221 街中での攻防戦②/ウォーターアックス
ワイルドグリフィンの鉤爪を、オルハンの手から出た水が受け止めていた。
「ウォーターアックスだおら!!」
オルハンが水を振り下ろし、鉤爪を弾く。
ワイルドグリフィンを後退させたその勢いのまま、オルハンの手から出た水が地面に触れた。
――ズァアアッ!!!
「地面が!」
「切り裂かれた……!」
ライラとフィオナが言った通り、その地面には、深い亀裂が入っていた。
オルハンによって極限まで水圧を上げられた水、ウォーターアックスは、まるで研ぎ澄まされた刃物のように、触れたものを分断する鋭さを持っていた。
「オルハンがマナを取り込んだのって、結構、最近よね?」
戦いを見ていたフィオナが、ライラへ聞いた。
「ええ、最近よ、隊長になってから。でも、まさか、こんな短期間で、あんなこなれたことができるようになってるなんてね」
フェンが体制を立て直す。
「オルハン、助かった!すごいじゃないか!」
「いや、鉤爪ごと切り落としてやるつもりだったんだが、やっぱ硬いな。あと、やっぱ正面からだとちょっと分が悪い」
オルハンは冷静に言った。
ふと、周りからも声があがっているのが聞こえてきた。
「おら~!!」
「かわせ!!」
「こんにゃろ~!!」
フェン達と少し離れたところで、護衛隊も、他のキャラバン達も、ワイルドグリフィンとの戦いを繰り広げていた。
「んっ?」
と、オルハンは中央を見た。
護衛隊が、複数のワイルドグリフィンからの攻撃を受けている。
旗色が悪い。
「チッ!アイツら!どうしたんだ!?」
「かなり押されてるね……!」
フェンが言った。
「そうか!彼らは、基本的には門という守られた場所から展開する作戦を得意としている。白兵戦は、慣れていないのか!」
「いやそれって、弱いってことじゃねえか!」
「オルハン!ハッキリ言い過ぎだぞ!」
護衛隊は、人数はたくさんいるが、複数のワイルドグリフィンが入れ替わり立ち代わり攻撃しては空へ飛び、また攻撃してという、波状攻撃を仕掛けてどんどん押していた。
陣形は崩れ、分断された護衛と馬にグリフィンの鉤爪が襲いかかる。
「ヤバい!!」
その時だった。
――ゴツン!
何者かが、攻撃を仕掛けようとしたワイルドグリフィンの後頭部に、リンゴサイズの石をぶつけた。
ウテナだった。
――ウゥガゥ~。
そこそこ、痛かったのだろう。石をぶつけられたグリフィンは、明らかに敵意の矛先を、ウテナへと向けていた。
すると、もう一体、その目がウテナを捉えていた。
ウテナに気を取られている間に、護衛隊は体制を立て直す。
「……」
ウテナの周りに、2体のワイルドグリフィンが取り囲む。ウテナを中心にしてある程度の距離を取って、ゆっくりと円を描きながら歩いている。
「……安心していいからね、ルナ」
誰に言うという訳でもなく、ウテナは言った。
「おい!ウテナが囲まれてるぞ!」
「ウテナなら、大丈夫よ!」
フィオナが言った。
「いやさすがにマズいだろ!」
「それより!目の前の一体でしょ、オルハン!」
「チッ!」
4人の前には、先まで交戦したワイルドグリフィンが。
オルハンが叫ぶ。
「よし!俺たちが一番先に倒すぞ!!」
「相変わらずね、オルハン」
「でも、まあ」
「一番最初に倒して、他の援護に回るわよ!」
ライラ、フェン、フィオナもオルハンの声に続いた。