ミミ
……やってしまった。
完全に注目の的になってしまった。どうやって誤魔化す?
「迷子センターに連れてくものと思ってたわ」
「私も」
迷子の子を見つけたら誰だってそうする。アニメや漫画でよく見る、母親を一緒に探してあげるなんてことはみんなしない。
「よ、よかったね、見つかって……」
あの子の母親の居場所がすぐに分かったのにはもちろん理由がある。あの子を探す声が私には聞こえたのだ。
そう、紛れもなく『ミミ(私)』は聴覚が異常にいいのである。
子供の頃からそうだった。どういうわけか私は耳の形が普通の人間とは違う。まるで漫画やアニメに出てくるエルフのような形だ。
もちろんそのことを不思議に思ったことはある。自分の体は異常なのではないかと母親にももちろん相談した。
でも、
「別に普通」
誰もがそう言った。
自分がとても怖くなった。本当に人間なのか、鏡を見る度に自分を気持ち悪く思ったものだ。今では慣れはしたが、でも、間違いなくコンプレックスだ。
見た目ももちろん嫌いだけど、それ以上に聞こえてしまうのだ。普通の人間には聞こえない小さな声でさえも。聞きたくないことも。
「よし、駄菓子屋に行こう!」
私はこの耳が嫌いだ。他人からは普通に見えるとはいえこの見た目も、すぐに聞こえてしまう聴覚も。
このまるで人間ではないモノが私を人間から遠ざけるのだ。
「ミミ、ありがとう」
「え?」
「あの子を見た時、どうしたらいいか私には分からなかったからさ。ミミがすぐに行動してくれたおかげで助かったよ」
「……うん!」
ナギのありがとうという言葉を聞いた瞬間、初めての感情が私を支配した。
このコンプレックスがあってよかった、と。
「駄菓子屋に行けるのがそんなに嬉しいの?ミミ」
不思議そうな顔をして覗き込んでくるアイに笑顔を見せながら、私は、
「まあね!」
そう言った。
「よし、行こうか」
四人で並んで歩き出した中、私の心は温かかった。そして、少しだけみんなとの距離が近づいた気がした。