187 盗賊VSラクト、マナト/岩石の村へ
いきなり奇襲を仕掛けてきた男2人に、盗賊は皆、一気に殺気だった。
部下達もダガーや棍棒を持ち、男らを迎え撃つ。
「クソッ!なんでこの場所がバレたんだ!?」
男の一人が走りながらダガーを構える。
「慌てるな!たった2人だ!」
盗賊の頭領は大声を出した。
「こうなったら仕方ねえ!やっちまえ!!」
だが、
――キンッ!キンッ!
男の一人がすさまじい勢いで、ダガーを振り回す。部下2人の武器があっけなく飛んだ。
――ドッ!ガッ!
「うがぁ……!」
部下2人が蹴り飛ばされ、ほら穴の壁に叩きつけられた。
「てめぇ~!!」
「このヤロッ!!」
四方から、部下達が男に襲いかかる。
――ザッ!
が、次の瞬間、もう一人の男が立ちはだかった。
――ブヨヨ~ン。
「ぬぅ!?」
男2人の周りに水の膜が生成され、それが部下の攻撃を防いだ。
割り込んできた男の身体をまとうように、水流が流れている。
――シュルルル……。
「な、なんなんだ、お前ら……!!」
「なんなんだって?」
「!?」
いつの間にかダガーを持った男が頭領の背後に回って、もう、足を上げていた。
「ただのキャラバンだよ」
――ドッ!
※ ※ ※
巨大な岩石によって日陰になっているところで、ケントとミトとラクダ達は、休憩をとっていた。
「うぃ~っす!」
「おっ、帰ってきたか」
ラクトとマナトが戻ってきた。
「2人とも、お疲れさま!」
「やっぱり思った通りだった。いたぜ、盗賊」
「まさか、盗賊自身がつけられていたとは、思いもよらなかったんだろうね」
「ああ。かなり油断している感じだったな」
「それにしても、ホントによく分かったよね、ラクト」
マナトが関心して、ラクトに言った。
「ああ。実はな……」
すると、ラクトはラクダ達を見た。
「ラクダ達を見て、なんとなく分かったんだよ」
「へぇ!」
「巨大な岩石と岩石の間を通り抜けていた時から、どこか、ラクダ達が緊張している雰囲気になってるかなって思ったんだ」
「えっ、ぜんぜん分からなかったけど」
マナトが言うと、そりゃそうだと、ラクトはうなずいた。
「俺の場合は、生まれたときから、家業でラクダと接しているからな。体調がすぐれなかったり、緊張しているときとか、ちょっとした変化に気づくんだよ」
「なるほどね~」
「よし、んじゃ行くか」
ケントが立ち上がった。
再び、商隊は先へ進む。
足下の、地面の景観は次第に、砂漠から低い草の生えた草原へ、砂色から、草色の世界へと、姿を変えていった。
また、目線を上げれば、巨大な岩石がそこらじゅうに散財していた。
ただ、そちらは茶色い岩石は少なくなり、代わりに、白や灰色の岩石が多くなってきていた。
そして、商隊の目の前に、白と灰色とベージュが混ざった、光沢のある石でできた高い壁が、姿を現した。
「着いたぜ」
ケントが足を止めた。
「……あっ、これは?」
マナトは壁の石に見覚えがあった。
「大理石だ」
ケント商隊は、岩石の村に到着した。