119 キャラバンの村のキャラバン達
「お~い、ムハド隊長~」
箱船から降りてきたキャラバンの一人が、後ろ指で、箱船を差している。
「うっし!みんな、ブツを運ぶか!」
ムハドが言った。
箱船に積んであった交易品が、帰還した多くのキャラバン達の手によって降ろされ始めた。
その光景を、ステラと一緒に、マナトは見ていた。
「人数、多いですね」
「いや……でも、これまだ、半分以下じゃないかしら……?」
ステラが、キャラバン達の人数を数えながら答えた。
「あっ、まだいるんですね」
「ええ。たしか、100人以上で交易に出掛けていたハズよ」
「みんな、キャラバンの人たちなんですか」
「そう。みんな、マナトくんの、同業者でもあり、ライバルでもあることになるわね」
「ライバルですか……」
力強い体格をした男のキャラバンもいれば、長い髪をなびかせた美しい女のキャラバンもいる。
全体的に若いということを除けば、本当に多種多用な顔ぶれだった。
そして、みんな、帰還の喜びに、晴ればれとした顔をしていた。
「ライバルなんて、おそれ多いですね。みんな、凄そうに見えます」
「ウフフっ、せっかくマナトくんの、闘争本能をかきたててあげようと思ったのに」
「ははっ、あの人たちに比べたら、まだまだ新米もいいところですってば……」
村から、馬車やラクダ達が連れてこられた。
「なんだよこれ?帽子?」
「おい誰か、手伝ってくれ。この壺みたいなの、やたら重いんだけど」
「あっ、このお人形さん、かわいい……」
「てか、この馬車に積んだの、ガラクタばっかじゃ……」
村人達は口々に言いたい放題言いながら、どんどん、馬車やラクダに交易品を乗せた。そして順番に、村内部へと運ばれて行った。
「……あっ、ミト!ラクト!」
ラクダ達を連れてきた村人達の中に、ミトとラクトの姿が見え、マナトは手を振った。
「あっ!マナトは先に着いてたのか!ムハドさんはどこに……」
「お~い!ミト、ラクト!」
ミトとラクトはすぐに村人達につかまった。
「この壺、一緒に村まで運んでくれ!やたら重くてさ」
「いやでも俺たちまだムハドさんに……」
「いいから!そんなのあとあと!」
村人達に背中を押され、ミトもラクトも手伝わざるをえなくなってしまった。
「ちくしょ~!あのクソ護衛のせいで出迎え遅れちまったじゃねえかよ~」
「あははっ、仕方ないよ、ラクト。あとでムハドさんとこ、行こうよ」
愚痴を言うラクトをミトが笑って慰めながら、2人は交易品運びに加わった。
「ま~た今回も、有益なもの無益なもの、見境なく手に入れてきおったようじゃのぉ~」
交易品が運ばれてゆくのを眺めながら、長老がマナトとステラの横に来て言った。
「ウフフっ、そのようですね、長老」
「うむ。しかし、一番の財産は……」
長老は箱船を見た。
「この、空飛ぶ箱船じゃな。もっとはやく、ウームーと交易すればよかったと、思うくらいじゃ。この箱船を利用すれば、交易量はこれまでの倍以上になるじゃろう」
「確かに、そうですね」
「長老、残念ながら、それは出来ません」
「んっ?」