第52話「poisonとflame」
「ハァ……!!ハァ……!!まだ落ちないのかよこの女……!!」
焔火は、かれこれ5分程翡翠にフロントチョークをかけ続けていた。しかし翡翠は全く落ちる気配がなかったのだ。しかし翡翠は全く落ちる気配がなかったのだ。
「只者じゃねぇなアンタ……!!どこでどんな訓練積めばチョークに数分以上も耐えられるんだよ……!?」
焔火がそう言った直後に翡翠は苦し紛れに口を開いた。
「……あなた……勃ってるわよ……」
「え!!!???」
翡翠の突然の言葉に、顔をカーッと赤くし、思わず首を絞める力を一瞬緩めてしまった焔火。そして翡翠は、その一瞬の隙を突いてスポッと首を外した。
「ああ!!しまった!!」
焔火が、そう叫んだ直後。
「お返しよ!!」
バゴォッッ!!!
翡翠は焔火の顎に強烈な右アッパーを放った。それにより15m程上空に吹き飛ばされた焔火。そしてその数秒後に地面にドサッと落下。
「ぐっ……!!なんてアッパーだ……!!」
焔火は顎を抑えながらゆっくりと立ち上がった。そしてある異変に気がついた。なんと翡翠がいなくなっていたのだ。
「!?消えた!?」
焔火は辺りをキョロキョロと見回し、翡翠を探した。しかし見つからなかった。
「クソ!!どこへ行った!?逃げたか!?」
「逃げる?逃げるなんてとんでもない」
「!?」
突然焔火の頭上から翡翠の声が聞こえた。その後すぐに焔火は顔を上へと上げてみた。するとそこには、かかと落としの態勢でこちらに落下してくる翡翠の姿があった。
ドグシャアッ!!!
かかと落としは焔火の頭部に直撃。それにより焔火は、うつ伏せ状態で地面に激しくめり込み、地面に巨大なクレーターを作った。
「フフフ……THE・ENDね」
翡翠は、めり込んでいる焔火に向かって静かにそう呟いた後、後ろに振り返り、その場を離れようとした。
「…………待てよ」
「!」
翡翠は背後から聞こえた「待てよ」という言葉に反応し、バッと振り返った。するとそこには、頭からツーッと血を流しながら立っている焔火の姿があった。
「……驚いたわ……死んだと思ってたんだけど……」
「鍛えてるんでね……あれくらいじゃ死なないんすわ」
そんな会話のやり取りを済ました後に、焔火は両手から炎をボヒュッと出した。
「今までのやり合いの中で、よぉく分かった……アンタは強い……マジに強い……俺が今まで戦ってきた殺人ミュータント達よりもブッチギリでな……つー訳で……こっからは本気でいくぜ……!!」
焔火は、そう言った直後に炎を纏った両手を翡翠に向けた。
「"
焔火が、そう叫んだ瞬間に焔火の両手から真っ赤で巨大な炎が螺旋回転しながら猛スピードで翡翠の方へと飛んでいった。
(あれは喰らったらヤバそうね)
そう思った翡翠は瞬時に両手から毒液を大量に出し、厚さ10mはありそうな毒の壁を自身の目の前に生成した。
ボヒュアアアアアアッ!!!
炎は壁に衝突。そしてそのままどんどんと貫通し、翡翠に直撃した。
「ぐっ!!!熱い!!!」
翡翠は火ダルマになり、地面に崩れ落ちた。そしてすぐに全身に纏わりついている炎を消化すべく、全身から毒液を大量に噴射した。結果、炎は全て消えた。しかし全身の50パーセント程に火傷を負ってしまい、心身もろともかなり最悪な状態となってしまった。
「ぐっ……!!」
翡翠は立ち上がろとしたが火傷の痛みで立ち上がれなかった。そしてそんな翡翠を遠目で見ていた焔火は、(よし!!今がチャンスだ!!)と思い、上着ポケットからミュータント用の手錠を取り出し、翡翠の元に向かってダッシュした。するとその直後。
バキャアッッ!!!
焔火は突然、自身の真横から現れたドレッドヘアの何者かによりドロップキックを入れられ、70m程吹き飛び、公園内にあった茂みの中へと突っ込んでいった。
「……帰りが遅いんで気になって見に来てみれば……随分窮地に立たされてるじゃねぇか」
焔火にドロップキックを放った何者かは、翡翠を見ながらそう言った。
「…………
翡翠は焔火にドロップキックを放った者に向かってそう呟いた。そう、突然のこの場に現れて焔火にドロップキックを放ったのは"殺人ゲーム"監視役の
「久しぶりに見たぜ、アンタがこんなにボロボロになってる姿」
蓬莱がそう言うと翡翠はニヤリと笑った。
「フフ……あの坊や、中々手強くてね」
翡翠がそう言うと、蓬莱は焔火が飛んでいった茂みの方向へと視線を向けた。
「
「ええ……私も正直かなり驚いたわ……
翡翠は、そう言いながら、火傷の痛みにより若干顔を歪ませながら、ゆっくりとその場で立ち上がった。するとその直後に向こうの茂みの中から焔火が出てきた。
「コラァァァァァ!!!!てめぇなにもんだゴラァァァ!!!!いきなり人の事蹴りやがって!!!!」
焔火は蓬莱に対して、ひどくブチギレている様子だった。
「翡翠さんよぉ……アイツ、今この場で協力して始末しといた方がいいんじゃねぇか?生かしておいたら後々やっかいな事になりそうじゃねぇか?」
「面倒臭いからいいわ、それより私、今猛烈にアジトに帰って傷の手当てを済ませて読書の続きをしたいの」
「ああそう?まぁアンタがそう言うならいいんだけどな……んじゃ帰りますか」
蓬莱は、そう言うと、翡翠の左肩に右手をポンと置いた。すると次の瞬間、2人はパッとどこかへと消えた。
「なっ!?き、消えた!?」
翡翠と蓬莱が突然消えたのを見て驚いた焔火。
「ち、ちくしょう……!!何なんだよ急に消えるなんて……!?あのドレッド野郎の能力か……!?それにしてもクソ!!あと一歩であの女を捕らえる事ができたのに……!!まぁクヨクヨしててもしゃあないか、とりあえず本部に戻って、今日起きた出来事を報告しよう」
焔火は警視庁本部へと戻っていった。