122 大宴会②/マナトとムハド
長老はステラに言うと、再び、ムハドのほうを向いた。
「わしは先に家に帰って、作業しておるからな。お主も帰ってきたら、わしの手伝いじゃぞ!よいな!」
――タタタタ……!
吐き捨てるように言うや否や、長老は老人とは思えない速さで走り去っていった。
「大丈夫だ、じいちゃん。今日は戻らないことにするから……」
ムハドが、長老の背中を眺めながら、小さな声で言った。
すると、走り去る長老と、マナトもよく知る人物が、ちょうど、すれ違った。
「よぉ!ケントじゃねえか!」
「先輩、どもっす!……モグモグ」
肉の串焼きを美味しそうに食べながら、ケントがやって来た。
「どうだ?隊長は」
「まあ、ぼちぼちっすね!てか、長老、どうしたんすか?すんげえ形相してましたけど……モグモグ」
「あぁ、それ……」
ケントがムハドに問うと、代わりにセラが口を開いた。
「ラクダを大量に連れ帰ってきたことを、さっき怒られてたのよ。帰還直前にリートが言ったとおりになったわね」
「そういうことか。……モグモグ」
「いやぁ、それにしても、俺、じいちゃんのこと、ちょっと心配してたけど、あの感じなら、まだまだ大丈夫だな!はっは!」
ムハドがご機嫌よい感じで笑った。
「やれやれ。これだものね……」
セラが、その高い肩をすくめた。
「……ん?」
ムハドがマナトに気づき、目線を向けた。
「あれ?村の、者……か?すまん、顔が思い出せないぞ?」
「あぁ、いや、僕、新参者です。マナトといいます」
マナトはお辞儀した。
「マナトは、最近この村にやって来たんですよ」
ミトが言った。
「んっ!そうか!」
すると、ムハドは改まった様子でマナトの前へ立ち、右手を差し出し握手を求めてきた。
「俺、ムハド。この村の、キャラバンだ。よろしくな」
ムハドはマナトよりも多少背が高い程度で、身長だけでいえばセラやケントのほうが高かった。
それでも、
……やっぱり、オーラが違う。
この村の誰よりも強く、大きく、そして、「この村の、キャラバンだ」という彼の言葉に、どことない重みをムハドに感じながら、マナトも右手を伸ばした。
「よっ、よろしくお願いします!」
――ガシッ。
2人は握手した。
「村はどうだ?」
「はい。居心地いいです、とても」
「そうか。それはよかった」
「ひとつ、聞いてもいいですか?」
自然と、マナトはムハドに質問していた。
「おう、別にひとつじゃなくてもいいぜ」
「すみません、まだ新参者なので、これって、当たり前のことかもしれないんですけど……」
「構わねえよ、どうした?」
「長老って、ムハドさんの祖父なんですか?」
「ああ、そうだよ。まあ、血は繋がってないけどな」