心当たり
翌朝、起きると異変を感じた。眠たい目を擦りながら、隣を見ると、銀髪の天使____もといシルが寝息を立てながら、眠っていた。
「なんだ……シルか………」
ん?シル?
はぁぁぁ!?なんで!?俺の布団の中にシルがいるんだ!?思い出せ!思い出せ、俺!
俺が絶賛ベッドの上で葛藤している中、シルが目を覚ました。
「ん……んん〜……あぁ、じーくだぁ〜、えへへ〜むぎゅぅぅ」
まだ寝ぼけているのか、夢でも見ているのか、隣にいる俺を見つけるとシルは、むぎゅっと抱きついてきた。
昨日は暖かかったからか、シルの服装はワンピースタイプのもので、シルの腕や太もものシルクのような柔肌が直に感じられる。
このままでは俺の精神衛生上よろしくない。
「シル!動けないから離してくれ!」
「んぅ……むにゃ?もうぅ〜あばれないのぉ、よしよし〜」
「ちょ、ちょっとシル!寝ぼけてないで起きろ!」
「……ん〜……ふわぁ〜あ、おはよう!ジーク!」
「お、おはよう…………じゃなくて!なんで、俺と同じベッドで寝てたんだ!?」
「え?夜中にジークの布団に潜り込んだだけだけど?」
は?なんでこいつは、さも当たり前のように言ってるんだ!?
「そんなことより、早く下りようよ。私、お腹空いちゃった」
「う、うん……」
♢ ♢ ♢
結局、シルに流されてしまった俺は、父さんと母さんも一緒に朝食を取っていた。
「そういえばジーク。お前たち、これからどうするんだ?」
父さんにこの先の事を聞かれ、俺とシルは、黙ってしまう。
俺は、冒険者になりたいけど、この魔力値じゃろくに戦うことも出来ない。
それどころかシルに迷惑をかけてしまう。
そんな俺の意図を察したのか父さんがこう切り出してきた。
「父さんに一つ心当たりがあるんだが……」
「心当たり?」
「ああ、父さんの古い友人なんだが、ジークみたいに微量の魔力しかないんだが、魔力操作が上手くてな。そいつに教えを請うことが出来れば、ジークでも戦うことができるかもしれない」
「本当に!?」
「ああ、しかしそいつが少々めんどくさい奴でな、素直に教えてくれるかどうか………。それでも、行くか?」
俺は少し考え、そして決意する。
「それでも、俺は行きたい。父さん、どこに行けばいい?」
「お前なら、そう言うと思ったよ………。
アトレアの森の奥に小さな小屋がある。そこに行け。俺の紹介と言えば、話くらいは、聞いてくれるだろう」
「わかった。ありがとう、父さん」
「いいさ。それより頑張れよ」
「頑張ってね、ジーク」
「うん、頑張るよ!父さんと母さんみたいな立派な冒険者になるために!」
俺の言葉に2人は微笑みながらゆっくりと頷いた。応援してくれている2人に改めて感謝しながら、俺はシルを見た。
「ごめん、シル。シルの意見も聞かずに勝手に決めちゃって………」
「別にいいよ。私は、ジークと一緒ならそれでいいの」
「シル…………!」
シルの言葉に感動していると、父さんと母さんがにやにやしながら、こちらを見ている。
「いやいや、お熱いねぇ〜〜」
「シルちゃん、ジークをよろしくねぇ〜〜」
「はい!任せてください!」
なんだろう……すごく恥ずかしい……。
♢ ♢ ♢
最後まで父さんと母さんのにやついた視線を受けながら、俺とシルは、アトレアの森を目指して出発した。
「えへへ〜ジークゥ〜〜」
「こ、こら、やめろって!」
さっきの一件があってから、こうしてシルが甘えてくる。
嫌では、ないんだけど………その……胸が…………。
決して小さくない、むしろ大きい方に入るくらいのがさっきから無意識なのか、わざとなのか俺の腕に当たっている。
そのせいで、シルの顔を直視できないでいた。
「ねぇ、ジークってば!もう!なんでこっち向いてくれないの!」
「そ、そうは言ってもだな……。健全な男子には、この状況は、中々つらいものがあるんだよ………」
「へ?どういうこと?」
「いえ……なんでもありません……」
「??変なジーク」
俺は、この時シルがこういう事に関心が無くて心底良かったと思った。
そうこうしている内に、父さんの言っていた小屋が見えてきた。
周りには、この森で1番大きいのではないかというような立派な大木が生えており、光が差し込むことで神秘的な雰囲気を醸し出している。
「わぁ、、、!なんか不思議なところだね!
ジークのお父さんが言ってた場所って、あそこかな?」
「多分な。とにかく行ってみよう」
「うん!」
絶対に戦い方を教えてもらうんだという決意を胸に俺とシルは、小屋に向かった。