【二十五】運命の探偵の名前
「……」
僕は改めて成績表を見た。
別に僕には、山縣の助手になりたいというような思いはない。
華々しい活躍をする高校生探偵は偉大だが、僕は僕の手助けを必要としてくれるたった一人とめぐりあいたい。
「朝倉。理事長先生がお呼びだ。すぐに来てくれ」
その時扉側から声がかかり、僕が顔を上げると担任の先生が手招きをしていた。
なんだろうかと考えながらも成績表を鞄にしまい、僕は立ち上がった。
階段を上がって廊下を歩いていき、職員室の隣にある、理事長室へと向かう。
そしてノックをすると、声がかかったので、僕は扉を開けた。
「失礼します」
「やぁ、朝倉くん。急に呼び出してすまないね。座ってくれ」
「いえ……」
促されて、僕はソファに座った。
正面の席には理事長先生が腰を下ろしていた。
「実は君の運命の探偵の件なのだが」
「はい」
「――実はとっくに判明していたんだ」
「え?」
「ただし探偵側の要望で、これまで引き合わせる事をしなかった」
「要望、ですか?」
僕が首を傾げると、理事長先生が大きく頷いた。
「完璧なんだが、少し性格には癖のある探偵でね。そう――彼は、完璧すぎるんだ。一人で何でもこなす事が出来る。それゆえに、自分には助手など不要だと言い張っていてね。しかし規則は規則だ、絶対だ。引き合わせないわけにもいかない。そこで事件が落ち着いているこのタイミングで、君達には、正式に探偵と助手として、一緒に暮らしてもらう事になった」
探偵と助手は、基本的に一緒に暮らすので、その部分には僕に不安はなかった。
ただ、完璧、というのがよく分からない。
「山縣正臣――聞いたことはあるかね?」
「っ、は、はい」
「朝倉くんと先方のご家族には、すでに了解を得ている。荷物も運んでくれるそうだ。これが、家のカギだ」
理事長先生がテーブルの上に、銀色のカギを置いた。
それを受け取り、僕は小さく頷いた。