第二十八話 尋問
さて、苦戦している奴らは居るか?
クォートとシャープは、数名を残して始末したようだ。
カルラは、殺しては居ないようだな。アルバンは・・・。アルトワ町に到着したくらいか?探索範囲外にいるようだ。
「エイダ。アルは?」
『合流したようです。こちらに向かっています』
「時間をカウントダウン」
『了。約21分33秒』
20分と少しか・・・。町長の尋問を始めようか?
結界の中で何かを怒鳴っている。
うん。俺が尋問を行う必要はないな。クォートに任せるか?
結界の設定に、少しだけ手を入れよう。
俺たちの声だけは聞こえるようにしよう。そうしたら、町長は俺たちが無視していると考えるだろう。どうせ、たいした情報はないだろう。うるさいだけだろう。町長の言い訳なんか聞きたくもない。
結界の修正を行う。属性を付与していた者に、指向性を持たせる。まぁ出来ていなくても、別に困らない。
『20』
クォートとシャープが戻ってきた。
「旦那様」
クォートが、生き残った野盗を引きずっている。
「シャープ。悪いけど、その辺りで寝ている奴らは邪魔だから、どかしてくれるか?バイコーンかユニコーンに縛り付けておけばいいだろう?」
「かしこまりました」
シャープが引きずっていた野盗?たちは、クォートが受け取る。
『19』
「それで?誰に雇われたと?」
「本人たちに証言させましょう」
クォートが、野盗?の中から一人の男を、俺の前に差し出した。
「旦那様。盗賊の
『18』
「ふーん」
男の頭を軽く蹴とばす。まだ反抗的な視線を崩さない。そのうえ、口を開こうとした。
「臭い。口を開くな」
耳を切り飛ばす。切った耳を、町長たちの結界の上に乗せる。血がいい感じで滴り始める。
『17』
「さっきも言ったよな。臭いから口を開くな」
シャープが拾ってきたナイフで、盗賊の足の指を刺す。ナイフの手入れがされていないのだろう。切り落とすことができなかった。
耳を劈くような絶叫が響く。うるさいから、開いた口に次のナイフを入れる。
喉の奥にナイフの先が当たるようにする。口を閉じれば、口が切れるだろう。奥に押し込めば、命が無いのは、理解できるのだろう。
「いいか、このままナイフを刺すことも可能だ。俺に取っては、お前の命なぞ、その辺りに居る虫けらより価値がない。俺の質問にだけ答えろ。いいか、わかったら頷け。余計なことをいったら、今度は眼を潰す。そのあとで、足の指を一本一本切り落とす。そして、手の指。腕だ」
『16』
「いい子だ。お前は、俺たちを襲うとしたのだな?間違っていなければ、頷け。違うのなら、首を横に振れ」
シャープが馬車からライトを持ってきてもらう。
『15』
「そうだ。正直者は、長生きするぞ?言い忘れたが、これは嘘を判断する。これが光ったら、俺はお前を殺す。言い訳は聞かない。納得したか?」
もちろんはったりだ。まだ、うそ発見器のような機能は出来ていない。俺が、思ったタイミングで光らせることができるだけの道具だ。
口からナイフを抜いたから、
「俺たちが、この道を通るのは、誰から教えられた?この場にいるようなら指させ」
『14』
「そうか、俺たちを殺して、荷物を山分けか?」
「取り分は、折半・・・。半分の半分。そうか、女は、お前たちが貰うと・・・。そうか、足が付きそうな馬はお前たちの取り分か?」
『13』
「旦那様。遅くなりました」
カルラが合流した。村の連中は、連れていないのを見ると、アルバンに任せたのだろう。
「大丈夫だ。それで?」
『12』
カルラは、血が滴っている袋から、腕を何本か取り出す。
「愚か者の腕です。お納めください」
腕なんか貰っても使い道がない。
そうだ。町長に見せてやろう。
袋ごと受け取って、町長たちの上に放り投げる。結界の上が、カオスな状況だけど、しょうがない。
『11』
「カルラ。
「裏があると?」
「おかしいと思わないか?」
「??」
『10』
カルラは気が付いていないようだ。簡単に説明しておくか?
野盗どもが使っていた装備を、クォートとシャープが持ってきている。不思議なくらいに統一されている。ぱっと見た感じでは、デザインなどは統一されていないが、品質や使われている物が同じだ。わざと違って見えるように作られているようにも感じる。
装備の品質は、低いので俺たちには必要ないが、修復すればダンジョンにアタックする者たちに持たせるのには十分だろう。
「そういえば・・・」
「どうした?」
『9』
カルラの話を聞いて、納得した。
俺たちを後ろから襲おうとしていた、連中は野盗よりも粗末だが、揃いの武器を持っていた。装備品と呼べるような物はなかったようだが、武器だけは与えられていたようだ。
さて、誰に武器を貰ったのか?
町長たちにしっかりと聞かないとダメだな。カルラの報告を聞き終わってから、結界の中に居る町長たちを見る。
二人は、何か文句を言っているが、こちらには聞こえない。聞きたくもない。
『8』
俺が知りたいのは、情報だけだ。この茶番劇を仕込んだ者が居るのなら、そいつを潰さなければ、何が目的なのか解らないが、俺がやろうとしていることの邪魔になるだろう。
「旦那様」
「どうした?」
「あの者たちへの尋問は、私とカルラ様で行います。結界の解除をおこなって頂けますか?」
『7』
カルラを見ると頷いている。確かに、クォートとカルラなら大丈夫だろう。殺さない程度に痛めつけるくらいなら大丈夫だろう。それに、殺してしまっても、別に困らない。どちらかが生きていれば、情報を抜くだけなら困らない。どうせ、”うまくいけばいい”程度の捨て駒だと思える。
「わかった」
結界を解除すると、腕やら耳やら、指やらが降り注ぐ。当然だな。そのまま、逃げ出せば殺せるのに、吃驚して声も出さずに座り込んでしまった。
カルラとクォートが近づいて、合図を出してきた。4人を覆う形で結界を発動する。同じようにこちらの声は届くけど、向こうからは声が聞こえない状態にする。中を見ていると、いきなりアルトワ町の町長に、剣を突き付けて居る。反抗的な発言でもしたのだろう。
『6』
「旦那様。何か、お飲みになりますか?アルバン様をお待ちなら、私が待機しております。馬車の中に、何か用意をいたします」
「そうだな。アルの状況は、エイダが認識しているから、近づいたら出迎えればいい」
「わかりました」
周りの状況を見ると、結界の中で尋問を行っている4人以外にはすでに動ける者は居ない。うめき声は聞こえるが、気にしなくてもいいだろう。それに、逃げ出したらユニコーンとバイコーンに殺せと命令しておけばいい。簡単な作業だから、問題にもならないだろう。
『5』
「カルラ!クォート。アルが到着まで、5分だ。急ぐ必要はないが、面倒なら引き継ぐことを考えろ」
結界が有って向こうの声は聞こえない。二人は、了承の意味を込めて、こちらを振り向いて頭を下げる。
「それと、面倒なら殺してもいい。どうせ、何もしゃべらないのなら、連れていく意味もない。”野盗に殺された”とでもすればいい」
これは、あいつらが描いていたシナリオだ。こちらが使わせてもらってもいい。そんな面倒なシナリオを使う必要はないのだが、自分たちが同じ状況になっていると認識させるには十分な脅しになる。
『4』
馬車に戻って、シャープが用意してくれたお茶を飲んでいたら、エイダが俺の近くまで来て、端末を見せてきた。
アルバンの状況が解るようになっている。
150秒からのカウントダウンが始まった。
残り時間が無くなった所で、馬車から出てアルバンを出迎える。
「兄ちゃん!おっちゃんたちを連れてきたよ!」
久しぶりに見る顔だ。皆が俺の前まで来て、頭を下げる。