244 セラとジェラードの手紙
「そういや、マナト」
「んっ?」
「長老が、あとで家に来いって」
※ ※ ※
マナトはラクトとともに自宅を出た。
「じゃ~な!」
ラクトは、中央広場の高台で見張りをしている護衛担当をひやかしてくるわと言い、あっという間に走り去っていった。相変わらず、身体能力が高すぎる。
マナトは歩いて、長老の家へ。
燦々と、陽の光が降り注ぐ。
暑いは暑いのだが、とても乾燥しているためか、暑苦しいという訳ではない。
交易の時も、マントを服の上から羽織るが、そこまで苦にならないのは、乾燥地帯ならではだろう。
程なくして、マナトは長老の家に到着した。
――コン、コン。
「あぁ、マナトくん」
赤い瞳、黒地に赤メッシュの髪の毛、左耳にエメラルドグリーンのピアスをしたリートが出迎えた。
「どうも、お邪魔します」
「ちょうど、ルフの書簡をステラちゃんが持ってきてくれたっす」
リートに促され居間へと移動すると、そこには、テーブルの上に置かれたたくさんの紙や木片の書簡が。
そして、イスに座ってそれらの書簡を整理しているステラと、紙の書簡を広げて目を通している長老の姿があった。
「長老、ステラさん、お疲れさまです」
「おう、マナトか」
「あら、マナトくん、いらっしゃい」
すると長老は、手に持っていた紙をひらひらさせた。
「長老、それは?」
「メロの国に調査に向かわせた、セラとジェラードからの手紙じゃ」
「おぉ、そうなんですね」
リートとマナトは空いているイスに座った。
「どうだったっすか?長老。セラとジェラードからは」
「うむ」
長老は、再び手紙に目を落とした。
「まず、書いてあったのが、どうやら、ワイルドグリフィンが突然、街中に出現したらしい」
「あら、大変」
木片書簡を丸めていたステラが、顔を上げた。
「うむ。じゃが、メロのキャラバン達の活躍によって、撃退に成功したようじゃ」
「おぉ、やるっすねぇ」
テーブルの上の書簡を適当に取って見ていたリートが言った。
「一人、ものすごく強い女子がおったらしい。その者が拳ひとつで一匹もっていったそうじゃ」
……拳ひとつ、まさか?
マナトは思ったが、口を挟むことはせず、黙っていた。
「それで、一番気になっていた、メロの国内の情勢じゃが……」
長老はその部分を読み返した後、言った。
「至極、安定していて、困窮状態、飢餓状態とはほど遠い状況じゃな。朝帰りの国門護衛の者が、市場で昼から酒を飲んでいるくらい、平和じゃな」
「そうですか」
長老の言葉を聞き、なんとも、平和な光景が、マナトの頭に浮かんだ。
「キャラバンのほうはどうだったんすか?」
「キャラバンについては、いま、メロの国では、人気職業らしい。どうやら公爵の中に、キャラバンの待遇を優遇する政策を進めている人物がおるらしい」
「ほう」
「それにより、若い人材が、続々と増えているようじゃな」
「なるほどっすねぇ」
するとリートは、マナトを見た。
「いまの、どう思うっすか?マナトくん」