第2話 告白
「気持ちよかったよ」と、ベットの上のアリスは顔を赤くしながらそんなことを言う。
俺もすごく気持ちよかった。
けど、心の中には罪悪感が残っていた。
半端な気持ちでアリスとしてしまったこと。
あんなことをされてもまだ、俺の心には間違いなく佳奈が居たのだ。
すると、アリスは優しく俺の頬を触る。
「そんなに思い詰めなくていいよ?今は気持ちの全部が私に向いてなかったとしても、私は好きな人とえっちが出来ただけで嬉しいから。あと、したからって付き合えって言うつもりもないし、むしろ今海斗から告白されても受ける気はないから。つまり今は幼馴染のセフレってやつ?今はね?したくなったらいつでも言ってね」
言葉になんて出さなくても全部分かっていた...ということか。
てか、デレデレなのかツンツンなのか、本当によくわからない。
「...ありがとうな」
「うん。それで一個だけ確認しておきたいんだけど、...海斗は私と元カノ、どっちのほうが気持ちよかった?」
「...えっ...と「はいもういいです。...やっぱり経験積まないとダメだよね。うん」と、何やら納得したアリスだった。
「あ、あと相手の男ってどんなやつだった?法言なんでしょ?慎二から聞いた」
「うん...。とりあえずイケメンだった」
「ネクタイの色覚えてる?」
「...緑だったかな?」
「てことは2年か。ふーん。そっかそっか」
「あと、髪が金髪だった」
「あー...あいつか」
「心当たりあるの?」
「心当たりっていうか、多分同じクラスだし。私も告白されたことがある。女たらしのクズだよ」
「...そっか」
「ま、大概の女は顔重視だから。アイドルなんてものが蔓延ってる時点でお察しでしょ」
「...確かにな」
「大丈夫、私は断然中身派だから」と、笑いながらそう言った。
–––– 翌日
残酷にも昨日は月曜日であり、これから後4日間は学校に行かなければいけない。
ズル休みすることも考えたが、それをすると余計に行きたくなくなりそうで、大人しく学校に行くことにした。
佳奈とは同じクラスだし...。
いや、向こうが休む可能性もあるか...と、思いながら家を出る。
すると、玄関の前にタクシーが停まっていた。
「おっ、出てきた。大丈夫か?」と、慎二が出てきた。
「うん。とりあえずね。てか、ありがとうな、アリスに連絡してくれて。すげー助かった」
「大したことじゃねーよ。ま、何かあったら俺に相談しろ?金で解決できそうなことなら尚更な」
「...なんか消費者金融みたいなこと言ってくるな」
「誰がだよ」と、チョップされる。
そのまま二人でタクシーに乗って登校する。
そして、下駄箱で靴を履き替えていると、入口の方に佳奈がいることに気づく。
佳奈もこっちの存在には気づいていただろう。
「わり」と、慎二に言い残してそのまま足早に教室に向かう。
「...」
同じクラスだったが、席は離れていることが功を奏して、ほぼ関わることもなく過ごすことができていたのだが...。
–––– 昼休み
「おーい、海斗ー。飯の時間だぞー」
「...おう」
「よし、今日は俺の松坂牛あげちゃうぞ」
「いいよ。変な気を使わなくて」
「何言ってんだ。出世払いで返してもらうつもりだけど」
「押し売りかよ。もしそうなら食った後ゲロってクーリングオフしてやるぞ」
「そしたらクリーニングが必要だな」
「ちょっと上手いこと言うなよ」
そんな会話をしていると、「ご飯の時間だよー」と、千歳《ちとせ》 紗南《さな》が、俺の前の席に座る。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/keysuke/news/16817330659965299697
千歳紗南
同じクラスの女子で佳奈の親友である。
陸上をやっていることもあり、肌は褐色がよく、まさに運動少女という感じではあり、性格も見た目通り活発で、顔もかなり可愛い方であり、クラスでも人気の女の子である。
彼女がなぜ俺の前の席に座ったかというと、いつも俺と慎二と佳奈と紗南の4人でお昼を食べるのが習慣となっていたからである。
しかし、俺と佳奈が別れた以上もうそれもなくなるわけで...。
「あっ...えっと...」
「ん?どうしたん?」
佳奈のやつ言ってないのか。
そりゃ言えないか。
自分が浮気してから別れたなんて。
「ごめん。俺、佳奈と別れたんだ」
「知ってるよ」と、言われた。
まさかの返答に戸惑っていると。
「佳奈が浮気したから別れたんでしょ」と、彼女は普通のトーンでそう言った。
「...」
「大丈夫。私も佳奈とは縁切ったから。気にしないで」
「...え?なんで...?」
「なんでって...私が海斗くんのこと好きなの知ってるくせに、別れもしないで浮気までしてたとか、もう人として終わってるでしょ。もう2度と許さない」と、淡々とそんなことを言う。
...ん?今なんかとてつもないことを言われたような...。
「え?」
「これで堂々と海斗を狙えるから、私的には嬉しいんだけどね」
「...そのこと他の人に言った?」
「ううん。誰にも」
「なら、誰にも言わないでほしい。慎二は事情知ってるから」
「本当、海斗くんって優しいよね。そう言うところ好きだよ」
恐らく、佳奈はこちらを見ていただろうけれど俺はそれに気付かぬふりをした。