220 街中での攻防戦①
「護衛隊!我々キャラバンも協力する!」
「すまない!助かる!」
キャラバンサロンが駆けつけたことで、護衛隊とでワイルドグリフィンを挟み込む形になった。
「ええと、いち、に、……10体くらい?」
「やれやれ、結構、多いね。一体倒すだけでも骨が折れるのに」
ライラの言葉を聞いたフェンが、ため息をついた。
ワイルドグリフィンはそれぞれ、散らばった肉やら果物を、口に運んでいる。
「まず、一体!」
先頭にいたフェンは振り向くと、フィオナ、ライラ、オルハンに言った。
「久しぶりに、4人で戦おう!かつて同じ隊だった時のように!」
3人ともうなずく。
そして、それぞれ、武器を持った。
フェンとライラは両手に双剣を構え、フィオナはレイピアをクルクル回している。
「……オルハン?」
「ちょっ、アンタ、シルバーアックスはどうしたのよ?」
武器を持たず、腕を組んでいるだけのオルハンに、フェンとライラが問いかけた。
シルバーアックスは、かつて4人が同じ商隊にいた頃、オルハンがよく使用していた武器だった。
「持ってねえよ。お前らと一緒にやってた時と、俺は違うんだ。水の力で何とかするぜ」
オルハンは、余裕の表情だった。
「ウテナ」
フィオナが傍らにいたウテナに言った。
「何体、いける?」
「3体は、大丈夫ですよ」
「そっ、じゃ、お願い」
「はい」
「いや、ちょっと待て!?」
フィオナとウテナの会話を聞いて、オルハンが驚いて大声で言った。
「ウテナ一人で3体相手とか、さすがに無理だろ!」
「大丈夫ですよ、オルハン先輩」
――ヴゥァ~。
ワイルドグリフィンが、喉の奥からうなり声を上げ始めた。
ゆっくりと歩き始め、護衛隊とキャラバン達へと目を向けて、攻撃の機会を伺っている。
「ほら、アンタが大声出したから、目をつけられちゃったじゃない」
ライラがオルハンに言った。
――ウァガァアッ!!
ワイルドグリフィンが翼を広げ跳躍。フェン達に飛びかかってきた。
「横に回避だ!!」
フェンが叫び、皆それぞれ横に回避。ワイルドグリフィンが横を通り抜ける。
フェンが姿勢を低くしながら素早く回り込む。
「グリフィンは直線的な攻撃しかできない!攻撃をかわして、そのスキを突くんだ!」
「分かってるわ!」
フェンに呼応するように、ライラもフェンと逆の方向から仕掛けた。
「くらえっ!」
――バサッ!!
「むっ!」
フェンとライラの双剣が触れる前にワイルドグリフィンは羽ばたき、空へ。
「クソッ!少し遅れたか!」
「また来るわ!」
ワイルドグリフィンは上空で大きく旋回。地上へと戻ってくる。
「フェン!狙われてるわよ!」
フィオナが叫ぶ。
「くっ!」
――ウァガァアア!!
すれすれのところで、フェンは回避。
――ガッシャァアアア!!!
家具やさまざまな道具を撒き散らしながら、ワイルドグリフィンは地上に再び降り立つとともに、身体をグイィィッと反転。
「切り返してる!次の攻撃、もう来るわよ!フェン!」
――ウァガァアア!!
「させるか!!」
オルハンがフェンの前に立ちはだかった。
――シュルル……。
オルハンを水流が包む。その水が手に集まると、オルハンは手を強く握りしめた。
――ジジジジ……!!
手の中で、水が唸るような音をあげ始めた。
オルハンが親指と人差し指で丸をつくる。そこから、手の中で圧縮された水が、勢いよく出てきた。
――ギンッ!!
その音はまるで、刃物と刃物が交わる時に鳴る音だった。