245 マナトの意見
メロ共和国のキャラバン事情について、リートに意見を求められたマナトは、
「そうですね……正直、なんとも言えないんですけど」
と、前置きした上で、言った。
「良い、悪いは別にして、キャラバンの人数が増えることについては、まあ、結構なことなのかなとは思いますけど」
「そっすね」
「ただ、間違いなく、キャラバンの人数が増えることによって、長老とリートさんが危惧している、そのキャラバン達の一部が死の商人化する可能性は、いやがおうにも増えるとは思います」
マナトも長老とリートから、死の商人、キーフォキャラバンについて聞いていた。
「死の商人化って……」
テーブルの上の書類を整理する手を止め、ステラが言った。
「いま、そんな状況になってるの?メロのキャラバンって」
「あぁ、いや。もしもの話ではありますけどね」
「あっ、そうなの」
「僕がアクス王国の交易時に協力してもらった、メロのキャラバンはみんな、とてもいい人たちでしたし」
「……そっすよね~」
リートはイスの上にあぐらをかいて、ガタン、ゴトンと揺れ始めた。リートの癖だ。
「どうします?長老」
「う~む……」
「……ちなみになんですけど」
マナトは気になったことがあり、長老に聞いた。
「メロのキャラバン、そんなにいきなり増えて、運営は大丈夫なんですかね?」
「うむ、それなら、セラとジェラードの手紙に書いておる」
長老は手紙を読みつつ、マナトに言った。
「メロのキャラバンは、複数の商隊で組織される、サロンなるものがあるそうじゃ。そのサロン同士で、交易の成果を競い合ったりしているそうで、いい意味での競争社会となっとるらしいぞ」
「なるほど……」
……競争社会か。
長老の話を聞き、マナトはうなずきつつも、純粋に思ったことを口にした。
「もちろん、それがプラスに働くことも大いにあるでしょうが……それこそ、死の商人化を発生させてしまう因となってしまうと、思えなくもないですね」
「そうっすか?むしろ、ちょっと、面白そうって、僕は思ったくらいっすけど」
リートが言う。
「はい……このあたり、とても難しいのですが、そのサロンでの成果に執着するあまり、武器の交易に手をのばす者達が、現れないかといえば、そうでもないかと思いまして」
「う~む、なるほど」
「……ちなみに僕は、前の世界にいた時、ちょっと、法を犯していたこと、あるんです」
マナトは自重気味に言った。
「それも、成果のためでした。どんな方法を使ってでも、法を犯してでも利益を得なければならないという、それにもう、取り憑かれていたんです」
「……ち、ちなみに、どんなことをしたの?」
ステラが、恐る恐るといった様子で、マナトに聞いてきた。
「えっとですね……電柱という柱に、不動産の広告看板を勝手に取り付けるというものですね」
「……えっと、それダメなの?」
「あはは……こっちの世界では、ぜんぜん、ピンと来ないですよね」