第二十一話 新たな人材
起きたが、やることがない。
ポイントを使って、好きだった弁当を取り寄せる。
一度、こっちのパンを食べてみたが、味がしない。いや、味はしているのだが、素朴な味だ。軽く炙ってから、バターをたっぷり乗せたら食べられるかもしれない。そこまでして食べたいとは思わなかった。適材適所なのかもしれないが、パンが食べたくなったら、食パンを仕入れようと思う。それか、こっちの世界でも小麦が存在しているから、パンを作らせてみるのもいいかもしれない。
「マイマスター」
「何かあったか?」
「お部屋に入ってよろしいですか?」
「いいぞ。起きたばかりだけど、セバスが気にしないのならいいぞ」
「はい!」
セバスがマイルームに入ってきた。
そうだ、ちょうどよかった。セバスに取り寄せた文字が読めるか確認しよう。本を渡しても、読めなければ意味がない。
「子どもたちのことか?」
「はい。隔日で、状況を報告させることにしました」
「困ってはいないな?せっかくの収入源だからな。丁寧に扱え」
「はい。感謝の気持ちを持っております」
「それはよかった。セバスが俺の代わりに、魔王を演じてくれてよかったよ」
「恐れ多い。マイマスターの偉大さの10分の1も表現が出来ていない我が身を恥じ入るばかりです」
「そんな事はないと思うぞ。それで、何か有ったのか?」
「子どもたちが、仕事をしたいと言い出しております。魔王様。彼らから見たら、ルブランの為に、攻め込んできた者たちと戦いたいと言っております」
「ふーん。別に必要ないのだけどな。でも、その気持は嬉しい。さて、どうしたらいいかな?すぐには戦えないだろう?」
「はい」
「そうか、訓練所でも作るか?」
「はい。マイマスター。恐れながら、人族が、文字や計算を教える場所を用意して、文字や計算を教えてはどうでしょう?すぐには無理ですが、マイマスターの代わりに街に行かせるのに必要になると思います」
「そうだな。今の時点で、文字が読めるのは?」
「二人です」
「は?」
「簡単な足し算や引き算が出来るのは、1名です」
「おいおい。奴隷になっていたとしても、文字の読み書きは必須だろう?簡単な計算くらいは出来るのが当たり前だろう。年齢的に、12-3歳が多いのだよな?」
「このままでは、攻めてきた奴らがやったような、肉の盾にしか使えません。人材に仕立て上げなければ使えません」
「そうだな。俺としては、ポイントになるだけで十分だけど、それだけじゃ堕落していくからな。働かせるか。そのためにも、最低限の教育を受けさせるか」
「はい。素晴らしいお考えです」
「そのために必要な物は?訓練所も有ったほうがいいだろうな。狩りにしろ、”武”を鍛えるのは必要だろう」
「はい」
ポイントには余裕がある。子どもたちもだけど、門の所に居る奴らがいいポイントになっている。あと、2日後には、全員が門の中に入るだろう。取得ポイントも増えるだろう。
「わかった。訓練所は、どういった物が良いのか、考えてくれ、子供に読み書きと計算を教える場所は、俺の世界にあった教室を再現する。30名くらいに教えられる部屋を4つほど並べて作る」
「はい」
セバスが少しだけびっくりした表情をするが、気にしないで話を進める。
「セバス。この本は読めるか?教本に使う本の言語が書かれている」
用意していた本を渡すが、読めないようだ。日本語も英語もダメだ。何か、スキルがないか探してみよう。
教本の問題は残ってしまうが、
「教本は、後で考えるとして、教師が必要だな。セバスは、魔王役だから、勉強を教えるのはダメだ」
「はい」
セバスが少しだけ嬉しそうな表情を見せる。
やはり、教師役が必要だと思っていたのだろう。
セバスみたいに、てんこ盛りにしなくても良さそうだ。脳筋は嫌いだから、そうだな。光栄三国志の馬超タイプを”武”の教師にして、知の教師を二人・・・。三人にしよう。セバスの負担を減らさないと、倒れられたら困ってしまう
「セバス。種族は?」
「マイマスターのお心のままに」
「うーん。4人ほど呼び出す予定だから・・・。種族をいろいろ選んでみよう」
呼び出せる人に見える種族は、セバスと同じ魔人と、人族だな。エルフとかも選べるけど、ポイントが高いな。ドワーフも居るけど、なんか違うな。いいか、考えるのが面倒になってきた。魔王の部下だから、セバスと同じで魔人でいいかな。”武”を二人にして、”知”を三人。
お!今度は、性別が選べる。夜伽が選べなくなっている。どういうことだ?セバスの部下のつもりで居るから良いのかな?
上位者の設定が出来るようになっている。主人は、俺になるが、上位者はセバスにする。こうやって組織を作っていけばいいのだな。考えられているな。”武”には、スキルは武具のスキルを二人に振り分ける。一人に振り分けるよりもポイントが少ない。そうか、複数のスキルを設定すると、その分だけポイントが必要になる。
セバスの様に後から覚えさせてもいいけど、スキルの交換ポイントを確認してみると、最初から付けたほうが3つまでなら、必要なポイントが少ない。4つ目は、スキルを交換したほうがいいのか?
いろいろ計算しながらだと面倒だ。ひとまずは、最初は3つのスキルにして足りないスキルは後付にしよう。
ステータスは、セバスの劣化版という感じにした。全員が似たような数値にしたのは、考えるのが面倒になったからだ。スキルで個性が出来るだろう。別に、個性がなくても困らないけど・・・。個性が産まれてくれる嬉しい。
まとめて、5人を設定した。
セバスの時に解ったことだが、真命と呼び名が必要。真命の設定には、漢字が使える。漢字なら、読まれることもないだろうから、支配されないだろう。
”武”の男を、真命”関雲長”、呼び名を”カンウ”
”武”の男を、真命”馬孟起”、呼び名を”バチョウ”
”知”の女を、真命”諸葛孔明”、呼び名を”カエデ”
”知”の女を、真命”司馬仲達”、呼び名を”ナツメ”
”知”の女を、真命”周公瑾”、呼び名を”モミジ”
名前のセンスがない。でも、犬に犬と名前を付けるよりはマシだ。
センスが無い。考えても思いつかない。よし、これで決定。
「「「「「マイマスター。御前に」」」」」
皆が美形だ。
おかしいな。美形なのはいいことだ。それに、皆が自分の名前を認識しているようだ。
さて、鑑定は必須だな。
「ルブラン!」
「はっ」
「5名の教育と役割の説明を頼む。それから、スキル鑑定を渡しておく、使わせておいてくれ、あと、必要な物は、ルブランがまとめて持ってくるように、部屋割りは、ルブランに一任。解散」
何か聞かれてボロがでると困るから、セバスに丸投げする。
5人が立ち上がって、頭を下げる。
服装に個性を感じるけど、俺は設定していないから、個性でいいのだろう。
新たな人材を得たけど、外の連中を無視しすぎたかな?
でも、カウンターを出してから、動きがない。カウンターが”0”になっても、開かないようにしようか?どんな反応を見せるか・・・。
今回は、いい加減に面倒に感じている。反省点もなにもない。門のギミックが難しすぎたなんて反省点でもなんでもない。俺の落ち度があるとしたら、領域をもっと広げておけばよかった。今度は、外側に壊される前提の門や塔を作ろう。
外に居る連中の中で偉そうにしている奴を捕らえて・・・。セバスが聞いてきた、子どもたちと同じような境遇に置いてやろう。
子どもたちで実験して解った。
”閉じ込める”は、罠でも鍵でも、扉を作って、部屋に閉じ込めればいいようだ。ポイントの数値では、子どもたちが、鍵をしないで部屋に入った時と、鍵をして部屋に入った時ではポイントが違っているように思える。詳細な収支が出ないから、まだ感覚のような物だ。
外の愚か者たちが居るから、計算が違っているかもしれないが、概ね有っているだろう。奴らを殲滅してから実験すればいい。奴らを捕らえて、いろいろ実験に使おう。
外を見るけど、動きがないと、見ていて楽しくない。
人材も増えたし、マイルームの部屋に鍵をつけようかな?
ドアがノックされる。
「マイマスター」
「ルブランか?」
「お時間を頂戴してよろしいでしょうか?」
「いいぞ」
「ありがとうございます」
セバスが部屋に入ってくる。
「彼らに現状の説明と、彼らの”とりあえず”の仕事を教えました」
「そうか、ありがとう。彼らで大丈夫か?」
「はい。過剰ですが、マイマスターの盾であり、剣になるので、問題はありません」
「おぉ・・・。そうだ。セバス。マイルームに鍵をかけようと思っているがいいか?」
「え・・・。あっ問題はありません」
「俺に何か有るときに、一番に信頼をしているセバスには部屋に入ってきてもらいたいから、合鍵を渡しておくつもりだけど、セバスでいいよな?」
「はい!もちろんです。私が責任を持って、管理いたします」
「おぉ頼む。鍵が出来たら、渡すな」
「はい!」
なんか、最初は凛とした出来る秘書風の女性だと思ったけど、今は、しっぽがあれば大きく左右に触れているだろう。忠犬という表現が似合いそうだ。