巨乳女騎士を添えて~【バトル】四天王の本気
「ギャア、ギャア! 貴様ら! ヴォックスさまに恥をかかせるなっ! あの裏切り者は絶対に――」
「隊長が消え――」
「何だ!? 何が起こってる!?」
俺は指輪を使い、再び敵の死角から体に触れると、転移させた。
「攻撃されてるぞ!!」
「こっちだ! こっちにく――」
即死級の攻撃だ、例えタネに気が付いたとしても、絶対に避けられない。
攻撃は一瞬だ、敵が俺の姿を見た瞬間に、死角をついて、転移させる。
「くっ、マズイ、このままじゃ……本気なんだね、ジン君」
転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移。
高速で繰り返す。
転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移、転移。
あらかた。
いや、軍の三分の二を片付け、もはや軍とは呼べない程、その群れは瓦解し始めていた。
残るは、――――大将。
ヴォックスの上部後方から確認する、こちらに気が付き、俺を見た。
刹那。
転移した、ヴォックスの死角。
――ではなく、その下、ヴォックスが最初から乗っていた、ひときわ大きなグリフォン、その死角に。
その鋼のように堅い羽に触れると、暴れ柊の枝付近に転移させた。
支えを失い、自重で落ちるヴォックス。
俺はそのヴォックスの、死角に、転移した。
手を伸ばし、そのキレイに整った耳、後頭部に触れ――。
勝った。
「うっ…そだろ」
俺は考えるよりも早く、呟いていた。
目が…あった。
四天王のなせる技か、ほとんど俺が転移した瞬間、ノータイムで振り向いたのだ。
「まずい! ジン!!!!」
そんな、乳山の叫び声が聞こえる。
だが、乳山の心配をよそに、俺はただ一つのことだけを思考していた(この身動きの取れない中、手で触れれば、触れさえすれば、俺の勝ちッ!)
顔めがけて思いっきり手を伸ばすが、意識が、思考が、安易な結果ばかりに囚われ過ぎていた。俺の足にはヴォックスの尻尾が巻き付き、ヴォックスは、空中で、ほとんど脱力したような体制から一瞬にして、俺を使いつつ、背後に回ったのだ。
尻尾で動きを固定され、反撃も防御も出来ない。
まずい! ほんとに――死。
ヴォックスは鋭く尖った、鉄板すらもやすやすと引き裂く、その腕を、俺に向けて振り下ろす。そこには、手心も配慮も躊躇も、一切の雑念を感じない純粋な、殺気。
ねこパンチ、LV-百。
それは、辺りの空間を歪ませるんじゃないかと思うほどの威力で、風を、音を置き去りにした。