日』になってからは、『その途中の相中からいっぱいになってきて降ろせなくなって』、向こうの方にあるところまで、わざわざ、持っていたらしいだ!
これが、そのトラックのカギだ』
『……鍵』
(何で、こんなところに持ってきているんだ!?)
『お前にも、準備期間がいるからな! いつもこんな時間帯になったら、上でトイレしてから、ここに降りてきてるだろ!?
俺はもうさっき行ったけど……!
お前が、ここに戻ってくるまでの間に、俺も、あそこの倉庫に置いてあるトラックの所まで行ってきて、
お前を乗せてから、もう一度行く以上、それなりに時間がかかるからな。
……先に行ってきたらどうだ!?』
『……』
(お下品……ないわぁそれぇ……)
――その後、ヨーシキワーカ(俺)は、お手洗いを済ませ、
一度、下に降りてきてから、そのエリュトロンコリフォグラミーさんの運転するトラックに乗って、一時預かりの運送会社の倉庫まで行く事になるのだった。
――これは、その時の会話だが。
『――確か、お前も車の免許を持ってるんだろ!?』
『うん』
『お前は知らないだろうが、法改正がある前にその免許を取っていれば、条件がいくらか緩やかになっていてな。
俺の免許にしてもそうなんだが、準中型の8トン車までの車なら、どんな車でも乗りこなせるまでになっているんだ。
この大きなトラックにしてもそうなんだが、俺の持っている免許までなら、乗りこなせるって訳だ』
『フ~ン……』
『まぁ、今は、こんな作業着だから、『免許なんて携帯していない』が……。
ここから、あそこまで戻って、いちいち着替えてから、ここまで、また来るだなんて、手間でしかないしな……!
まぁ、大丈夫だろう!?
ここからあそこまでの距離間までなら、大した距離の問題じゃないし。
ここまでは、まだ、会社の私有地に辺りから、道路交通法には、何にも接触していないだろうからな!?』
『……』
(えっ……ウソだろ……!?)
ブロロロロロ
とこの時既に、トラックは動いていた。
『お前は、黙ってろよ……!? ここから微妙にあそこまで、会社の私有地じゃないから、国管轄の道路交通法に接触してしまうからな。
見つかったら、どえらいぐらい怒られるだけで済まないんだぞ!?』
『……』
そのまま、トラックは進み、会社の私有地を飛び出して、
道路交通法に当たる、一般道に出るのだった。
左右の道からは、何台もの車が行き交っていた。
『えーと……ヨーシキワーカ……。もしも、警察に見つかったら、その時は、俺が対応に当たるから、
お前は黙って、そこの下でずっと埋まっておけよ?
絶対に、見つかんなよお前……見つかったら、1発で免停だからな俺等……』
『……』
サァアアアアア
とそこには、青ざめたヨーシキワーカがいたのだった。
その心の内では。
(俺まで巻き込むんじゃ――ない!!! すぐに戻れぇえええええ!!!)
と盛大に心の悲鳴を上げていたのだった。


☆彡
――過去から現在に返り、アヤネさんが。
「――そっ……それは、さすがにいけないんじゃないの……!? 何で、その時、作業着のまんまだったのよ……!?」
「ああ、これは非常にマズいな……。
『無免許運転である事を知りながら、同乗した場合、
同乗者には、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるんだぞ!?』
『しかも、今回、この場合は、月見エビバーガーオーロラソース社側にも、刑事罰責任がつき。
運転者が、無免許運転であることを知りながら、その人に車両を提供した場合、
刑事処分として、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
行政処分として少なくとも、欠格機関の2年間の免許取り消しを受ける事になるだろうな……!?』
刑事処分としては、同乗者に対する罰則金よりも、重い罪が課せられるんだぞ!?
それを知っていて、許したのか?」
それに対して、サファイアリーさんは。
「知っていたら、止めてるわよ!!
その時は、お手洗いに行っていて、その事を知らなかったんだからね!!
しかも、『トラックに乗った後』に、『もう動いていて』、その時に声を受けてるんだから、『もう手遅れ』よ!! 『道連れ』もいいところよ!!」
あぁ……
とこれには、一同、嘆く思いだった……。
「なんっつー不運なのよ……その人ぉ……」
――その時、エメラルティさんが弁護人として立つのだった。
「――異議あり!」
「!」
振り返る面々、エメラルティ(彼女)が法に立つ。
「今回のポイントは、そのトラックに乗る前から知っていたか? それとも知らなかったか!?
そう、後になって、それを知ったのであって、しかも動いている渦中に、それを知らされたものだった!」
「……」
そう、ウソはついていない。
「無免許運転、同乗者の責任!
これは幇助罪に該当し、無免許運転と知りながら、その人を手助けすれば、同乗者でも、その幇助罪として罰せられます。
この場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます!
ただし!
無免許運転幇助罪にならないケースバイケースがありまして、
1.運転者の無免許を知らなかった。
2.運転者に自己を運送するよう、要求または依頼していなかった。
3.自動車に同乗しなかった場合。
今回の場合は、この1と2に該当し、罪には問われません。
なぜならば、運転者が無免許である事を知らなかった事につき、落ち度がある場合でも、知らなかった以上は、
無免許運転幇助罪には、該当しないからです。
その為、無免許運転幇助罪には、『不注意による犯罪(過失犯)』を処罰する規定がないからです。
次に、運転者に自己を運送するよう、要求または依頼していなかった。
この場合は、この依頼していなかったを含み、運転者が無免許であると知っていた場合でも、
運転者の方から同情するよう要求してきて、断れ切れずに同乗してしまったケースでは、
無免許運転幇助罪には、なりません!!
また、今回の場合は、仕事関係であって、その月見エビバーガーオーロラソース社からの依頼と見るべきです。
それを請け負った人がいて、そう、エリュトロンコリフォグラミーさんの過失運転とみなすべきでしょう!
……いかがですかな? 皆さん?
それでも、ヨーシキワーカ氏を、罪に問われますか?」
「問わないって……。明らかに、そのエリュトロンコリフォグラミーさんの過失運転なんでしょう?」
「では、決定ですね」
「では無罪で」
当たり前の話だが、ヨーシキワーカ氏は、最初から無罪である。
同乗者の責任として問われるのは、乗る前から知っていた状態であって、後になって気づいたのでは、その無免許運転幇助罪には問われないのだ。
仮に、この規定が法から撤廃されれば、世界中すべての家族間全員が、完全にアウトである。
その為の法の規定であるのだ。


★彡
【月曜日】
【道連れのエリュトロンコリフォグラミー】
【(続)辻褄合わせの弊害!? 人の手を離れて、捌き切れずに持っていかれる所は、一時的な運送会社の倉庫】
――それは、一時預かりの運送会社の倉庫だった。
そこには、いっぱいの箱があったんだ。
『――ゲッ!?』
もう、驚きしかない。
『これ、『全部』、『木曜日』の奴等のやり残しな!』
それは、エリュトロンコリフォグラミー自身も含まれていた。
それ、お前のイタズラのせいだろッ。
それも、ヨーシキワーカ(俺)が請け負う訳だ。仕事だから。
『……えーと……』
『まぁ、俺も手伝ってやるから、お前1人でやれだなんて言わん。俺とお前なら、この量ぐらいなら、20分から40分ぐらいあれば、充分だろう!?』
『……』
その日、ヨーシキワーカ(俺)は、エリュトロンコリフォグラミーさんと2人で、その箱上げをして、トラックの荷台に詰め込んでいくのだった。


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――とこのように、木曜日に働いていた人達では、その作業量に間に合わず、
結果的に、そのシワ寄せが、他の日に回ってきていた訳よ!
運送会社のトラック運転手さんが、卸す先は、大まかにいって、3つぐらいあってね。
1つは、いつもの箱洗い、またはその周辺。
1つは、一般道から会社の私有地に入り、その坂道を上がっていった先にある、屋外貯水槽付近。
1つは、さっき言った、一時的に箱を預かってくれる場所、運送会社さんの倉庫なのよ」
とこれには、スバル君、アユミちゃん、ミノルさん、アヤネさんが。
「読めてきたぞ……! だいたい!」
「うん!」
「これは、当たりだろうな……」
「ええ、そうねあなた!」
そして、アンドロメダ王女様、Lちゃん、シャルロットさんが。
「原因は、水曜日と木曜日に当たっていた訳なんじゃな」
「うん」
「失礼ですが、ヨーシキワーカ氏の休みの日は!?」
それに対して、サファイアリーさんは。
「その水曜日と木曜日の2日間が、あの人がお休みの日だったのよ!」
「……」
やはりか、という思いで頷き得るシャルロットさん。
その人は、手流しで、サファイアリーさんに、こう問いかけるのだった。
「では、その水曜日と木曜日の2日間に、出社される方は!?」
「それは……、ヨーシキワーカさんの1個上の先輩に当たる方で、キーシストマ先輩とエリュトロンコリフォグラミーさんの2人よ!」
原因は、こいつ等である。


★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』Tsukimi Shrimp Burger Aorora Sauce Company(ツキミ シュリンプ バーガー オーロラ ソース カンパニー)』】
【商品課】
――それは、ヨーシキワーカが、商品化の中でも、比較的若い子から言われた言葉だった。
その子の名前を思い出そうと思っても、数年経過しているので、どうにも思い出せない。
それは、ほとんどの従業員に言える事だった。
確か、箱洗いの行程が進まず、外に箱が溢れかえっていた点だった。
後は、箱を積んだトラックの出庫・出荷システムだったな。
『――ヨーシキワーカさん。ちょっといいですかー?』
『?』
『今、そっちの箱洗いの横側の方に、箱が溢れかえっていますよね?
向こうの方の上の人達からも、どうにも作業工程が進まないから、先に片づけてくれませんか!?』
『……わかった』
確かに、箱洗いの横側に陳列してある箱は、こう規定範囲を超過して、はみ出していたんだ。
確かに、これでは、商品化の動きも滞って当たり前だ。
だが、箱洗いの中の人達は、少人数なれど良くやってくれている。
私がやるしかないか。
『ハァ……。ホントこの人は、言葉数がこうも少ないもんだなぁ……』
『?』
『……いいですか!? 何であなた達箱洗いの人間は、あそこにいて、こんな簡単な事すらですらできないんですか!?』
『……』
(何ィ!?)
こいつ、喧嘩売ってるのか。
『まだ、自分たちの方が、商品課(ここ)にいて、こんなにも役立っているぐらいなんですよ!!
そっちはてんでできてなくて、進んでないんじゃないですか!?
まだ自分たちの方が、ここの会社に雇われている身で、こんなにも役立っているぐらいですよ!?』
『……』
『……』
両者の物言わぬ睨み合いが続き、その年若い子は、ズイッとトラックの出庫・出荷管理表を見せるのだった。
『いいですか!? まだ自分たちはここにいて』
パンパン
とその紙を叩いて、自己主張す商品課の人。
『あそこにあるようなパソコンを使って、その毎日のデータを照らし合わせながら、
ここに入ってくるトラックの出庫・出荷の管理システムを預かっているぐらいなんですよ!
ヨーシキワーカさんのところも、自分たちが預かっているようなもので、多くしたり減らしたりして、ここからその調整ができているんですよ!!
前にも自分、これ、あなたに言いましたよね!?
何でそんな簡単な事すら、あそこに長年勤めているのに、ちっともできてないんですかあんたはッ!!
全然役立っていないじゃないですか!! もうこの会社を、いつだって辞めたっていいんですよ!! どこへなりとも!!
まだ、有能な人を雇いなおした方が早いぐらいですからね!!』
『ッ』
事実だった。
だが、箱洗いにはパソコンはなく、進んだ機材は何もない。
それがあるのは、ここのような商品課や製造事務所、上の総務課などだ。
残念ながら、口惜しく私の負けだった……。
環境がこうも違い過ぎる。
『フンッ、あなた、ここでいったい何年ぐらい働いておられるんですか!?』
『……』
『3年や5年というレベルじゃないですよね!?
まだ、遅れてこの会社に後から入ってきた自分の方が、こんなにも役立っているぐらいですよ!!
辞めたっていいんじゃないですか!! そこにいても何(なーん)も必要ないんですし!!』
『ッ』
(パソコンの1つぐらい置いていれば、電卓の1つぐらい置いていれば、帳簿などのノートがあれば、それができたんだ。
なのに頭1つでやれと……馬鹿にしやがって……ッ!!
……だが、言っている事は全部正しい……!! あんたは脳なしじゃないんですか、ああ、正しいよ!
そんな機材も何もなく、そうした学問もここで何も学んでいない!
能なしと言われても、何も反論できない!!
君は、全部正しいよ。だから、何も悪くない……)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――前に言ったように、商品課の人が、トラックの運送を預かっているからね。
水曜日と木曜日の遅れで、屋外の箱が溢れ出して、出庫・出荷を担うところで、邪魔になっていた訳よ。
で、ちょっと相手は、懲らしめてやろうと思い、
運送トラックの入ってくる時間帯を、ズラしていった訳よ。
当然、そんな事になれば、時間が前倒しになっていき、気づいた頃には、簡単には、元に戻せなくなっている訳よ」
「……」
「当然、日中は、いつも晴れている訳じゃなくて、雨の日だって、有り得るから――」


★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』Tsukimi Shrimp Burger Aorora Sauce Company(ツキミ シュリンプ バーガー オーロラ ソース カンパニー)』】
【品質管理の女】
【箱洗いの人間の中には、昼3時から1人で従事している人もいる】
――それは、冬の雨の日だった。
私は、1人で箱洗いを従事していて、雨合羽を着つつ、箱を上げて機械の中に流し、それを1人で運搬していたんだ。
場所は確か、焼成室(オーブン)等辺だったとおもう。
そこは衛生管理区分だったんだ。
「ちょっとヨーシキワーカさん!! あなた汚いじゃないですか!!』
『……』
『ホラッそこ!!』
ビシッ
と濡れたフロアを指差す品質管理の女性。
その時、ヨーシキワーカは、雨合羽(レインコート)姿だった。
『あんたがここを歩くたびに、ここやあそこ等辺の廊下がいつもビショビショで汚れちゃうんですよ!! しかもここは衛星管理区分なんですよ!!
何だって、そんな雨合羽着てるんですか!! 今すぐに脱いでください!!』
『いや、外は今、雨が降っていて……』
(しかも、冬で寒いし、菓子パンラインからは、要らないって)
『じゃあ、それを脱いで、雨に濡れながら出ればいいじゃないですか!! 簡単な事じゃないですか!!』
(えっ……風邪ひくぞ……。しかも冬だぞ……今!? しかも、俺、1人なんだし……)
『別にあんた1人ぐらい抜けたって、ウチにはなーんも支障もないんですしね。……フフッ』
ブチッ
何かが切れた。
(フ~ン……。そう言えば、お前等品質管理の女どもは、箱洗いに着て、冬の寒い中懸命に働いているのに、雨合羽を着込むなと注意していたな!?
何で人が辞めていったのか、ちっとも考えた事がないんだろ!?
俺達は、物言わぬロボットじゃないんだぞ!?
『……』
『……』
(……俺達からは、特に何もする必要はない。ただいつも通りに、賢明に働いてさえいれば、それでいいんだ。
その仕事の従事ぶりは、他の人達が認めてくれる。
た・だ・の少人数の従業員不足なんだからな!? お前、だってそれはわかるだろ!?
非正規雇用のシフト表を見ればわかるが、俺は、昼3時から、ほとんど1人だったんぜ!? 朝2人、昼1人、あんたでもそれはわかってるよな!?
どーゆう事になるのかがな!?)


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――実は、こーゆう事は、何度も起こっていてね。
この品質管理の人と商品課の人は、歩いてたらすぐ近くの距離にいて、意見交換できていたわけよ。
で、ちょっとした嫌がらせで、懲らしめてやろうと思い、
配送トラックの時間帯を、またズラしていって、前倒しにしていった訳よ。
当然こんな事が、度重なっていけば、どうなると思う!?
負のスパイラルになっていくと思わない!?」
とこれには、ミノルさんも、アヤネさんも。
「あっ……そーゆう事……」
「しかも、雨合羽(レインコート)の話題も出たな。ここで、絡んできていたわけか……」
「負の連鎖がさらなる負の連鎖を呼んでいく事になるからね。当然、時間の前倒しが頻繁に起こっていた訳よ」
「……」
負のスパイラルが、さらなる負の連鎖を呼んでいく事がある。
それが、配送トラックの時間帯の前倒しだった。
「これが、人間関係の悪化も意味していて、離職者が相次いでいった訳よ」
「人間関係の悪化と……」
「離職者は、ここに絡んでいた訳か……」
サファイアリーさんは、こうも語る。
「ここまで、挙がった人物は、
1人は、商品課のガタイのいいおじさん!
1人は、エリュトロンコリフォグラミーさん!
1人は、キーシストマ先輩!
1人は、商品課の比較的若い子!
そして、商品課の女の人ね!
そして、よく忘れがちになるけど、キーシストマ先輩は夕方5時上りだから、各ラインの人からの申し出もあって、これも配送トラックの前倒しも担っていたのよ!」
とこれには、ミノルさんも。
「完全に、1人のせいじゃなくて、『何らかの動きが複合的に作用』し合って、箱洗いの売り上げ利益が落ち込んでいった訳か……」
「それも、『時間の経過』による『複合的な要因』だったわけね……」
うんうん
と頷き得るミノルさんにアヤネさん。
とこれには、僕も、アユミちゃんも。
「時間の経過と……」
「複合的な要因かぁ……」
サファイアリーさんは、こうも語る。
「この時、主要メンバーは、キーシストマ先輩、ヨーシキワーカさん、エリュトロンコリフォグラミーさんの3人だったそうよ。
1人、余る事になるから、入ってきては、辞めてを繰り返していき、
3人目となるイプシロスイティヤさんが入ってきて、
その数年後に、ついに耐えかねたキーシストマ先輩が、そのエリュトロンコリフォグラミーさんを追い出したわけよ!
その箱洗いからね!
それは、総務課の人達に、それは何度も、直談判しに行ってね」
「ようやく追い出すことができた訳か……」


★彡
――それは、キーシストマ先輩の怒りの声だった。
『もうあんな奴、知った事か!!
俺は、何度も、あのエリュトロンコリフォグラミーのやつから散々嫌がらせを受けていたんだからな!?
それは、お前も知っているだろ!?』
『……』
『だから、総務課の方に何度も言って、あいつをここから追い出すように言ったんだ!! 清々したぜ!! フンッ!!』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――ただし、実際には、元正社員さんだったから、キーシストマさんの意見が通ったかと思えば、そうではなく、ただの定年退職だったそうよ――」
「そんな所だと思った……」
「まぁ、オチも……よろしいようで……」


TO BE CONTIUD……

しおり