20 はじまりの草原/マナの洞窟
「うむ」
長老は、大きく頷いた。
やがて、長い長い階段を上り切った。
「ふぅ」
少し疲れた。
――サ〜。
草が、気持ちよさそうに揺れている。
かつてマナトが倒れていた、傾斜のある草原にやって来た。
「……あっ、そうだ!」
ミトが長老に言った。
「ここでマナトと初めて出会った時、ドレイクを見たんです」
「ほう、ウシュムの守り神の末裔か」
「はい。2体、密林方面から、砂漠へと飛んでいったんです」
「そうか……」
マナトも思い出した。悠々と大きな翼で羽ばたきながら、空を飛ぶあの姿を。
……怖くなってすぐ逃げたけど。
長老は、遥か地平線の砂漠を眺めやると、やがてマナトのほうを向いた。
「行くぞい。こっちじゃ」
長老は、草原を上っていった。マナトとミトも、それに続いた。
「さっきの、十の生命の扉を開く者、というのは、いったい、どういった意味なのでしょうか?」
草原を上りながら、マナトは長老に聞いた。
「いや、わしも詳しくは分かっておらんのじゃよ。……じゃがの」
長老はマナトのほうに振り向くと、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「人間は通常、扉は、六つらしいがな」
「えぇ……」
マナトは一気に自信がなくなってきた。
「じゃあ、僕、多分、ダメじゃないですかね……」
「そうか?わしはそうは思わんぞ」
長老は言いつつ、歩みを止める事なく、ずんずんと進んで行く。
「お主の、日本という世界で過ごして来た日々、経験が少なくとも、六つの扉その先、七つ目、八つ目、もしかしたらその先まで、開けているかもしれないと思ったんじゃ。わしはお主に、わしなりの価値を見出しておる」
「……はい」
はい、としかマナトは言えなかった。
……いったい、長老は自分に、どんな価値を見出しているのだろうか。
草原の上り切り、少し下った。
「さあ、着いたぞ」
草原を少し下った先には、密林が囲い込む形でうっそうと生い茂っていたが、木と木の間に、少し地面が盛り上がって、岩がむき出しになっていて、かがんで入れる程度の穴があいている部分があった。
穴の横には、ランプの器のような透明の入れ物が置かれていた。
「洞窟ですか」
「そうじゃ。ここは、マナの洞窟。ミト、お前はここまでじゃ。待っておれ」
「はい」
長老が言うと、ミトは素直に頷いた。
長老はふところから、赤く着色された石、マナ石を取り出し、洞窟の横のランプの器に、そのマナ石を入れると、
「入るぞ、マナト」
「はい」
長老とマナトは洞窟に入った。
洞窟に入って間もなくして、ランプの中のマナ石の上に火が灯った。
まるで明度に反応して自動に灯る街灯と一緒だ。やはり便利すぎる、マナ石。
どんどん、奥へ奥へ。
「結構、あるんですね」
「うむ。頭に気をつけるようにな。……ここが一番、狭いぞ」
四つん這いにならないと、先に進めないくらい狭いところに差し掛かり、長老もマナトも這うようにしてくぐり抜けた。