第50話「毒と炎」
ブオンッ
「あれ?ここは……」
焔火は気がつくと
「そうか……あのお姉さんが何か力を使って俺をここに転送したのか……」
焔火は自身の身に起こった事を瞬時に理解した。そしてその後すぐに
「ガラガラだな……」
公園の中は平日の午前中だったためか人はあまりいなかった。そして焔火は15分程経った頃に、芝生広場に生えていた桜の木の下で、翡翠碧が読書しているのを発見した。
「見つけたぜ……」
焔火は翡翠の元へと、ゆっくりスタスタと歩いて近づいていった。
「おいっす~」
焔火が翡翠に、そう声をかけると、向こうは顔をゆっくりと上げて焔火の顔を見た。
「……どちら様かしら?」
翡翠は焔火に、ゆっくりと静かにそう聞いた。それに対して焔火は。
「なぁにが「どちら様かしら?」だよ、そういうのはもういいっての、アンタ俺の事知ってんだろ?無論、俺もアンタの事をよぉく知ってる……翡翠碧……各地から荒くれミュータントを集めて"殺戮会"という組織を作り、ソイツら1人1人順番に"殺人ゲーム"とかいうイカれたゲームを行わせている……そしてつい最近、女刑事2人に重傷を負わせて逃亡、さらには何の罪もない男子高校生に20億の賞金を掛ける」
焔火がそう言うと、翡翠はニヤリと笑みを浮かべながら、開いていた本をパタンと閉じ、その場でゆっくりと立ち上がった。
「フフフ……さすが"刑事代行"……詳しく知ってるわね」
「俺が刑事代行やってる事も知ってんのか……」
「まぁね……ねぇ、そんな事よりも、あなた今"女刑事2人に重傷を負わせる"って言ったわよね?それって金髪ショートヘア女と白髪ショートヘア女の事?」
「ああ」
「あの2人は生きてるの?」
「ああ、生きてるぜ、絶賛入院中だけどな」
焔火が答えると翡翠は、やや残念そうな表情を浮かべた。
「なんだ……生きてたのね……残念……殺したと思ってたのに……まぁいいわ、それで?あなたは私をどうしたいの?」
「ここ最近都内で発生した連続殺人事件の重要参考人として……それから刑事2人に対する暴行罪で警視庁まで連行する」
焔火は目をキリッとさせて、そう答えた。
すると翡翠は焔火の発言に対して鼻で笑いながら答えた。
「フフッ……連行ね……あなたみたいな人生経験の浅そうなキッズが私を連行する事なんてできるのかしら?」
「ああ、余裕だぜ、なんせ俺はただのキッズじゃねぇからな」
そう言って焔火は右手から炎をボヒュッと出現させた。
「フフフ……炎使い……」
翡翠は軽く笑いながらそう呟くと、右手に持っていた本を、履いていたスカートのポケットにしまった。そしてその直後に不気味な笑みを浮かべて焔火の顔を見ながら両手から毒を生成させ、毒手を作った。そんな翡翠を見て、サッと身構えた焔火。人気のない平日の公園内で毒vs炎という勝敗予想のつかない戦いが今ここに火蓋を切ろうとしていた。