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【三十七】探偵機構主催のキャンプ


 探偵機構主催のキャンプの日が訪れた。九月の上旬の事で、僕達は新幹線と鈍行を乗り継いで、目的地のキャンプ場へと向かった。

 招かれていたのは、Sランクと一部のAランク探偵、及びそれぞれの助手だ。

「あー、久しぶりじゃん。朝倉くんだよね?」

 キャンプ場の入り口で、僕は声をかけられた。顔を上げると、そこにはSランク探偵兼助手の十六夜紫苑さんが立っていた。その隣には、春日居孝嗣さんの姿もある。春日居さんの、探偵ながらに助手もしているのが十六夜さんだ。

 十六夜さんは僕に声をかけてへらりと笑うと、楽しそうな眼をして歩み寄ってきた。

「お久しぶりです」

 たった一度だけ、捜査で会った事がある。

「会いたかったんだよねぇ、俺。ほら、Sランクの探偵って特殊じゃん? 色々悩みもあるし、俺達なら分かり合える気がしてさ」
「あ……その、色々教えて頂けたら嬉しいです」

 僕が微笑を返すと、明るい笑顔で十六夜さんが頷いた。

 その隣にいる精悍な顔立ちをした春日居さんも、両頬を持ち上げて僕達を見ている。

 僕はそれから自分の隣を見た。
 山縣は、どこか不機嫌そうに二人を見ている。

 何故だろう?

 そう考えていると、御堂さんと日向の姿が視界に入った。
 するとこちらに気づいた二人がこちらへと歩み寄ってきた。

「今日は楽しもうね」

 久しぶりに顔を合わせた御堂さんは、やはり穏やかで明るかった。

 その後僕達は、キャンプをするコテージへと移動した。

 夜は、BBQだった。素材そのままの味の串焼きを食べつつ、僕は山縣の様子を窺う。
 特に味に対して、不満を述べる様子はなかった。家と外では態度が違うのだろうかとも思ったが、何度か事件に共に出かけたかぎり、それはないなとすぐに判断する。きっと素材そのままの味だから、満足しているのだろう。

 探偵と助手は、二人一部屋だったので、僕はダブルベッドの壁際に横になった。
 ベッドは一つしかなく、隣には先に山縣が寝転んでいた。
 山縣は寝つきがいいのか、すぐに寝息が聞こえ始める。僕は壁の方を向いたままで、明日への期待から、しばらくの間眠れなかった。

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