第51話「ポイズンとフレイム」
「うぉら!!」
先に仕掛けたのは焔火であった。焔火は両手から火炎放射器の如く炎を噴射。その炎は翡翠に勢いよく向かっていった。それに対して翡翠は、右手から毒液を撃ちだし、炎と相殺させた。
「チィ!!防がれたか!!」
「その程度?……甘いわねぇ……そんなんじゃ私を捕らえられないわよ?」
翡翠は、そう言った後に両手を焔火の方に構えて、各指先から毒の弾丸を連射した。
「はん!!こんなもん!!"烈火"!!」
焔火は両手に炎を纏わせ、向かってくる弾丸全てにラッシュを放ち、消滅させた。
「フフッ……やるじゃない」
不敵な笑みを浮かべながら、翡翠は続けて毒の弾丸を連射。そして焔火は、それらを全て避けたり燃やしたりしつつ段々と翡翠に距離を詰めていった。そしてついに翡翠の目の前までやって来た焔火は、炎を纏った右拳で彼女の顔面に殴りかかった。しかし、その拳は難なく避けられた。そしてそれと同時に蹴り飛ばされた。それにより地面に叩き付けられた焔火。しかしその後すぐに立ち上がり、再び翡翠に向かっていった。
「うぉら!!"紅蓮脚"!!」
焔火は翡翠に炎を纏った右脚で蹴りを放った。しかし、それも軽々と避けられてしまった。その後も何度か炎を纏った脚や拳で攻撃を試みたが、全て軽々と避けられ、一向に当たる気配はなかった。
「フフッ、遅い遅い、ベリースロー」
(クソ!!この女!!なんつー動体視力と反射神経だ!!俺の攻撃を難なく避けまくるなんて!!)
焔火が心の中でそう思ったその時である。翡翠は右手から毒剣を生成させ、ズバッと焔火の胸元を斬りつけた。
「いでぇ!?」
「焔火は自分の胸元をさすりながら、唇を噛み締めた。そんな彼を見て翡翠はクスクスと笑った後にこう言った。
「は~い、死亡確定」
「え!?」
突然翡翠の口から出た言葉に、焔火は衝撃を受けた。
「し、死亡確定だと!?どういう事だよ!?」
「……今あなたの胸元を毒剣で斬りつけた事により、あなたの体内には致死性の超猛毒が入ったのよ……」
「なるほど」
「あなたに残された時間は、あと10秒……9、8、7、6、5、4、3、2、1、0」
カウント終了後、焔火は死ななかった。生きていた。
「…………どうして生きてるの?」
翡翠は若干眉をひそめながら焔火にそう聞いた。
「……燈一族は代々毒が効かない特異体質持ちなんだよ、どんな毒やウイルスも体の熱で殺しちまうんだ」
焔火は、ニヤケながらそう答えた。
「……へぇ……なるほど……面白い体質ね……」
翡翠は、そう言うと右手から長い毒槍を生成した。
「毒で死なないとしても、体貫かれれば死ぬでしょ?」
そう言った直後に翡翠は毒槍を焔火目掛けて全力で投げつけた。
「フンッ!!」
スパァンッ
焔火は右手に炎を纏い、その手で飛んできた毒槍を真っ二つにした。
「ん?」
翡翠は毒槍を真っ二つにした焔火の右手を、目を細めてジ~ッと見つめた。
(……手を纏っている炎がチェーンソーの刃の様に回転している……)
翡翠が心の中でそう思った直後に、焔火が翡翠に話しかける。
「燈流古武術の技の1つ、"
「へぇ……厚さ7mを……それは凄いわね」
「お褒め頂き光栄です!!」
そう叫びながら焔火は猛スピードダッシュで翡翠に接近し、火炎鎖鋸で翡翠の体を斬りつけようとした。
「そんな攻撃私には当たらないわよ」
翡翠はそう言いながら、焔火の攻撃をスウェーで余裕気に避けた。
(ここがガラ空きだぜ!!)
焔火は翡翠の左ふくらはぎにキックをお見舞いした。
「ぐっ……!?」
キックを受けた翡翠はバランスを崩し、地面に片膝を付け、前屈みの態勢になった。するとその直後に焔火は翡翠にフロントチョークを仕掛けた。
「ぐっ……!!」
苦しむ翡翠。
「このまま失神させて拘束してやるぜ!!!」
焔火は、そう叫びながらグーッと絞めてる力を強めた。すると翡翠は両手から毒の短剣を生成し、焔火の全身をザシュザシュと刺しまくった。
「ぐっ!!!いっでぇぇ!!!でも絶対に離さねぇ!!!」
焔火は激痛に耐えながらフロントチョークを継続した。
「~~ッッッ!!!」
翡翠は焔火のフロントチョークを必死に振りほどこうと体を激しく動かしまくった。しかし、チョークはガッチリと決まっていたため、全くほどける様子はなかった。
(ぐっ……何て馬鹿力なの……!?このままじゃマジに落ちる……!!私とした事が……!!とんだ失態ね……!!こんなキッズに窮地に立たされるハメに合わされるなんて……!!さて……!!この状況をどう打破する……!?)
翡翠は絞められている苦しみの中で必死に考えた。考えて考えて考えまくった。現在の状況を打破する方法を。