第2話 全日制との関わり
「もう嫌、経営」
と吐きながら、進学講座補習塾の友人、お夏とあず嬢に愚痴を漏らす私。 「恋のライバル少なくて済むやん」
とお夏は笑った。あず嬢もうんうんと頷く。 「私は経営学科に彼氏を作りに入るわけじゃないんだよっ。女友達が欲しいんだよっ」
「じゃあ男女比は?」
とあず嬢が聞いてくれたので、男女100対3と答えると、2人とも度肝を抜いたような表情を浮かべた。
「これは女子の仲が深まるんじゃない?」
とお夏が言ってくれたので、素直に信じることにした。こんな2人が私は大好きだ。
数ヶ月たった夏のある日。
「夏に双川産業高校全日制と、双川産業大学の単位を修得できる4日間のイベントがあるが、参加するか?」
と野口が提案してくれたので、行くことにした。場所も大学で遠くはない。
そして8月。 「これは全日制を知るチャンスだなぁ」 とワクワクしながら大学行きのバスに乗り込んだ。全日制の子は、当たり前だけどみんな制服を来ている。私服の私は通信制だってことがバレバレ。
「うわぁ、通信制の女だよ」
と座席に座った制服を着た男たちが眉をひそめる。だけど一般人になりたかった私はそれにも動じず、私は通信制で世の中のことを知らないから全日制の人達のこと、いっぱい知りたいと思いながら笑顔を向ける。 私のこの対応が想定外だったのか、
「いい子じゃないか……」
と呟く全日制男子と私を載せながら、バスは大学へと向かった。 大学へ着くなり、とても可愛くて気の強そうな制服を着た女子2人と目が合った。彼女たちの表情が曇ったので、全日制の男子にやったように笑顔を向ける。しかし、
「なにあの通信制の子……」
とそっぽを向かれてしまったので高大連携で友だちを作るのは諦めた。 1日目の1時間目はオリエンテーションということで4日間の全体の流れを教員が伝える。そしてその後の2時間目では、大学の取り組みや地元企業について学んだ。 2時間目終了後には初めてレポートを書いた。 さぁ〜て、感想文で失敗をしてきた私の腕の見せどころだ!小学校時代に感想を短く書いてしまい点が低くなったので、行はすべて埋めていく。みんなが5分で終わるところを私の場合完成には30分かかった。 昼間は他校の通信制男子たちの人間観察をしていた。スイッチを持ちながら男子たちは集まってゲームをしている。 チャラそうだなぁと思いながら1人弁当を食べつつ残りの時間を潰すと、レポートが返された。
「まん……てん!?」
そう、返されたレポートは10点中満点だったのだ! やったぁ、前の自分を超えたぞ! と私は心の中で喜んだ。
1日目の授業が終わり帰りのバスの中で座っていると、
「なぁ、通信制の女子」
と1人全日制の男の子が呼びかけたので振り向くと、
「レポート、何点だった?」
と聞いてきた。これはマウントを取られるパターンだなと思ったので素直に満点のプリントを見せる。
「えっ、通信制なのに勉強できるの!?すっごいね。俺は9点だったよ。負けちゃった」
と彼は笑った。彼もなかなか個性的で、みんな全日制の男の子はネクタイをつけてないのに彼だけはネクタイをしっかり閉めていたのだ。 全日制の男の子は、かわいいな。何より、全日制の人たちと関わるのは違った世界を知れて楽しい。 1日授業を受けてみて、大学へのモチベーションはかなり向上したのだった。