37 共行⑦
「ミトくん、あなた、優男な雰囲気出してるくせに、やることがえげつないわねぇ!」
「いやいや、その言葉、そっくりそのまま、ウテナさんに返すよ!」
「ちょっと!それってあたしが男ってことに……」
ミトとウテナが楽しそうに笑い合いながら、話をしている。
その少し後ろでは、ルナと、ラクトとマナトが並んで歩いていた。
「盗賊と初めて戦ったけど、ぜーんぜん強くなかったな〜」
「いや、多分、ラクトさんと、ミトさんは、ちょっと、強さが飛び抜けてるような気がするわ」
ルナが言った。
「そ、そうか?」
ラクトが恥ずかしそうに、嬉しそうに頭をかいている。
「あと、ウテナもだけど。それに……」
「……」
……こ、怖かったぁ!!
マナトは、心ここにあらずだった。あんなふうに戦ったことは、これまでなかったから、今も若干、なんていうか、ふわふわしている。
「……ん?」
ルナがマナトを見ていた。
……うわぁ、ルナさん、目、青いなぁ〜。
マナトは改めて思った。
「マナト、さん、ですよね?」
「あっ、はい。マナトです。すみません、呼んでました?」
「いえ、ぜんぜん。……マナトさんの戦い、ちょっと、見てました。水を、操っていたのを……」
「あっ、はい、ええ、そうですね」
――シュルル……。
マナトの水壷から、細い水流が出てきた。
マナトが手を広げると、手のひらの上で水が輪っかをつくって、くるくると回り出した。
「すごい……」
……あっ、この世界でも、すごいって思ってくれる人がいるのか。
水の能力に感動している様子のルナを見て、マナトは思った。
マナトが水を操れるようになった時、ミトとラクトは非常に喜んでくれはしたが、彼らからすると、『まあ、そういう人もいる』的な認識だった。
キャラバンの村には、ほかにも能力者がいるらしかった。
そのため、なんていうか、能力者といっても、割と大したことないとマナトは思っていた。
さっきまでの戦闘がウソのように、穏やかな砂漠行脚となっていた。
「あっ、そうだ。ケントさん、何でそもそも、西側に盗賊団がいたんですか?」
「あっ、確かに。別のキャラバンルートにいるって話だったハズなのに」
ミトが言うと、ウテナも首をかしげた。
「ん〜、何でだろうな?俺にも分からん」
ケントも、頭の上に「?」マークが浮かび上がっている様子だった。
「最短のキャラバンルートのほうで何かあったのかもね」
フィオナがケントを見て言った。
「なるほどな」
「次のサライに行けば、何か分かるかもね」
「だな。またちょっと、情報収集するしかないな」
「ええ」
「……なんか、おふたり、お似合いですね」
ミトが、ニコッと笑いながら、言った。
「ちょっと!ミトくん、そんな事……!」
「えっ?」
「えっ?いや?あの、いや、別に、いいんだけど……」
ウテナが顔を赤くした。
「……なんであなたが赤くなってるのよ、ウテナ」
フィオナが苦笑した。
ふと、フィオナはウテナの先、ラクトとマナトと会話している、ルナを見た。
「んっ、どうした?フィオナ隊長」
「何でもないわ。あと、フィオナでいいわよ、ケント」
夕方、ほとんど日が落ちた頃、ようやく西方のサライに到着した。
「おい!お前ら、よかったな!無事だったのか!」
サライに到着するや否や、サライを管理している男がやって来た。
「おう!盗賊だろ?追い払ってきてやったぜ。これでしばらくは……」
「違う!違う!」
ケントの言葉を、管理人が遮った。
「ジンが出たらしいんだ!お前らは、会わなかったのか」