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【十九】


 存沼と有栖川君の恋が純粋に進んでいる。
 しかし、しかしだ。ある日俺は、有栖川君に呼び出された。また第三音楽室だ。冬休み中なのに! 部活の練習があるから、学校は開いていたのだ。

「高屋敷先輩……」
「どうかしたの?」

 存沼と何かあったのだろうか。それ以外、俺が呼び出される理由など存在しないので、純粋に首をかしげた。

「僕のせいで、雅樹様に失恋したって」
「え?」
「本当にごめんなさい。だけど僕も好きだから。この気持ちはもう抑えられないんです。いくら相手が高屋敷先輩でも」

 どうでもいいが、恋人に『様』をつけているのが不思議だ。場違いだがそんなことを思った。そして俺を『先輩』と呼ぶのは有栖川君くらいのものである。俺にとっては可愛い後輩だから、『様』はつけなくて良いよ、と伝えたのだ。だが妙な噂の件で、まさか有栖川君当人からまで謝られる日が来るとは思ってもみなかった。だから違うのに!

「有栖川君、勘違いだよ。僕は、存沼のことは、ただの良い友達だと思っているだけなんだ。恋心なんて無いから、失恋もしていないよ」
「本当ですか……?」

 有栖川君が、うかがうように俺を見た。だから俺は大きく大きく頷いた。こんな事で、有栖川君と気まずくなりたくない。誰だよ、本当、そんな噂を流したのは。

「本当だよ」

 この際、存沼と距離をおいてしまおうか。うん、悪くないな。いや……そうしたらまるで俺が失恋したから、存沼の姿を見ないようにしているとでもとられるかもしれない。そうなったら、噂に信憑性が増して、大変困る。やはり現状維持を心がけ、噂のみ払拭しよう。

 どうしたものか。ただ俺の言葉に、有栖川君が儚い笑みを浮かべた。
 信じてくれたようだ。とりあえず一安心だ。


 さて、クリスマスがやってきた。高屋敷家がクリスマスパーティを開催した。

 存沼は、有栖川君と過ごすそうで不参加だ。二人の仲が良いことは、喜ばしいことである。そして和泉は、パーティには絶対にこないと言っていた。エドさんがいるからだろうな……。そんなこんなで、出席してくれたのは、三葉くんだけだった。しかし三葉君にも恋人がいるらしいが、パーティにきていて良いのだろうか? 誘ってしまい悪かったかなと思い聞いてみる。

「――恋人と過ごさなくて良かったの?」
「いないよ」

 え……!? 返ってきたその言葉に俺は目を見開いた。いない? 
 別れたのか?

「実家に帰っているんだ」
「ああ、そうなんだ」

 心底びっくりしていたので、響いた言葉に安堵した。三葉君よ、君も順調に恋を続けてくれ。頼むから。だけど三葉君が好きになるって、どんな相手なんだろう?

「恋人のどこが好きなの?」
「腕前かな」

 なんの? 俺は菩薩を憑依させたまま半眼になった。腕前? どういう言う意味だろう。楽器の演奏でもするのだろうか? それとも絵画か? 芸術家か? しかしその後、お客様への挨拶のために父に呼ばれたので、俺はそれ以上は聞けなかった。ものすごく気になるのに!

 そうして冬休みは終わり、(俺の体感的に)三学期がやってきた。
 これを乗り切れば、来年は三年生だ。最後の定期試験も頑張ろう。
 と言うことで、俺の意識は勉強に向いていた。そんな時だった。

「大変だ、誉様!」

 侑君がやってきた。嫌な予感がした。また仲裁では無かろうな。
 そしてその予感は的中した。もう本当に嫌だ。

 今度は、第二体育館の正面で、存沼と和泉が怒鳴り合っている。最悪なことに、西園寺の姿もない。風紀委員長だろう、さっさと止めに来い!

「生徒会に瑛を渡すつもりはない!」

 存沼が言った。瑛というのは、有栖川君の下の名前だ。それに対して和泉が叫び返す。

「いらないって言ってるだろ!」

 なんだろう……俺には、二人の意見は一致しているように思える。
 それなのに何故喧嘩をしているのだ。有栖川君はといえば、そんな二人の様子を困ったように眺めている。とりあえず現状が分からないので、俺は有栖川君に歩み寄った。

「何があったの?」
「実は僕……生徒会に入りたくて。和泉様にお願いしちゃったんです」

 有栖川君よ……そうか。君が原因なんだな。だけどまた、何故生徒会に? 生徒会なんて雑用係みたいなものではないか。俺にはいっさい入りたいという感情はわかない。

「どうして生徒会に入りたいの?」
「その……奨学金が下りやすくなるので」

 あれ。動機が結構不純だな。まぁ有栖川君にとっては切実な問題なのだろうが。

「僕、お金がないと生活できないので。その点雅樹先輩は、いくらでもお金ならくれるって言うんですけど、そんなの嫌で……」

 存沼よ。お前も何を言っているんだ。確かに嫌だと思う有栖川君の気持ちもよく分かる。お金をもらいながら付き合う中学生というのは微妙だ。いや、中学生じゃなくても微妙だ。完全に、対等ではなくなってしまう気がする。勿論、存沼と対等でいられるのなど、三葉くんか和泉ぐらいしか存在しないだろうが。俺も対等ではない。

 まぁ当人同士が幸せならばいいのだろうか……? 確かに存沼の金銭感覚は崩壊しているのだし、ちょうど良いのかもしれない。きっとそうだな。何にしろ有栖川君よ、絶対に存沼の手綱を放すなよ!


 ちなみに定期試験で、俺は五位になった。人生初だ。
 今回も、上位四人は安定している。しかし何故授業に出ないのに、そして日本語が母国語じゃないのに、西園寺は満点なんだ。頭のできが違うのだろうか……。

 なお、今年もヴァレンタインショックは訪れた。再び侑君に、「誉様からのヴァレンタインチョコをほしがっている人が多いのに、何で誰にもあげないんだ?」と言われた。前にも言われたが、嘘だろう? そんなことを言われても、俺には男にチョコレートを渡す
趣味はない。それに我が家は、最近では和菓子の売り上げが良いらしいのだ。なんだろう、チョコレートまんじゅうでも渡せというのか?


 そして、俺は中学三年生になった。ちなみに俺は初めて、西園寺と存沼と砂川院兄弟と、すなわち全員と同じクラスになった。奇跡的だな。攻略対象が勢揃いだ。ここに満園先輩や数学教師がいれば完璧である。

 なお弟が初等部に入った。なので俺は、ローズ・クォーツのツボミのサロンに会いに行くことにした。放課後、いまだに存沼は八割方俺をサロンに誘いに来る。有栖川君が、有償ボランティアのために、早く帰宅してしまうからだ。だからその日は、存沼に断ることにした。すると存沼は、「俺もついていく」と言ってきた。まぁ断る理由もなかったので、俺は存沼とともに初等部へと向かった。

 そこにはかつて俺も着ていた制服をまとった、可愛い初等部生がいた。本当に子供って可愛いなと、俺は頬がゆるみそうになった。

「お前が誉の弟か」

 存沼の言葉に、朱雀が大きくゆっくりと頷いた。そして、じっと在沼を見た。

「僕は、将来お兄様をおよめさんにします」

 何を言っているんだよと吹き出しそうになった。なんて可愛いんだ。俺は我ながらブラコンだと思う。だって可愛いんだから仕方がない。白い頬も、薄い茶色の髪も、何もかもが愛らしいのだ。今すぐにでも抱きしめたくなる。

「誉は嫁にやれないからな」

 しかし存沼にそんなことを言われた。どういう意味だよ。お前は俺の父親か? お前に育てられた覚えはないぞ。確かに結婚できないというのは正しいのだが、何となく腑に落ちなかった。

 その帰り道、存沼に聞かれた。二人で廊下を歩いていた時だ。

「誉、お前は俺のことが好きなのか?」

 今なんて言ったよコイツ。俺は頭を巨大な金槌で叩かれた気分になった。そんなわけがないだろうが! お前はこれまで俺の何を見てきたんだよ。

「そんなことはないから安心して。心配してるのは、有栖川君とのことでしょう? 僕は二人の仲を応援しているよ」

 すると何故なのか存沼が真顔になって、小さく一度頷いた。真剣な表情の存沼は確かに格好いいが、それはテレビで俳優を見る感覚だ。それに存沼の子供っぽい中身を知っている俺が、何故好意を抱くと妄信するのだ。これは、葉月君(他、勘違いしている人々がいるのであれば全員)に、断言して伝えたい。あり得ない! 安心しろ、俺は本気で有栖川君との仲を応援しているからな。特に有栖川君の方を!


 他に朗報もある。今のところ高等部は、共学化する気配はない。頼むからしないでくれ。

 だが有栖川君の例がある。性別を変更して入学してこないだろうな? 来てくれるなよ。そして来たとしても、有栖川君絶対に頑張れよ! まぁ有栖川君の場合は、本物の鈴音さんがウィーンにいるらしいが。

 それと俺にも、やっと二次性徴の兆しが現れた。
 他には俺が、次第に存沼と西園寺の口論にも慣れつつあるのも良いことなのかもしれない。

 存沼は所構わず有栖川君にくっついて愛の言葉を囁いている。

 腰に手を回していたり、額にキスしたりしている。そのたびに、周囲は殺気立つのだ。そして風紀委員長としての使命感からなのか、存沼の動向をマークしているらしい西園寺が、必ず止めに入る。そのため、存沼と西園寺がそろって同じ場所にいる頻度が増えた。まぁ俺もそこにいるんだけどな。存沼の恋の進展度を、おそらく一番知っている他者は俺だ。

 また、三葉君が毎日しっかりと学校に来ているのも良いことだと思う。逆に、和泉は時間さえあれば、生徒会室にこもるようになってしまった。理由を聞いたら、稑生内のもめ事に関わりたくないからだと言っていた。何かもめているのだろうか? どちらにしろ、何があっても、和泉は我関せずといった様子だった。生徒会役員も風紀委員と同じで、必ず授業にでなければならないわけではないから、本当にひきこもり状態である。三葉君と設定的に逆になった印象だ。

 三葉君と言えば、同じクラスなので、ノートを何気なく見たことがある。今度はイタリア語で書かれていた。三葉君よ、君は言語学者にでもなるつもりなのか? 君の将来は砂川院当主と設定されているからな! それにしても前に和泉は、家督はいらないと言っていたな。泣いていたのだったか、笑っていたのだったか。兎に角いらないという意志だけは伝わってきたように思う。三葉君はどうなんだろう?


 中学最後の年なので、今年は修学旅行がある。行き先は、アラブ諸国だった。変わったチョイスだなと思う。一週間かけて、アラブ首長国連邦をはじめとしたいくつかの国を回るのだ。スリリングなイメージがある。

 出発の一週間ほど前に、葉月君に呼び出された。

「誉様、頑張ってくださいね!」
「何を?」
「告白です。同じ班なんですよね?」

 それだけ言うと、葉月君は帰っていった。俺は一体誰になんと告白すればいいと言うのか。悪いが、俺には班内に何かを告白しなければならない相手はいないからな。

 俺の班はと言えば、砂川院兄弟と存沼と西園寺と俺である。奇跡的に攻略対象で構成される班ができてしまったのだ。俺たちは、誰かと組もうとする前に、すでにこのメンバーで確定したように、黒板に、一斑として名前を書かれていたのだ。何故だ。まぁ五人なのは、俺のクラスは四十人なので不思議ではない。だが人選に陰謀を感じずにはいられない。

 そのようにして、俺たちは、修学旅行に旅だった。本当に何でこのメンバーなのだろうな。

 和泉と西園寺の仲が今も険悪なのか否かは、和泉が引きこもっているせいで分からない。だが西園寺と存沼の仲が悪いのはよく分かっている。平穏なのは、三葉君くらいだろう。三葉君は学校に来るようになったわけだが、校則を破ったりはしない。

 現地に着くまでの間、俺はひたすら存沼に、「遺跡を発掘したいな」だの「古文書が見つかると良いな」だのと言われていたが、断言して俺は普通に旅行を楽しみたい。存沼よ、冒険家の夢は一人で叶えてくれ。将来的には会社を継ぐのだろうが、休暇ぐらいあるだろう。その時に旅立つが良い。

 それにしても、だ。流石に世界各地にグループ会社があるだけはあって(なのか?)、存沼はアラビア語を流暢に話していた。西園寺もまた、ペラペラだった。西園寺の方は、どこの言語を話せても不思議ではない気がするが、存沼に関しては意外だった。

 確かに夏の旅行でも一度目以降、度胸がついたのか、存沼は現地人に英語や現地語で声をかけることは多かった。俺はそれに助けられて、その時ばかりは存沼に頼りっきりだったものである。俺にできることはと言えば、日本語と現地語の両方がつづられていてイラスト付きの、指さし会話帳という本で、何とかここまで乗り切ってきた。分からないのは、俺と和泉だけのようだったが、和泉は俺が足元にも及ばないくらい、英語が得意だ。特に会話が得意なのだ。

 俺の場合は、アメリカ英語とイギリス英語が入り乱れているが、和泉の場合は、綺麗にイギリス英語だけを使う。俺の場合は、家庭教師の先生がアメリカ英語を教えてくれて、学校ではイギリス英語を習ったために起こった災難である。

 なお現地語と言えば、三葉君も、少なくとも読むことはできるようだった。俺には記号にしか見えない文字をだ。

 きっと逆に日本に来たら、ここの人々は同じ感想を抱くんだろうな。

 三葉君は時折、行きたい場所を見つけると、地図を指さすのだ。理解しているが、話す気はないのだろう。だから班行動の際は、存沼と西園寺が言語の二大巨頭となった。そして現地の様々なことが分かるらしい三人は(俺は見ているだけだから分からない)、時にバラバラに行動しそうになる。だが、そこをうまくまとめるのが和泉だった。さすがは生徒会長である。俺はこういうリーダーシップこそが素晴らしいと思う。

 和泉は、最初に立てた計画通りに行き先や昼食の場所をしっかりと守るように軌道修正しながら行動している。柔軟性も素晴らしい。空気も読んでいる。え、俺? は、と言えば、普通に観光を楽しんでいた。完全に人任せである。

 一番楽しかったのは、バビロンの空中庭園だった。存沼の瞳が輝いていて、がしっと俺の肩に手を置いた。「行くぞ」と言われて、俺も興味があったので素直についていった。これは班の計画にも組み込まれていたので、全員で行ったのだが。純粋に、素晴らしいと思った。これはフィロンも絶対に見ろというだろう。世界の七不思議にも数え上げられて当然だろうな。存沼が「すごいな」と賞賛したので、俺も大きく頷いたのだった。

 さて、夜が来た。

 石油のおかげで潤っている、夜の宿がある国では、尋常ではなく高級なホテルに滞在することになった。五人部屋(?)なのか、ベッドを一つ運んだのかは知らないが、ともかく俺たちは全員豪奢なベッドをあてがわれた。同じ部屋だったのだ。

 明かりを薄暗いものに変え、皆でアベーユ&アヘーンバッハ社製のふかふかの白いソファに座る。そうして雑談をしていたら、恋バナが始まった。始まってしまった。

 存沼が語る語る。本当に語る。語り倒している。どこにデートに行っただの、校舎のどこで何をしただの、どうでも良いことをいちいち、頬をゆるませながら話すのだ。西園寺もこの時ばかりは何も言わなかった。注意することはなかった。なお存沼は、話題が変わるたびに俺を見る。こちらをちらちら見るのはやめろ! と言いたかった。なにせ俺は、話など聞かなくても、大体同じ現場にいたために、現在進行形で見ていたんだぞ。今更記憶にある話をされてもな。

 三葉くんはといえば無表情で聞いていて、和泉は、へぇって感じで聞いていた。それから次に、和泉が語る番がやってきた。存沼が、「和泉はどうなんだ?」と聞いたからだ。話を振られた和泉はと言えば、急に遠い目をした。辟易した様子で、憔悴しきっているのが分かる。

「……話したくない」

 疲れたように和泉が言うと、存沼が曖昧に頷いた。それから視線を三葉君に向ける。三葉君は和泉のことを暫く見ていた。それから在沼の視線に気づいたが、無表情で沈黙した。周りを凍り付かせるような冷気が放たれているのだが、良いのか悪いのか、この場に凍り付くような人間はいない。だからただの沈黙にしか思えない。

 三葉君はそれから周囲を一瞥し、西園寺へと視線を向けた。やはり三葉君は、話さない気なのだろう。一番気になるというのにな。まぁ、西園寺の恋愛沙汰も聞いたことがないから、興味がないと言えば嘘だ。

「秘密だ」

 西園寺はそれだけ言った。すると存沼が意地の悪い顔で笑った。

「どうせ、いないんだろう?」

 その言葉に西園寺が返答することはなく、ただ余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。いるのか、いないのか。この反応を見る限り、いるとしか俺には思えなかった。一体誰だろうか。それとなく西園寺のペンダントを見たが、入学した時から色が変わった様子はない。そして最後に俺の番になった。勿論俺にオチなど期待してはいけない。

「そろそろ寝ようか」

 うん、そうしよう。菩薩を召還した俺に、誰も何も言わなかった。
 お開きだな。うん。
 このようにして、俺たちは就寝した。

 最後の日は、みんなでお土産を買うことになった。存沼は、有栖川君にお土産を買っているようだった。三葉君はお土産には興味がなさそうで、売っている現地語の書物を開いて読んでいた。西園寺と和泉はそれぞれ、風紀委員会と生徒会へのお土産を購入していた。俺は家族へのお土産の他は、一緒に来ているわけだが、葉月君と侑君にお土産を買った。

 後は、有栖川君と、サロンで仲の良い後輩である永原くんにもお土産を買った。勿論サロン用にも購入した。存沼がサロン用に購入している様子はなかった。そして結局三葉君は未だに一度もサロンに来てはいないから買うのもへんだろう。そのため、遠足なども含めて、こういう時は、俺が買うということになる。はっきり言って面倒だと思うが、しょうがない。

 帰国してから、俺は同じく修学旅行に行っていたのに、おかしいかなとは思いつつ、葉月君と侑君にお土産を渡した。すると、葉月君に聞かれた。

「どうでしたか?」
「何もなかったよ」

 なにが、どうだったというのかは知らない。知りたくもない。そして何もなかったのは事実だ。無事に旅行は終わったのだから。だが俺の回答に、葉月君も侑君もしょんぼりした顔つきになってしまった。俺は知らないからな! ちなみに後輩の永原くんに、個人的
にも渡すと、泣いて喜ばれた。そんなに嬉しかったのだろうか? それとも、俺が渡したものが気にくわなくて泣いているのか? 嫌だったのかな? 有栖川君は、ごく普通に微笑して喜んでくれたのだがな。

 そんな修学旅行だった。まぁまぁ楽しかった。

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