121 大宴会①
夜。
村の中央広場で、ムハド大商隊の帰還を祝した大宴会が始まっていた。
いつもの倍の数のマナのランプが置かれ、光り輝く。その場だけ、昼かと思われるほどに明るかった。
大衆酒場の扉は、全開。また酒場の前にはテーブルと椅子が置かれ、テーブルの上には、酒の入った小樽。
そして、キャラバン達も村人達も、みんなが集まり、ワイワイした声が広場に満ちていた。
「こっち!できたよ!」
「こっちも!」
「さぁ!どんどん食べておくれよぉ~!!」
露店が立ち、恰幅のよい婦人を中心に、婦人達がものすごい勢いで、料理を振る舞う。
「おばちゃん、あんがとよ~!」
ムハドが、婦人に礼を言いつつ、料理が盛り付けられた皿を持った。
「おっ!今回の主役じゃないか!大丈夫かい?ついさっきまで、交代で交易品運び続けてたっていうじゃないか」
「今日は中断したよ。まだ終わってないんだ。明日の朝から、また運搬だな」
「あはは!相変わらず無茶苦茶だねえ!さあさあ!食べておくれよ!」
「モグモグ……デリシャス!!」
「ムハドさん!」
先まで運搬作業の手伝いをしていたミトとラクトが、ムハドに駆け寄った。
「よぉミト!ラクト!お前ら、どうだった?試験」
「もちろん、2人とも、合格したぜ!」
「アクス王国に、交易にもいきました!」
「マジでか!すげえじゃねえか!」
するとムハドは、白い歯を見せて、ちょっといたずらっぽく、ニッと笑った。
「んで、どうだったよ?初交易。ちょっとお前ら、話聞かせ……」
「ムハド!見つけたぞ~!」
「んっ?おう、じいち……」
長老が一目散にムハドに駆け寄る。
すると、ムハドにぽかぽかと、杖で頭を叩き始めた。
「見ろよ!長老がムハドを叩いてるぜ」
「昔よく見た光景だ!ガハハ!」
その光景を見て、周りの者達は笑っていた。
「こらムハド!前回の二の舞ではないか!この村にあんな量のラクダを養えるだけの土地も食糧もないと、あれほど言い聞かしておったのに!!」
「いてて……仕方ねえだろ!手に入れた交易品を持ち帰るのに、それしか方法が……」
「分をわきまえぬか!村にも運営というものがあるのじゃ!」
大宴会で皆の笑顔が弾ける中、長老のみが別の方向で弾けている感じだった。ずっと、ぽかぽかとムハドを木魚のように叩いている。
「いて~なもう!じいちゃん。そんなに怒ると、寿命が縮まるぜ?」
「誰のせいじゃと思っとんねん!」
「まあまあ、長老」
セラの声がした。
気がつくと、セラとステラ、そしてマナトもやって来ていた。
「ステラ!ちょうどよかった」
長老は言うと、ムハドを叩くのをやめ、ステラに顔を向けた。
「えっ?私ですか?」
「そうじゃ。ルフはどうしておる?」
「止まり木の上で、うつらうつらしてるかと」
「明日の朝、クルール全土の国や村に向けて、至急、伝報を飛ばしてほしいんじゃ。わしは今からウチへ帰って、その伝書を作成する。先に渡した伝書は破棄して構わん」