12.いざ! アフレコへ!
そう言えば、アフレコはアフター・レコーディング。
撮影したものに後から声や音を入れる、の略なんだよね。
ヤバい、キンチョーが解けない。
「そのキンチョーも、久しぶりね」
アンナにもみんなにも、このキンチョーまるわかりだね。
でもね。
「できた動画は送られてくるし、指示もしてきたから」
私は感謝してる。
「みんなが、どれだけしてくれたかは、わかってるよ」
平くんが目を手でおおった。
「泣かせるっす」
わざとらしいけど、今はその涙を隠す仕草が、今はうれしい。
「最初から本読みで、よかったね?」
白部長が聴いた。
本読みとは、本番前の予行練習のこと。
「はい」
手順で言えば、その前に通読や唇読みがある。
通読は、原稿をざっと読むこと。
作品の流れやテーマ、強調したいポイントを頭にいれる。
唇読みは、原稿を小声で読んで確認すること。
音として響きやつながりが悪いところを確認するの。
そこまでは、すんでいる。
「では、始めよう」
この日のために、発声練習してきたんだよ!
アフレコスタッフにあいさつする。
彼の前にはミキサー、ノイズが入ってないかなど、音の質をまとめる機械がある。
さらに向こうに大窓、ドアの向こうのスタジオが見える。
未来文化研究部だけのために作られたスタジオが。
ドアを閉めた。
なかは私一人だけ。
足音をさせないふかふかの絨毯。
しっかりとした防音壁。
マイクに向かう。
マイクの前にはポップ・ガードもある。
話す人の唇からでるノイズを消す、ストッキングくらいの薄い布を張ったものだよ。
本当にストッキングと針金で代用することもできるらしいけど、ここのは全てが専門の道具で揃えている。
なんだか、くやしいな。
うちの学校のマイクなんて、放送室にあるだけ。
たぶん、私が産まれる前の物だと思う。
ポップ・ガードなんかない。
こんなリッパな施設、他の学校には放送室にだってない。