46.何かが来る
事件の結果、文華自身の首を絞めることになった。
責任を問われて、地球からは追放。
ルルディに逮捕されて、その途中に脱獄したの。
その足取りがようやくつかめた。
だけど、たとえ捕まえたとしても、「ざまあ見ろ」みたいな爽快感なんかないと思うの。
きっと恨みだけが募るよ。
ずっと募り続ける。
で、しのぶは。
『ボルケーナ先輩からの連絡。
お姉ちゃんたちの上空で、次元の歪みがあるって。
中から地球にはない異能力がもれてるって』
おやおや、いつものしのぶがもどってきたようだ。
『あった! これか。
ずいぶん小さいね』
ダークギャラクシーの検査結果が表示された。
見ていたみつきに、しのぶが答える。
『ブロッサムのセンサーを集中させて、ようやく見えたからね』
双子の声は、聞き分けにくい。
先輩は事件が起こると、太刀山のてっぺんへ飛ぶ。
そこが能登から海を越えて飛んでいけるし。
標高も百万山より高い。
観測の定位置なんだ。
そこで、しっぽをピーンとのばす。
先輩のしっぽは、レーダーになるの。
山の影でも回り込んできた反応で感知できる。
「文華?
ええ。知ってます。
そして、その人は裏切り者です」
そう先輩はそう言ったその日から、太刀山に飛んだの。
怪獣はその気になれば何年でも飲まず食わずでいられる。
だけど雨風にさらされる姿を考えると。
やっぱり心が苦しい。
『ボルケーナ先輩って、そんなに文華とやらを恨んでるんですか?』
朱墨ちゃん、しっくりこないみたい。
「先輩は直接あったことはないけど、その先輩が受けた被害は大きかったらしいよ」
安菜が言うなら、そうなんだろう。
『それにしてもこの、ポルタ?
ぐるぐる回ってるね』
『小さなポルタを多数だして、相互反応させることで大きなポルタにする方法はあります。
しかしそれなら、円形なり直線なりきれいに並べるはずですが』
朱墨ちゃんの議論に、アーリンくんが答えていく。
『バラバラに現れて、あれ?
流れていく?』
『あの動きで、何らかの紋章を書くのかもしれません。
待ってください。
似た紋章がないか、調べます』
良いコンビじゃない。
紋章か。
異能力を働かせるための、マーク。
1つの文字でもそれは働く。
現れた5つのポルタは、あれ?
バラバラな動きはそのままに、広がっていく。
5機のダークギャラクシーもそれぞれ追う。
それらの形は文字には見えない。
300、400、500、メートル。
私たちの上からはいなくなった。
でも、ホッとすることなんかできない。
離れる速度はまちまちだ。
1キロメートル以上離れるものもあった。
『ポルタが拡大しているのは確かです。
内側からの異能力も増大中。
何かが出てくるのは確実です!』
アーリンくんの断言に、自分の中て混乱が広がっていく。
『何これ。
キロ単位で離れていくよ!?』
慌てるみつき。
『・・・・・・重力の過剰反応かもしれません』
アーリンくんが説明してくれる。
『異能力者を多数そろえた状態でポルタを開くと、物理法則が微妙な違いがある場合、重力に反応して、あのようにポルタがずれることがあるのです』
いつも部活動で送ってくれるテレポーターたちは・・・・・・。
あれは同じ世界だね。
状況をはっきり言ってくれたお陰で、少し頭が冷えた。
「アーリンくん。今のポルタが動いていく現象について、テキストにして全局へ送って」
『あ、あの。こちらのコンピュータには、まだなれてなくて・・・・・・』
『私がやります』
朱墨ちゃんが変わった。
『しゃべった言葉を文章にする方法があるんだよ』
そっちは大丈夫そうだね。
あ、あれ?
ポルタが1つもどってきた!?